（ルフレ編）

　絢爛たる衣装で着飾った人々で賑わう『スタジアム』ステージ上。
　宰相兼機会技師であるマスター自ら手掛けたプログラムによって、辺りはシャンデリアの光が瞬く夜会会場に様変わり。
　招待された城の役員達は皆嬉しそうに歓談する中、隣に並ぶタキシードに身を包んだルフレが苦笑を浮かべる。

「やっぱりこういう場は堅苦しいね」
「そうですか？」
「うん。パーティーを楽しんでいるように見えて、商談なんかも行われるから」

　ほら、とルフレが示した先では同じくタキシード姿のヴィルヘルムが来賓らと会話をしていた。
　美辞麗句が飛び交うその会話は明らかに裏があるもので──確かに、とエレナも眉を顰める。

「元の世界でもよくあったよ。でも今回は君と楽しむだけだけどね」

　片目を瞑ってみせたルフレに、エレナが微笑みで応える。
　そんな彼らの耳朶に、ピアノの音色が鳴り響いた。どうやらダンスの時間を迎えたらしい。
　ルフレはエレナの正面に回ると、片手を胸に、もう片手を差し伸べる。

「僕と踊っていただけますか？」

　恭しく会釈する彼を前にして、エレナははにかむ。

「はいっ喜んで！」