メフィスト・フェレス
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私が落としたグラスの破片を、契約主は皿に盛って文机に飾った。
意匠も何も施されていない透明なグラスである。主人にも私にも、然したる思い入れがないグラス。ないはずのグラス。
「疑問です。どこに飾る要素が?」
ろうそくの灯に破片の断面が光る。濡れたように美しい。グラスが割れる直前まで談笑していた名残りか、主人は口元を緩めながら答えた。
「記念だよ。お前が笑った記念」
確かに主人の発言が愉快で、笑った拍子にグラスを落としたが。
「……私ならいつも笑っているでしょう」
「そうね。お前はいつもそう」
「なら、なぜ記念に」
分からない私に主人が笑む。答えをせがむ悪魔を置いて、今日の感慨にひとりで浸る。
お前が笑った記念だよ。
それ以外のなにものでも。
ショートショート・捨てられないガラクタ《了》