SSまとめ


 説明しよう!
 “花贈りの日”とは、有名な御伽噺『天華の庭園と眠り姫』で登場するフリージアの誕生日に、恋人でありのちの「眠り姫」アリアーテが花を贈った日とされる。この事から、女性から男性に花などの贈り物をする習慣が生まれた。近年では恋人同士は勿論のこと、家族や友人など感謝を伝えたい相手に贈り物をするイベントにも変化しており、更にはお菓子会社の戦略によって手作りのチョコレートを渡すのが一般的になっている。何処ぞの世界では“バレンタインデー”とも言われているな!

 本編では赤い月やら悪魔やらで騒がしいが、それは置いといて。今日の“エレメンタル大陸”は、休日と重なったのもあり、花贈りの日一色であった。街中に甘い香りが漂っている。


 ──はじまりの地、第14小隊拠点兼宿舎。

「……」

 宿舎の一階。ブレイドは自身のエレフォンを見つめながら哀れんだような眼差しをしていた。LINKに届いたのは、同じ場所に居るはずのアラン。

『と言うわけで引きこもるからヨロシク』

 どういうわけ??

 この場にいないアランに向けて突っ込むも、理由は分かっていた。

 アランが甘い物を苦手となったきっかけは、この花贈りの日だと聞いている。そのトラウマも加えて、外では甘い匂いが風に乗って流されている為、部屋から出たくないのだろう。贅沢な悩みだ。

「ブレイドー、行くわよー」
「おう」

 エレフォンを懐にしまい、入り口で待つ三人と合流。アランを置いて、四人は宿舎を出発した。





「あ、居た居た。アイザック!」

 五人のダークナイトが所属する『闇黒騎士隊』の拠点にて。ミリアムは廊下を歩くアイザックの姿を見つけ、呼び止める。

「げっ、ミリアム」
「『げっ』って何よ。失礼ね」

 はい、これ。とミリアムは綺麗に梱包された箱を差し出す。言わずもがな、花贈りの日にちなんだプレゼントだ。

 しかし、アイザックはこれでもかと言うほど嫌そうな顔で見つめて。

「ど、毒か……」
「本当に失礼ね。買って来たに決まってるでしょ。作るの面倒いし」

 なら良かったと安堵し、箱を受け取る。ミリアムから文句ある? と言いたげな視線がグサグサ刺さるので、アイザックはバックステップで視界から逃げるように消えた。



「……」
「お、バラバス。ベルタ(妹)から貰えたのか」

 青い包装紙で包まれた箱を手に立っていたバラバスの背中から、エステラはヒョイっと顔を出した。バラバスは若干嫌そうに顔を歪ませていたが、エステラは気にする素振りも見せず。

「貴様には関係ない」
「なんだなんだ、照れ隠しか?」
「……」
「まあまあ、怒るなって。ホラ、こいつで許してくれ」

 一ミリも思ってない癖にと思いつつ、バラバスはエステラが差し出した物を受け取る。

「……これは何だ」
「煎餅の詰め合わせだ。甘い物ばかりでは飽きると思ってな」
「私では無く、二人に渡した方がいい」
「アイザックとテラのことか? それならもう渡したぞ。ま、テラは出掛けてるから帰ってきてからになるけどな」

 エステラはバラバスの肩を軽く叩くと、その場から歩き出して。

「アタシが言える義理ではないが、もう少し素直になった方がいいぞ?」

 じゃあな、と手を振って歩くエステラの背中を、バラバスは余計なお世話だと言いたげに見送った。

 その直後。エステラが消えた先で叫び声が。

「クソババア! テメェ、やりやがったな!?」
「はて、なんの話だ?」
「とぼけんな! 俺の部屋にびっくり箱置いたのテメェだろ!」
「あの箱を素直に開けたのか? もう少し疑った方がいいぞ?」
「ふざけんな!!」

 バラバスは巻き込まれる前にと足早に離れた。





「やっほー、ブレイド〜。皆も来てくれてありがと〜」

 大陸の要人であるモルスが働く『ミラージュ・タワー』最上階にて。モルスが使っていると言うガラス張りの会議室を訪れた四人を、ハルドラ達が迎える。

「……アランは?」

 一人、アランの姿が見えないことに気づき、アルタリアは怪訝そうに尋ねた。

「あいつなら部屋に引きこもるって言ってたんで、伝えてないです」
「そ、そうか……。彼は甘い物が苦手だからな」

 そう笑うアルタリアが後ろ手で隠している物を、ブレイドは見逃さなかった。

「……まぁ、そろそろお昼だし、部屋から出てるとは思いますけど」
「なら行って来いよ? 後で騒がれても迷惑だしな?」
「アランはそんな奴ではないぞ。……そこまで言うなら行ってみるか」

 そそくさと会議室を後にするアルタリアを見送り、やれやれと肩の力を抜く。

「アルタリアはアルタリアでいいとして、はいっ! ボクからブレイドに!」
「ん。ちゃんと食えるんだろうな?」
「も〜! そんなこと言うんだったらあげないんだから〜!」
「悪かったって。さんきゅー」

「わらわからはこれを。気に入ってくれるとよいのじゃが……」
「す、凄いですミラクロア様……! お店で売っても可笑しくないですよこれ……。わ、私のもどうぞ……あまり上手くはないですが……」
「うむ。嬉しいのじゃ、ベルタ。大切にいただくとするかのう」
「はい。私も大切に頂きますね」

「アンガ様もどうぞ。……そんなに驚かれてどうしましたか?」
「あ、いや……オレにもくれるとは思ってなかったつーか……その……」
「……貰ってください。アンガ様に作ったのですから」
「……ありがとな、レベッカ!」

「今年一番の自信作です。どうぞ」
「今年はまだ始まったばかりだぞ。……受け取っておくとしよう」
「来月期待してます。お返し」
「……全く、誰の入れ知識やら。期待はし過ぎるな」





「うーん……」

 場面は戻り、第14小隊の拠点兼宿舎。部屋から出て来たアランは、お昼を作ろうと一階に降り、冷蔵庫の中身を見つめ唸っていた。

「パンあるし、サンドでも作るか」

 そうと決まれば、慣れた手付きでパンに挟む具材を作っていく。そろそろパンを焼くか、と考えていた時。ピンポーンと鳴るチャイム。

 こんな日に誰だろうか……?

 はーいと返事をし、扉を内側から開けると。

「あ、」
「いきなりですまない、アラン。少し良いだろうか?」

 突然のアルタリアの登場に声が出ない状態だったが、すぐにハイッと答えた。

「お茶淹れますね」
「気を遣わなくていいぞ。すぐに戻る」

 え? と疑問符を浮かべるアランの前に、アルタリアは一輪の花を。

「今日は“花贈りの日”であろう? 我から汝に、感謝の気持ちを込めて。花束では置き場所に困ってしまうのではないかと思って、一輪にさせてもらった」
「……ありがとうございます。アルタリア様」

 アランはピンクのガーベラの花を、それはそれは大事そうに優しく受け取った。





 アランを除く四人が帰宅したのは、黄昏時。夕ご飯の材料を買って帰って来た四人を、アランは一階で待っていた。

「アレ、アラン。部屋に引きこもっていたはずじゃあ……」
「ちょっといろいろあってな」

 アルタリア関連だろうと気付くも、空気を読んで口を挟まずに。

「これ食材ね」
「ああ。ありがとう」
「あと、アランにお菓子」
「えっ」
「大丈夫だ。甘くない物を選んだからな」

 と、渡された紙袋いっぱいに敷き詰められたお菓子達。食べ切れるか? と不安が脳内を過ぎるも、ありがとうと返す。

「来月のお礼期待してる。ブレイドも」
「……ヴァニラ、そういう日じゃないぞ。今日は」
「でもレベッカに言われた」
「……」
「目を逸らすな」


 “花返しの日”に続く──……。


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 バレンタインはSS。バレンタインで良いネタが思いつかなかったものですから……。

 来月はホワイトデーの内容でお送り致しまっせ。
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