ここではただの…
「恥ずかしいからやめてくれない……?」
《エレパッド》の画面と向き合うヴィルヘルムの耳は少しばかり紅潮しており、レイは具材を煮込みつつ爽快に笑う。
「ヴィルが筋金入りの王子様だって分かったあとは、その理由にも納得したんだけどね。王族は基本厨房には入らないし」
でも、とレイは続ける。
「ここにいる間だけは、王子でもマネージャーでも賢主でもない、ただの“ヴィルヘルム”。だから僕はヴィルがやりたいって言うなら、掃除も洗濯も一緒にだけどやらせてあげてるんだ」
聞こえているはずのヴィルヘルムは何も言わなかった。が、彼の雰囲気はとても穏やかなもので、レイもまた柔らかな笑みを浮かべている。
エレナは「そうなのですね」と慎ましく片笑み、二人の関係性を少しだけ羨ましく思うのであった。
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