閉架書庫入り口
澄み渡る蒼穹が見下ろす地上から音が消える。
草木のざわめき音も、鳥達の羽ばたき音も、波がさざめく音も。等しく全てが無に還る中、響く慟哭。
あの子の赤い帽子は焼跡を遺して、
あの子の輝く星は欠けていて、
あの子の片腕は火に巻かれて、
あの子の血は杯に並々と注がれて、
あの子の目玉を剣が貫いて、
あの子の脚は押し潰されて、
あの人達の白い外套だけが残されて、
僕の腕に残された君の上半身は今、少しづつ熱を失っている。
閉じられた灰色の瞳が僕を映すことはもうない。
視界いっぱいに広がる屍の山を、太陽の光は煌々と照らす。
あの日の『絶望』と生きてきた僕は頑なに『希望』を拒んだ。
『希望』が『絶望』を生むのなら、望まなければいい。
そうすればあの日以上の惨事が引き起こされることはない、と信じていた。
だが結果はどうだ。
また僕はひとり残されて、皆は彼らと同じ末路を辿った。
……いつか君が言っていた、あの言葉が脳裏を過ぎる。
──『真の絶望』とは、絶望と希望が織り成す螺旋を永遠に断ち切られること。
aあア。
これこそが『真の絶望』。
僕の絶望は絶望ですらなかったのか。
穢れた光が、僕の絶望を祝福する。
憎み続けた仇も。
守りたい人も。
誰もいないこの世界の奥底で。
ボクノワライゴエガヒビク。
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