SSまとめ
今回の事件は第14小隊の拠点ではなく、『ミラージュ・タワー』の上層階で発生した。
「うそ……だろ……っ……」
戦慄が走るアンガの体。他の四人も、目の前で起きている出来事に目を見開いては膠着状態。
「おにーさんたちだれ?」
「ねーねーここどこー?」
あれやこれやとワイワイ騒ぐ五人の幼子。どことなく見覚えがある容姿に、モルス達は頭を抱えて。
「ブレイド達じゃん……」
どうやら第14小隊のメンバー達が、記憶と共に若返ってしまったようだ。
原因に覚えがある五人はやっちまったと負のオーラを背中に背負って項垂れる。
「我らが回収した若返りの機械が誤作動を起こしたようだ」
「そこまで強力なものでもないのじゃろ? 数刻すれば切れよう。それまではここに居てもらって……」
やり取りを耳にしていたジェダルの足元で、幼きヴァニラはマントを掴みながらねーねー、と。
「おめめいたいの? だいじょうぶ?」
「……」
恐らく眼帯のことを言っているのだろう。痛くないのだが、幼子に慣れていないジェダルは助けを求めるように視線を四人に送るもスルー。早く返してやれよとアンガに言われ、ボソボソと返すも。
「きこえない……」
「ヴァニラ。こっちこいっ」
グイッとブレイドに引き寄せられて距離を離される。
「どうしたの?」
「あきらかにあやしいだろ。ゆうかいだろこれ」
「えっゆうかい?」
言われてみれば……とブレイドとヴァニラ以外の三人にも疑念を抱かれ、部屋の端に固まる。
「違う違うよ!?」
「そうだ! 我らはアラン達を誘拐など……」
「なんでおれのなまえ……」
「ゆうかいはんはみんなそういう……」
「アルタリア喋るな!!」
怪しいとは言っているが、実際警戒しているのはブレイドとアランの男子組。女子は三人できゃっきゃっ会話を弾ませていることに当事者以外気づいてない。
「マズイぜ……? ここで騒がれたりしたら下に声が聞こえるかもしれねーぞ?」
「騒動が起きては面倒だ。どうにかしろ」
「他人任せじゃん」
「我に一つ考えがある」
耳を貸せとアルタリアは五人に聞こえぬようコソコソ。真っ先に拒否したのはジェダルとミラクロア。
「わらわはやらぬぞ! そなた達だけでやれば良かろう!」
「ボクら三人でやっても茶番だよ!」
「どうせ戻ったら記憶ねーよ! 一瞬の恥だ!」
「そう! お互いに言わなければオールオッケー!」
「な訳ない」
「とにかくやるぞ! 今から口上を考えている余裕はない。ハルドラに任せる。因みに全員拒否権はない!」
「ええ〜……分かった! ボクの後に続いてっ」
「良い子のみんな! 刮目せよ!」
良い子の言葉に反応する五人。
ハルドラは天高く人差し指を突き出して。
「この世に蔓延る悪に黎明を!」
「滾れ! 不滅の炎! 赤炎王アンガ・モルス!」
「だ、断罪せし封印の氷牢! 蒼氷王ミラクロア・モルス!」
「遍く
「疾走する電撃の光! 白獅子王アルタリア・モルス!」
「……顕現し我が魔眼。黒魔王ジェダル・モルス」
「我らエレスト戦隊モルスマン! ここに見参!」
ジャーン! とBGMが聞こえて来るかのように決まるポーズ。フッとポーズを解くと、ジェダルは壁際に向かい拳で殴りながら。
「我は誉れ高き黒魔王ジェダル・モルス我は誉れ高き黒魔王ジェダル・モルス我は誉れ高き黒魔王ジェダル・モルス我は誉れ高き黒魔王ジェダル・モルス我は誉れ高き黒魔王ジェダル・モルス……」
自己暗示して羞恥心抑えこんどる……。
心の中で普段もヤベーけどなと思いつつミラクロアにも目を向けると。
「わらわは気高き蒼氷の王ミラクロアわらわは気高き蒼氷の王ミラクロアわらわは気高き蒼氷の王ミラクロアわらわは気高き蒼氷の王ミラクロアわらわは気高き蒼氷の王ミラクロア……」
こっちもかー。
両手で顔を覆い自己暗示を掛けるミラクロア。暫く立ち直れないかもなとアンガは他人事のように思った。
問題の子供達(元大人達)はと言うと──。
「すっげー!!」
「カッコいい……!」
「ほんものだー!」
「おにーさんたちせいぎのみかただったんだね!」
「さいしょからそういってよー」
見事に騙されてくれてる。
五人の純粋な瞳に罪悪感に苛まれるも本来の目的は達成。何か大きなものを失いながら、少しここで待っててと伝えると素直に頷いてくれるようにはなった。
そして数分後──……。
「あれ……?」
「ワタシ達なにを……」
眩い閃光に包まれた五人は、本来の姿(大人)に戻っていた。記憶が少々錯乱している五人の回復を待ち、大丈夫かと声を掛ける。
「なにがあったので──」
「ぶふっ」
レベッカの言葉を遮るようにブレイドが吹き出す。それを皮切りに、レベッカとベルタも釣られてくつくつと笑い始めた。
「ホントッ……わらわなっ……いで……フフッ」
「すみませんすみません……私のツボが浅いばかりにッ……」
「笑いながらっ……ゆうなしッ……」
あ、これ記憶あるな。
「オマエら失礼だろ! オレ達のためにしてく……ブフッ」
「フォローするなら最後まで耐えろ!!」
アランも必死に笑いを抑えているようだが失敗。唯一無表情のヴァニラに、腹を抱えながらブレイドが。
「ヴァニラはっ……覚えてねぇのあれ……っ……」
「あれって……『我らエレスト戦隊モルスマン。ここに見参』って言うの?」
無表情で答えるヴァニラに笑い転げる一同。
「ま、じでっ……まじでやめろッ……」
「お腹がッ……お腹が痛いっ……」
「き、貴様らッ……笑わないでくれッ……」
「ッ……ッ……」
四人の反応にプルプルと震え、羞恥心に顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「「「「ブレイド/レベッカ/ベルタ/アラン!!!」」」」
「……ヴァニラ」
「はい」
「貴様はそのままで居ろ」
「……?」
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
初モルスSSです(“黒魔王”とかバレンタインデーあったけどね)。
今回悪いのはブレイド達じゃないです(悪意ある)。機械を置きっぱにしたのが悪いです。