夢を看る者(名前変換小説)

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はじめましての町


 お仕事初日の――すっかり上り詰めたお日様が傾き始める正午過ぎ。

「それじゃあ行きましょうか」

 【乱闘部署】制服から元の服装に着替えたエレナを、ピーチとマリオが城の外へと案内する。
 『アルス城』眼下に広がる城下町は、本日も大変な賑わいを見せていた。

「はぐれないように気をつけろよ」
「はい」

 王都とあって人通りは激しく、雑踏の波に気を配りながら二人についていく。
 四方に広がる石畳みの大通りには、多種多様な店々が軒を連ねている。西洋風のものから和風のもの、さらには近未来的なものまで、ありとあらゆる文化の店がところ狭しと立ち並んでいた。
 すれ違う人々の種族も一貫性はないが、互いに興味や険悪といったムードはなく不思議と馴染んでいる。

エレナちゃんはどんなお洋服が好きかしら。シックな佇まいのドレス? それとも、フリルがたくさんのワンピース?」
「あまりそういったものは……」
「あら、そうなの?」

 似合うのに、と柳眉を曲げるピーチは愛用のパラソルをくるりと一回転。
 エレナを挟んだ反対側に立つマリオは、人差し指を立てる。

「お金なら気にしなくていいんじゃないか? ヴィルに結構貰っただろ?」

 (トリップした影響で)無一文だとヴィルヘルムに話したところ、彼から前払いというていでお給料を支給された。
 流石宮使えだけある額であり、わざわざ遠慮する必要性はないのだが。こればかりは好みの問題。

「私、今着ているような服が好きなんです」
「そういうことね。なら、このお店なんてどう?」

 立ち止まったピーチの視線には、とある服飾店のショーウィンドウがあった。マネキンが着飾る服は確かに今の服と似た系統のもの。

「わあっ、ステキです」
「中に入りましょ。マリオ、ちょっと待っててね」
「ゆっくり見てこいよー」

 パラソルを預かったマリオがひらひらと手を振るのを尻目に、エレナはピーチと共に入店。
 普段着慣れない系統の品々に興味津々といった具合のピーチに戸惑いつつ、エレナは品を選んだ。

「じゃあこれを――」
「お支払いをお願いするわ」

 会計を済ませようとしたエレナを遮り、ピーチがささっと支払ってしまった。
 あまりの速さと予想だにしない出来事を前に惚けるエレナに、ピーチは片目を瞑る。

「ぴ、ピーチ様、お金は……」
「プレゼントよ。遠慮なく受け取ってちょうだい」

 みなまで言わせず、ピーチはエレナを連れて店を後に。待機していたマリオはパラソルを差し出しながら、何かを察したように苦笑を溢す。

「……ま、大人しく受け取っとけ」

 ぎこちなく頷いたエレナを知ってか知らずか。ピーチは再びパラソルを回すと、にこりと彼らに振り返る。

「さ、次のお店に行きましょう」



 服飾店巡りも一通り終え、マリオの両脇が沢山の紙袋で埋まった頃。
 彼らが訪れたのは、機械仕掛けの家具――所謂家電製品を取り扱う店。エレナの部屋に設置する家電を揃えるため、なのだが。

「おいおいまさか、ボクに持って帰れと言わないよな?」

 これ以上……いや、そもそもが重い家電製品を城に持ち帰るのは苦労する。げんなりとするマリオに、半眼を作ったピーチは「言わないわよ」と返す。

「流石に運んできて貰うわ」
「なら良かった」
「というわけだから、早速選んじゃいましょう」

 テレビに冷蔵庫、小さなコンロにドライヤー――後々困らないように考えながら、あれはこれはと品々を押さえる。
 最後に城に搬入する段取りを決めれば、ひとまず買い物は終了。

「お付き合いくださり、ありがとうございました!」

 エレナが謝辞を述べると、二人は揃って笑みを浮かべる。

「お手伝いできて楽しかったわ」
「また何かあったら言ってくれよな」

 暖かい言葉に感涙を滲ませつつ、エレナもまた口元を綻ばせた。

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