ぼやぼや
舞台『おとこたち』観にいった
2023/04/16 06:20身辺雑記
先日パルコ・プロデュースの舞台『おとこたち』を観にいったのですが、1幕中にわたしが直近で飲みおわった漢方薬(のメーカー)が言及されて「…分かる……分かるぞ!」と図らずもムスカの表情になりました。天空の城ラピュタの中枢で古代文字を解読する部分。…読める……読めるぞ…………何の話だこれ?
舞台の話。
よく、身内と一緒に舞台を観にいきます。
上述した『おとこたち』は今年観た2作目で、これが本当に面白かった!
脚本・演出をしている岩井秀人さんを大好きなのもあり、観覧前から「これは面白い」と確信していた、ら、想像以上だった。
4人のおとこの、22歳から85歳になるまでをみる。
始まりに、演者のユースケ・サンタマリアさんが「携帯は機内モードにするか電源を切って」「飲食は基本禁止」「2幕中に大きな音、暴力的な音声が2分ほど流れますので、苦手な方はご遠慮なく耳をお塞ぎいただくことをお勧めします」と開演前に流れていた客席アナウンスを再度伝えてくれる。話が終わる頃にはユースケさんの背後にゆったりとした足取りの人びとが行き交っていて、彼はそこへ、散歩でもするようにして入っていく。
『ここは老人ホームです』
軽妙な話ぶりで歩みも確か。通りすがる住民に『あのとき支えていたあなた、今は支えられて』と腰を屈めて顔を覗きこむ。そういえば昼食を摂っていない……と気づいて、制服を着た住民に訴えかけて『でもお若いですよ』と話を逸らされる。会話の流れで年齢を問われ、言い淀む彼。
『あれ、おれ、今いくつだっけ?』
『82歳ですよ。山田さん』
たっぷりとした水風船に爪楊枝を刺すと、割れない、水はこぼれない、刺さったままでも大丈夫という状態になる。
岩井秀人さんの描く物語はこれを生きた人間にする感じで、終幕してカーテンコールのときには体じゅうに針が刺さっている。身じろぐと穴が広がって出血する、針を抜けばもっと出血するが抜かないと傷が塞がらない。
有り体にいえば後味が悪い。
みている、みていない、みえなかった、みるはずがなかった物事をちらとでも"みさせられる"。それが人によっては忘れ得ない体験になり、ふとした弾みで思い出してまた"みる"。
岩井さんが主宰する劇団ハイバイの舞台はほとんど、ちいさな心痛が尾を引いてやってくる。家族というだけで生じる連帯、引きこもりの足先にみえる断崖(すぐそこにある)、自分の善意は害だった? 観覧後は血だらけで、傷を湯水でさらうと沁みて、時間が経つと瘡蓋ができて乾燥すると痒みをもつ。痒いので掻くと和む。そう、自傷で和む。
そんなふうな心よさが、後味悪さと等しく残る。
『おとこたち』は2014年に劇団ハイバイで初演、16年に再演。
23年にパルコ・プロデュースでミュージカルとして新しい形になった。
わたしはまだまだ知見が狭くて経験が浅いのであらゆる作品に対して表面をなぞるような捉え方しかできない。と思っている。
歌があると心が弾む。歌詞がどのような内容であれ心が揺れる。おお分かる、なんか分かるぞ。
観覧後の帰りしな……チケットをいつも用意してくれる身内に「明るめの終わり方だった」と話して「そうかあ?」と謎めかれた。「いい舞台だった」「だなあ」「円盤がほしいサントラがほしい」「だなあ」わたしは強欲だ。
家についてから左開き細長のパンフレットを開いた。まず右上にパラパラ漫画を発見。パラっとやってから読んでみる。文字を読むのが得意じゃないから途中でカフェオレを作りに離脱、休み休みやる。なんとか最後のページまで来ると、最初と最後に唄われていた劇中歌の歌詞が載っていた。
たしかに明るくはない、かもしれない。
笑っているのか笑ってしまうのか。
あの会場では照明が散っていて、ミラーボールが回っていた。踊るひとたちの足音は音楽に掻き消えて顔が遠かった。ていうかおれは、おれで、おれなのか、おれが?
好きな感じの作品で面白かった。
好きだから円盤が欲しいしサントラが欲しい。
舞台の話。
よく、身内と一緒に舞台を観にいきます。
上述した『おとこたち』は今年観た2作目で、これが本当に面白かった!
脚本・演出をしている岩井秀人さんを大好きなのもあり、観覧前から「これは面白い」と確信していた、ら、想像以上だった。
4人のおとこの、22歳から85歳になるまでをみる。
始まりに、演者のユースケ・サンタマリアさんが「携帯は機内モードにするか電源を切って」「飲食は基本禁止」「2幕中に大きな音、暴力的な音声が2分ほど流れますので、苦手な方はご遠慮なく耳をお塞ぎいただくことをお勧めします」と開演前に流れていた客席アナウンスを再度伝えてくれる。話が終わる頃にはユースケさんの背後にゆったりとした足取りの人びとが行き交っていて、彼はそこへ、散歩でもするようにして入っていく。
『ここは老人ホームです』
軽妙な話ぶりで歩みも確か。通りすがる住民に『あのとき支えていたあなた、今は支えられて』と腰を屈めて顔を覗きこむ。そういえば昼食を摂っていない……と気づいて、制服を着た住民に訴えかけて『でもお若いですよ』と話を逸らされる。会話の流れで年齢を問われ、言い淀む彼。
『あれ、おれ、今いくつだっけ?』
『82歳ですよ。山田さん』
たっぷりとした水風船に爪楊枝を刺すと、割れない、水はこぼれない、刺さったままでも大丈夫という状態になる。
岩井秀人さんの描く物語はこれを生きた人間にする感じで、終幕してカーテンコールのときには体じゅうに針が刺さっている。身じろぐと穴が広がって出血する、針を抜けばもっと出血するが抜かないと傷が塞がらない。
有り体にいえば後味が悪い。
みている、みていない、みえなかった、みるはずがなかった物事をちらとでも"みさせられる"。それが人によっては忘れ得ない体験になり、ふとした弾みで思い出してまた"みる"。
岩井さんが主宰する劇団ハイバイの舞台はほとんど、ちいさな心痛が尾を引いてやってくる。家族というだけで生じる連帯、引きこもりの足先にみえる断崖(すぐそこにある)、自分の善意は害だった? 観覧後は血だらけで、傷を湯水でさらうと沁みて、時間が経つと瘡蓋ができて乾燥すると痒みをもつ。痒いので掻くと和む。そう、自傷で和む。
そんなふうな心よさが、後味悪さと等しく残る。
『おとこたち』は2014年に劇団ハイバイで初演、16年に再演。
23年にパルコ・プロデュースでミュージカルとして新しい形になった。
わたしはまだまだ知見が狭くて経験が浅いのであらゆる作品に対して表面をなぞるような捉え方しかできない。と思っている。
歌があると心が弾む。歌詞がどのような内容であれ心が揺れる。おお分かる、なんか分かるぞ。
観覧後の帰りしな……チケットをいつも用意してくれる身内に「明るめの終わり方だった」と話して「そうかあ?」と謎めかれた。「いい舞台だった」「だなあ」「円盤がほしいサントラがほしい」「だなあ」わたしは強欲だ。
家についてから左開き細長のパンフレットを開いた。まず右上にパラパラ漫画を発見。パラっとやってから読んでみる。文字を読むのが得意じゃないから途中でカフェオレを作りに離脱、休み休みやる。なんとか最後のページまで来ると、最初と最後に唄われていた劇中歌の歌詞が載っていた。
たしかに明るくはない、かもしれない。
笑っているのか笑ってしまうのか。
あの会場では照明が散っていて、ミラーボールが回っていた。踊るひとたちの足音は音楽に掻き消えて顔が遠かった。ていうかおれは、おれで、おれなのか、おれが?
好きな感じの作品で面白かった。
好きだから円盤が欲しいしサントラが欲しい。