1:『意味』なく迷い込む
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面接会場は広々としたシンプルな空間。六名の面接官の対面に、希望者も並ぶ。
最後にエレナが入室すると、腕章をつけた職員がマイク片手に面接を始めた。
「それでは面接を始めます。まずは自己紹介を……そちらの方からどうぞ」
面接は順調に進み、いよいよ終了の時刻が迫る。
「それでは最後に――『ヴィルヘルム』様」
「はい」
面接官の中でも比較的目立つ――勿忘草色の瞳をした少年は立ち上がる。
「完結にお答えください。……『大乱闘』は好きですか?」
『……?』
「もし好きであれば、応援しているファイターをお答え下さい」
困惑する希望者一同。面接官は誰もが表情を変えず、ヴィルヘルムに場を任せている。
「ではそちらの方からお願いします」
「はい! 私は『大乱闘』が好きです。応援しているファイターはマリオさんです」
「ありがとうございます。次の方」
ヴィルヘルムが淡々と回す中、皆意図を理解しないまま答えていく。
そして遂に、エレナの番。
「最後の方」
「はいっ! 私は……好きです。『大乱闘』」
見たことはないが、きっと好きになる。
そんな確信を持って答えたエレナだったが、言葉を詰まらせてしまう。
「応援しているファイターは……」
「ファイターは?」
「……分かりません」
それは素直な気持ちだった。
『得意なキャラ』と『応援しているキャラ』は違う。考えに考え抜いて、エレナは曖昧な答えを出した。
会場に動揺が走る。
「……ありがとうございます」
唯一揺らがなかったヴィルヘルムは進行者の職員に目配せし、着席。
「それでは面接を終了します。結果発表まで、控え室でお待ちください」
前へ続いてぞろぞろと退室する最中、エレナの気分は落ち込んでいた。
(絶対落ちた……)
――その背中を、ヴィルヘルムは扉が閉まるまで見つめていた。
面接は日が暮れてからも続いた。
希望者は約千人。その日に結果が発表されるというから驚きだ。
いよいよ面接結果が張り出される時刻を迎える。
期待1割。落胆9割。
初めに配られた番号札を手に、エレナは巨大なスクリーンを見上げる。
『それでは採用者を発表いたします』
映し出された画面に――希望者がざわめく。
落ちた、受かった、ということ以前に。
『乱闘部署』の採用者が一名いる事実に会場は沸く。
採用が始まって以来初だ。
『採用された皆様は別室にお集まりください』
職員の指示に従い、数十人が大移動を始める。それでも全体の半分にも満たないが。
何度も何度も番号札を確認したエレナも、彼らの後に続いた。
(私受かってる……『乱闘部署』に……⁉︎)