2:お仕事開始
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ヴィルヘルムについて周りながら、エレナは仕事の説明を受ける。
マニュアルは追加でメモ書きする必要もないほど完璧であったが、とにかくやる事が多い。
まずはファイター達が試合時間まで待機する控え室の整備(先程用意した飲み物も控え室専用の冷蔵庫に移し替えた)から始まり――『大乱闘システム』を管理する【システム部署】の皆さんに挨拶と異常がないかをチェック。この時に、試合内容と参戦者情報に
「お、さっきぶりだな」
一部目の試合に参加するファイターが、『ポータル』経由で到着しているのだ。
片手を軽く挙げるマリオは、控え室に入って来た二人――のうち、エレナの顔色に微苦笑。
「もう疲れた顔してんぞ。大丈夫か?」
「……早く慣れるように頑張ります」
「ヴィルが異常なだけで君は正常だよ」
そう毒づく少年に、エレナは小さく目を見開く。
緑の衣に三角帽子。ブロンドヘアーに青い瞳。
(リンクって、『
てっきり大きいほうかと思ったエレナのまじまじとした視線に、子供リンクは「何?」と顔を歪める。
「い、いえ! 何でもないです!」
「『可愛くない子供』だなって思われたんだろ」
「黙れよおっさん」
「相変わらず口が減らないヤツだな」
今度はエレナが苦笑していると、ガンスルーしていたヴィルヘルムが飲み物を差し出す。
「ひとまず小休憩時間にしよう」
「ありがとうございます」
「適当に座っていいから」
お言葉に甘え、ソファーの一角に腰掛けた。残り30分を切るまで、まだ少し余裕がある。
「カービィとプリンセス・ピーチは?」
「カービィは二度寝中」
「ピーチは午後の支度をしてたから、ひとまずカービィを任せてボクらだけ来たんだ。キノピオもいるし、時間通りには来るはずだけど」
「あの桃玉、ほんと寝るの好きだよね」
寝転びながら肘を立てる子供リンクは不意にエレナを見遣ると、彼女が膝上に置いていたマニュアルに唖然とする。
「それ……仕事内容のやつ?」
「? はい。そうですよ」
「いや分厚⁉︎ もはや鈍器じゃん! 誰作ったの?」
「僕だけど」
ヴィルヘルムが答えれば、「あ〜」と半眼で頷く。
「そりゃあそうなるよね。あんたが作れば」
「どういう意味?」
「生真面目なあんたの事だから、起こり得る異常事態の対処方法を全部事細かに書いたでしょ」
「うん」
「絶対持ち歩かないほうがいいよそれ。大半は意味がないから」
「ちょっと、意味がないなんて言わないでくれるかな。いざとなったら武器にもなる優れものじゃん」
「結局武器扱いかよ」
目を皿にしてやり取りを見つめていたエレナは、耐えきれず小さく笑みをこぼす。
子供リンクは不服げに額に手を当て、嘆息した。
ピーチとカービィ合流後、ヴィルヘルムは今一度試合内容を説明。
「本日は5分間で撃墜数が多いチームが勝利となります。アイテムありの、ステージは『ドルピックタウン』」
「げっ。僕、あのステージ苦手なんだよね。上行ったり下行ったりするし」
「それがたのしいじゃん!」
「リンクの世界には飛行機とかないもんな」
「ふふ、酔わないようにね」
試合開始、20分前。
控え室から『システム制御室』へと全員で移動する。先程、一番初めに訪れた際にはいなかった人物が彼らに気づき振り返った。
「やあ、おはよう」
「おはようございます。マスター様」
「今日も寝癖が酷いなぁ。ヴィルが整えないとこうなんだから」
「ははは……これでも少し整えているんだが、なかなか頑固でね」
頬を掻くマスターに、ヴィルヘルムはエレナに手のひらを差し向ける。
「マスター様。彼女が、【乱闘部署】の新入部員です」
「ああ、君か。昨日は挨拶出来ずにすまなかったね。私はマスター・
マスターはそう恭しく会釈をした。
エレナもまた名を名乗ると、彼は唇に指を添えながらくすくすと笑みをこぼす。
「あ、あの……?」
「すまない。少し微笑ましくてな。ヴィル直属の部下なんて初めてのことだから」
ヴィルヘルムはわざとらしく咳払い。
「仕事中ですよ」
「おっと、怒られてしまった。……少し早いが、私はこれにて失礼する」
「あら、見ていかれないの?」
頬に片手を添え小首を傾げるピーチに、マスターはいやと否定。
「『あちら側』で見守っているよ。エレナ、君も来るといい」
「えっ」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするエレナ。
不安げに隣のヴィルヘルムを見遣ると、彼は口元に笑みを浮かべて。
「行っておいで」
「……はい。分かりました」
「では行こうか。後は宜しく頼む」
そう一同に軽く手を振るマスターに、エレナはマリオ達に軽く頭を下げるとついて行った。