2:お仕事開始
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「ご飯、美味しかった?」
朝食時間を終えて食堂に残ったのは、エレナとヴィルヘルム、そして厨房で働く料理人らだけとなる。
食器が鳴る音と水の音が聞こえる中、エレナは「美味しかったです〜……」と苦笑。
(正直緊張し過ぎて分からなかった)
「なら良かった。じゃあ早速、お仕事に入ろうか」
と、ヴィルヘルムが向かった先は――厨房にある冷蔵庫。
そのうちの一つに触れれば、ガチャリ、という音を立てて扉が開く。
「この冷蔵庫は【
自分達が飲む用だろうかと見つめるエレナだったが、ヴィルヘルムは系統が異なるものを複数個腕に抱える。明らかに二人分ではない。
「エレナさんも選んでいいよ」
「えっと……ではこれで」
「うん。保冷バックはここにあるからね」
肩掛け紐がついた保冷バックの中に、先程の飲み物と保冷剤を入れる。
ここでエレナは何となく察した。
「この飲み物ってもしかして……」
「そう、今日の『大乱闘』に出場するファイター達用のだよ」
「なるほど……?」
疑問なのか否か分からないが、違和感を覚えるエレナ。
「飲み物は基本こっちで用意する。万が一、何かが混入するのを防ぐためにね。この冷蔵庫は僕がいないと開かないから、飲み物用意するところまでは少なくともやるよ」
「分かりました。私でも開けられるようにはなりますか?」
お仕事の一環であれば、と純粋な気持ちで尋ねるエレナに、ヴィルヘルムはにこりと微笑む。
「そのせいで『片手と眼球をなくしても』いいなら、登録するよ」
「……遠慮しておきます」
「冗談はさておき」と保冷バックを肩に、ヴィルヘルムはエレナを呼ぶ。
「これが終わったらいよいよ『スタジアム』に移動だね」
次の目的地までの間、エレナは改めて『大乱闘』の説明を受けた。
各エリアから選出された参戦者――『ファイター』達が、激しく競い合い、互いを高め合う一端を、『娯楽』として国民に提供している。
しかし、『大乱闘』は単なる娯楽ではなく、発展の補助としても成り立っている。事実、国を基準として経済は右肩上がりだ。
「今までも僕は『大乱闘』に関する事柄……内外問わずになるけど、広報活動やイベント、商品開発に取り組むつもり」
そこで、とヴィルヘルムは立ち止まる。
「エレナさんにはファイターの皆のサポートを中心に動いて欲しい。僕も出来るだけしてるつもりだけど、何分時間がなくて」
エレナは返答に困ってしまう。
なぜなら彼女は、帰るべき『元の世界』がある。それが近い日なのか、遠い日になるかは。現時点では分からない。
そんな自分が、そのような大役を任されていいのだろうか?
それに――。
(仲良くできるか不安……)
「仲良く出来るか分からない?」
胸中を看破したヴィルヘルムは、驚くエレナを瞳に映して。
「仲良くなろうとしなくていい。ましてや、友達になろうとなんて」
冷たい言葉――が、ヴィルヘルムは微笑する。
「僕が大事にしていることはただ一つ。彼らの、良き『理解者』であること」
「良き理解者……」
「うん。彼らがどんな思いで、どのような過去を辿りここに来たのか。……全てを理解することはできなくても、最善を取ることはできる」
「これは、僕の持論だけど」。
歩みを再開したヴィルヘルムの少し後ろを、エレナも並ぶ。
先程の言葉を自分なりに解釈しながら。
「着いたよ。ここが『スタジアム』」
不思議な円濤が立ち並ぶ空間『ポータルルーム』を経由――初めての感覚に瞑っていた目を開けば、そこは煉瓦造りの城とは異なる造りの部屋。
『アルス城』より徒歩30分の場所に位置する『スタジアム』に、僅か数秒で到着した。
「ここからはマニュアルを見ながら確認してね」
「はいっ」