ドキドキ⁉︎モテ期襲来‼︎
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(ひとまずここに隠れよう!)
誰もいない倉庫に逃げ込んだエレナは、努めて冷静に現状を整理する。
(皆さんの様子があまりにも変……いつも私を気遣ってはくれるけど今日はこう、違うというか……距離が近いというか……はっ、そうだ! 乙女ゲームみたいなんだこれ! ……まさかね。ないない)
木箱と木箱の間に身を潜めるエレナに忍び寄る不穏な影。
(誰かの魔法にかかってる、なんてことはなさそうだし……一体何があったんだろう。う〜ん……、ん? 待って、『あの人』だけは普段通り――)
「こんなとこで何してンだ?」
接近を許してしまったことに色を失う。無理やりそちら側に引き寄せられ、木箱に背中を押しつけられる。
「理由は大体分かってけどよ。逃げ込んだ場所が悪かったなぁ、エレナ」
「っクレイジーさん」
よりにもよってクレイジーに見つかってしまった。
悪魔の笑みを見せる男はエレナの胸元を強く締め付け、圧迫している。
「い、痛いです、離してください」
「こンぐらいで
「せいやッッ‼︎」
勇ましい掛け声とともに目の前に迫るクレイジーが視界から吹っ飛ぶ。
凄まじい轟音と揺れが先程までクレイジーが居た場所を襲い、床が抉れる。
背後からの攻撃に間一髪横転して回避したクレイジーは、ヒュウっと不機嫌そうに口を鳴らす。
「……やっと見つけた。エレナ、平気?」
助けてくれたのはヴィルヘルム。だが、ギリギリ助かっていない気もする。彼も様子がおかしい一人だ。
隙を見て逃げ出そうと倉庫の出入口を見るも。
「良かった。ここにいたんだね」
「貴殿のためにハルバードを近くにつけてある。美味しい甘菓子でも振る舞おう」
ルフレやメタナイトを始めとした男性陣がぞろぞろと集まってきていた。完全に逃げ場を塞がれてしまう。
「エレナ、少し待っていて。全員追い出すから」
「勇ましいな、ヴィル」
「寝言は寝て言え、王子さま?」
(まずいまずいまずいまずい!)
身の危機を肌で感じるが、自分には抵抗できる術はない。
諦めかけた時、クレイジー襲来で中断された思考が脳裏を過ぎる。
――今の段階で起こしてあげてもいいけど、もう暫く見ていることにするよ。
唯一『通常通り』だった彼の者の言葉を思い出す。
それが確かなら、近くでこの光景を見ているはず。
……一か八か。
エレナはすうっと息を吸い、精一杯の声量で叫ぶ。
「助けてくださいラフェルトさんッッッ‼︎‼︎‼︎」
数多の手が自身に伸びるのを目にし、恐怖から両目を強く瞑る。
真っ暗な視界の中、助けを求めた人物の笑い声が響く。
「わりと愉快だったけど、そろそろ『本物』に怒られるしね。シアワセな夢はここまでにしようか」
目を開けたくとも開けられない。声を出したくとも出せない。それどころか、急速に意識が薄れてゆく。
「それじゃあ余さず……い た だ き ま す」
エレナが意識を完全に失う直前に耳にしたのは、不気味な咀嚼音であった。