メフィスト・フェレス
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「守りたいものはありますか」
問われた意味が分からなかった。だから即座に答えられず、私は口を開けたり閉じたりした。守りたいもの、そんなもの……。
一拍ほどの沈黙を答えに、私は運ばれてきたサラダに手をつけた。どうしても正面を見れず、すべすべした木の机に顔を伏せ、黙々とレタスを頬張った。そうしている間も、彼からの視線が絶えず私のつむじに注がれているのを感じていた。
彼、フェレス卿は気付いているのかもしれない。ほんの気まぐれで聖職者の園に踏み入れ、挙句ここでの生活に未練を感じている私の胸の内を。何かを守りたくて同胞を殺しているわけじゃない、悪魔の心を。
不意に聞こえた含み笑いに、できれば気付いていないと良いなと思う。
イヤ、どうか気付かないで。
「守りたいものはありますか」で始まり、「どうか気付かないで」で終わる物語《了》
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