夢を看る者(名前変換小説)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
魔導書の秘密
「なるほど……勉強になります!」
「ほう、流石だなルフレ」
「これぐらいは軍師として当然だよ。ここにいると、色んな国の戦略が学べるから策の幅が広まるしね」
城の回廊をひとり歩くヴィルヘルムは、部屋から漏れ聞こえる賑やかな会話に足を止めた。
そこは、古今東西ありとあらゆる書籍が寄贈されている王都一の名を冠する図書室。常に開け放たれている扉を潜り声の主らを探せば――ルフレを中心に、クロムとエレナがテーブルを囲んでいた。卓上にはリバーシで使用する黒と白の碁石が並べられている。
「あ、ヴィル。何か用かい?」
本棚の影から現れるや否や、ルフレがこちらに笑みを讃える。ヴィルヘルムは軽く会釈すると、クロムとエレナも交互に見遣る。
「ルフレ様を探しておりましたが……お取り込み中でしたか?」
「いや、今一区切りついたところだ」
「ルフレさんに戦術を教わっていたのです!」
クロムとエレナの言葉に、ルフレは嘆息した。
「まだ基礎の基礎だけどね。彼らに戦術を教えるのは大変だよ……」
数分前――。
『この白の碁石を君、黒の碁石を敵と仮定しよう。例えば君が一人の時、敵に四方を囲まれてしまった。さあどうする?』
『なんだ簡単じゃないか。全員倒せばいいだろ?』
『クロム……』
『全員倒してしまえば良いのですね!』
『よくない。……クロム、もしこの敵が全員ダークマージやソーサラーだったらどうするんだ。魔防が低い君じゃあやられる一方だよ』
『い、一理あるな』
『百理あるよ。それとエレナも』
『は、はいっ』
『君自身が求めているのは、いざという時に逃げる為の策だろう? なら、この状況下に置かれたとき君がすべきことは?』
『逃げること……ですね!』
『そういうこと。誰かが助けてくれると信じて身の安全を確保するんだ。……となるとこの場合、君は《賢珠》を使って対応すると考えて』
『ええっと……目眩しするのが良いと思うのですが』
『うん、そうだね。光の賢珠を地面に撃ち、相手の目が眩んでいるうちに包囲網を抜け出す。もし相手が追ってくるようであれば水や土の《賢珠》で足止めすればいい』
『なるほど……勉強になります!』
ルフレの苦労を察したヴィルヘルムは苦笑。部下がご迷惑をおかけしました、と目線で訴えておく。
「それでヴィル、僕に用事って?」
「『いつもの』が到着いたしましたので、ご確認をお願いいたします」
「ありがとう。確認しておくよ」
目の前で繰り広げられた会話に、クロムは「あれか」と得心が行き、エレナは小首を傾げる。
「あのぅ……『いつもの』とは?」
一か八か尋ねてみると、ヴィルヘルムはそういえばと思い出したかのように目を開く。
「エレナにはまだ話していなかったね。『いつもの』は、ルフレ様が乱闘で使用する武器の補充のことだよ」
ルフレの攻撃手段である魔導書や剣は、使用回数の上限が存在する。それゆえに戦術を謀るのだが。
試合中に途切れぬよう、こまめに買い足しているのである。
「早速今から確認しに行こうかな。みんなも一緒に来るかい?」
「いいのですか⁉︎」
「う、うん」
真っ先に食いついたエレナにたじろぎつつ了承。
「俺も久しぶりに魔導書を見たくなったな。ヴィルはどうするんだ?」
「お言葉に甘えて。ぜひ同行させてください」
「もちろん。じゃあ行こうか」
ルフレは三人を引き連れ、『アルス城』一階に存在する倉庫へと向かった。
☆★☆
「これだね」
ファイター専用の倉庫に辿り着いた一行。
倉庫の一角を白く染める布を捲れば、木箱に敷き詰められた魔導書と剣の姿が。
「凄い……! こんなにたくさん……!」
「触ってみるかい?」
「い、いいんですか⁉︎」
返事の代わりにトロンの魔導書を「はい」とエレナに差し出す。
ほのかに新品の本特有の香りが鼻腔をくすぐる中、目を輝かせるエレナ。
ルフレは目を離さずに、一歩後ろから見つめていたクロムとヴィルヘルムと並ぶ。
「……おい、大丈夫なのか? 誤発でもしたら……」
「彼女なら大丈夫だよ。クロムとヴィルは、念の為触れないようにね」
「はい」
声を顰める彼らの会話を、魔導書に夢中のエレナが耳にすることはなかった。
「ここでは詠唱なしで発動出来てしまうから、より注意が必要だよな」
「うん、そうだね」
「詠唱……ですか?」
その単語だけ耳にしたエレナがこちらを振り返る。
「魔導書には詠唱が必要なのですか?」
「少なくとも僕達の国ではそうだったんだ。王国ではその限りじゃないんだろう?」
「はい。主に魔術の補助的な役割を持ちますね」
へぇ〜と頷いたエレナは、自身の手にするトロンの書に視線を向けた。
「詠唱って、どんな内容なんですか?」
それは純粋な好奇心だった。ルフレの隣に立つヴィルヘルムもまた、興味を惹かれたようで。
「僕も聞いたことありませんでした。宜しければご教授くださいませんか?」
「ご教授って大袈裟な……。うん、いいよ」
ルフレはエレナが持つトロンの詠唱を口にした。
「【黒き雷神より生まれし稲妻の声よ。大地へと轟け】――だったね」
「かっこいいです〜!」
「……おい。何かおかしいぞ」
興奮するエレナに対し、クロムは眉間に縦皺を刻む。
見ればエレナの手元――いや、背後にある魔導書の一部も光り輝いている。
ルフレの何気ない詠唱が、その場にあったトロンの書“全て”に反応してしまったのだ。
まずいと即座にエレナの手からトロンの書を叩き落としたルフレを、クロムがエレナごと両腕それぞれに抱え出口へと走り、先に出口へと避難したヴィルヘルムが長杖を召喚。
「【何人 侵せぬ穢れなき聖櫃 よ、ここに】――【ホーリーアーク】!」
ヴィルヘルムが倉庫全体を覆う結界を展開すると同時、眩い雷光が視界を焼き尽くさんばかりに発生する。
余波はあれど雷は彼らを襲うことなく、結界内で沈黙。
四人が互いに顔を見合わせるのと、騒ぎを聞きつけて兵士が駆けつけたのはほぼ同じだった。
「「「「……ごめんなさい」」」」
「なるほど……勉強になります!」
「ほう、流石だなルフレ」
「これぐらいは軍師として当然だよ。ここにいると、色んな国の戦略が学べるから策の幅が広まるしね」
城の回廊をひとり歩くヴィルヘルムは、部屋から漏れ聞こえる賑やかな会話に足を止めた。
そこは、古今東西ありとあらゆる書籍が寄贈されている王都一の名を冠する図書室。常に開け放たれている扉を潜り声の主らを探せば――ルフレを中心に、クロムとエレナがテーブルを囲んでいた。卓上にはリバーシで使用する黒と白の碁石が並べられている。
「あ、ヴィル。何か用かい?」
本棚の影から現れるや否や、ルフレがこちらに笑みを讃える。ヴィルヘルムは軽く会釈すると、クロムとエレナも交互に見遣る。
「ルフレ様を探しておりましたが……お取り込み中でしたか?」
「いや、今一区切りついたところだ」
「ルフレさんに戦術を教わっていたのです!」
クロムとエレナの言葉に、ルフレは嘆息した。
「まだ基礎の基礎だけどね。彼らに戦術を教えるのは大変だよ……」
数分前――。
『この白の碁石を君、黒の碁石を敵と仮定しよう。例えば君が一人の時、敵に四方を囲まれてしまった。さあどうする?』
『なんだ簡単じゃないか。全員倒せばいいだろ?』
『クロム……』
『全員倒してしまえば良いのですね!』
『よくない。……クロム、もしこの敵が全員ダークマージやソーサラーだったらどうするんだ。魔防が低い君じゃあやられる一方だよ』
『い、一理あるな』
『百理あるよ。それとエレナも』
『は、はいっ』
『君自身が求めているのは、いざという時に逃げる為の策だろう? なら、この状況下に置かれたとき君がすべきことは?』
『逃げること……ですね!』
『そういうこと。誰かが助けてくれると信じて身の安全を確保するんだ。……となるとこの場合、君は《賢珠》を使って対応すると考えて』
『ええっと……目眩しするのが良いと思うのですが』
『うん、そうだね。光の賢珠を地面に撃ち、相手の目が眩んでいるうちに包囲網を抜け出す。もし相手が追ってくるようであれば水や土の《賢珠》で足止めすればいい』
『なるほど……勉強になります!』
ルフレの苦労を察したヴィルヘルムは苦笑。部下がご迷惑をおかけしました、と目線で訴えておく。
「それでヴィル、僕に用事って?」
「『いつもの』が到着いたしましたので、ご確認をお願いいたします」
「ありがとう。確認しておくよ」
目の前で繰り広げられた会話に、クロムは「あれか」と得心が行き、エレナは小首を傾げる。
「あのぅ……『いつもの』とは?」
一か八か尋ねてみると、ヴィルヘルムはそういえばと思い出したかのように目を開く。
「エレナにはまだ話していなかったね。『いつもの』は、ルフレ様が乱闘で使用する武器の補充のことだよ」
ルフレの攻撃手段である魔導書や剣は、使用回数の上限が存在する。それゆえに戦術を謀るのだが。
試合中に途切れぬよう、こまめに買い足しているのである。
「早速今から確認しに行こうかな。みんなも一緒に来るかい?」
「いいのですか⁉︎」
「う、うん」
真っ先に食いついたエレナにたじろぎつつ了承。
「俺も久しぶりに魔導書を見たくなったな。ヴィルはどうするんだ?」
「お言葉に甘えて。ぜひ同行させてください」
「もちろん。じゃあ行こうか」
ルフレは三人を引き連れ、『アルス城』一階に存在する倉庫へと向かった。
「これだね」
ファイター専用の倉庫に辿り着いた一行。
倉庫の一角を白く染める布を捲れば、木箱に敷き詰められた魔導書と剣の姿が。
「凄い……! こんなにたくさん……!」
「触ってみるかい?」
「い、いいんですか⁉︎」
返事の代わりにトロンの魔導書を「はい」とエレナに差し出す。
ほのかに新品の本特有の香りが鼻腔をくすぐる中、目を輝かせるエレナ。
ルフレは目を離さずに、一歩後ろから見つめていたクロムとヴィルヘルムと並ぶ。
「……おい、大丈夫なのか? 誤発でもしたら……」
「彼女なら大丈夫だよ。クロムとヴィルは、念の為触れないようにね」
「はい」
声を顰める彼らの会話を、魔導書に夢中のエレナが耳にすることはなかった。
「ここでは詠唱なしで発動出来てしまうから、より注意が必要だよな」
「うん、そうだね」
「詠唱……ですか?」
その単語だけ耳にしたエレナがこちらを振り返る。
「魔導書には詠唱が必要なのですか?」
「少なくとも僕達の国ではそうだったんだ。王国ではその限りじゃないんだろう?」
「はい。主に魔術の補助的な役割を持ちますね」
へぇ〜と頷いたエレナは、自身の手にするトロンの書に視線を向けた。
「詠唱って、どんな内容なんですか?」
それは純粋な好奇心だった。ルフレの隣に立つヴィルヘルムもまた、興味を惹かれたようで。
「僕も聞いたことありませんでした。宜しければご教授くださいませんか?」
「ご教授って大袈裟な……。うん、いいよ」
ルフレはエレナが持つトロンの詠唱を口にした。
「【黒き雷神より生まれし稲妻の声よ。大地へと轟け】――だったね」
「かっこいいです〜!」
「……おい。何かおかしいぞ」
興奮するエレナに対し、クロムは眉間に縦皺を刻む。
見ればエレナの手元――いや、背後にある魔導書の一部も光り輝いている。
ルフレの何気ない詠唱が、その場にあったトロンの書“全て”に反応してしまったのだ。
まずいと即座にエレナの手からトロンの書を叩き落としたルフレを、クロムがエレナごと両腕それぞれに抱え出口へと走り、先に出口へと避難したヴィルヘルムが長杖を召喚。
「【
ヴィルヘルムが倉庫全体を覆う結界を展開すると同時、眩い雷光が視界を焼き尽くさんばかりに発生する。
余波はあれど雷は彼らを襲うことなく、結界内で沈黙。
四人が互いに顔を見合わせるのと、騒ぎを聞きつけて兵士が駆けつけたのはほぼ同じだった。
「「「「……ごめんなさい」」」」
4/4ページ