SSまとめ


 それは、三つの出来事が重なって生まれた──悪い意味の“奇跡”だった。


 一つ、宿舎の一階と二階を繋ぐ階段の一部が、腐りかけていたこと。
 二つ、二階から一階に降りようとしていたレベッカが、腐りかけていた部分に足を乗せてしまったこと。
 三つ、部屋に置いてきたエレフォンを取りに、ブレイドが階段を上がろうとしていたこと。


 バキッ!

「!?」

 レベッカが階段に足を乗せた直後。木が割れ、体が宙に投げ出される。

「えっ──」

 階段の下に居たブレイドは避けることが出来ず、落ちて来たレベッカと衝突。

「レベッカッ!」
「オイ! 大丈夫か!?」

 慌てて朝食の支度をしていた三人が駆け寄る。ベルタはレベッカを、アランはブレイドを助け起こす。

「痛ってぇ……いきなり降ってくるとか反則だろ……」

 と、レベッカ。

「階段がいきなり壊れるのも、反則でしょ……」

 と、ブレイド。

 ここで、当の本人達を除く三人(と読者様も)は、違和感を感じた(だろう)。

「……ねえ、ブレイド」
「あ? 何だよヴァニラ」

 答えたのはレベッカ。

「れ、レベッカ……?」
「どうしたのベルタ?」

 答えたのはブレイド。

「い、」
「「い?」」
「入れ替わってるぞ……オマエら……」

 アランに言われ、またまたそんな事あるわけないと視線を合わせ──。

「ぎゃあああああああ!?」
「いやあああああああ!?」

 同時に叫んだ。

「ううう嘘だろ!? 俺レベッカになってるのか!?」
「ブレイド貴様! 早くレベッカの体を返せ!」
「無茶苦茶言うな!!」
「どうせ入れ替わるならヴァニラが良かったわ!!」
「わたし?」
「ブッ」
「アラン! てめぇ、笑うんじゃねぇよ!」
「悪い悪い」

 笑ってはいるが、事態が深刻なのは確かだ。深呼吸をして気分を落ち着かせる。

「ふー……。で、どうやって戻すか……」
「アランの無駄にある知識にはないの?」
「ヴァニラ、無駄にあるとは言わないでくれ。残念だが無いな」
「普通は書いてないだろそんな方法……ここは、再現してみるのはどうだ?」

 ベルタの提案に、当の二人は顔を引き攣らせた。無理もない。再現すると言うことは、頭ゴッツンしなければならないのだ。

「……いや、それは最終手段にしよう。万が一、レベッカに傷でもついたらいけないしな」
「俺はいいのか」

 ベルタ自身が引き下がり、ホッと胸を撫で下ろす。

「ネットに載ってるかな……」
「あ、『英知の書庫』にありそうじゃないか?」
「確かにそうね! リベリアさんなら知ってそうだし、早速行っ──」
「待った。二人は留守番だ」

 えっ? と声が洩れる。

「何でだよ」
「考えてみろ。オマエがレベッカと入れ替わってると知られたら、タダじゃ済まされねえぞ?」
「……」

 予測される事態が脳裏に浮かぶ。レベッカ(中身はブレイド)は頭を抱えて。

「それに、二人がお互いのフリが出来るとは思えないしな」
「それは……そうね……」

 ブレイド(中身はレベッカ)も、戸惑いながら頷く。

「そういうことで、二人は待機してて」
 〜♪〜♪

 鳴り響く着信音。原因のヴァニラは無表情でエレフォンを取り出して、ピッと耳元に当てた。

「うん。うん、わかった」

 エレフォンを耳元から話し、通話を終了。

「ミリアムとテラさんがこれから来るって」
「……え?」

 事態を理解した一同は叫んだ。

「えっえっこれから? これから!?」
「うん」
「マズイ……! 二人に知られたら大問題だぞ! ブレイドとレベッカ! どっかに隠れててくれ!」
「どっかってどこ!」
「部屋の中にでも隠れてて!」

 早く早くと急かされ、階段を上がる。

「ベルタ! ヴァニラ! 二人は急な依頼で居ないことにするぞ! いいな!? 特にヴァニラ!」
「分かった!」
「うん」
「ヴァニラホントに分かってるか!?」
「わかってる」

 騒いでいるうちに玄関のチャイムが到着を知らせる。

「いらっしゃい、ミリアム」
「突然ごめんなさいね。ちょっと用が……って、ブレイドは?」
「すいません、ブレイドとレベッカは急な依頼が入って出ていて……」
「そうなのか? 会えなかったのは残念だな」

 やって来たミリアムとテラの声は、二人が隠れた部屋にまで聞こえて来ていた。

「ごめんなさいテラ兄……」
「はぁ……とんだ災難だぜ……」
「わ、ワタシのせいだって言うのっ」
「言ってねぇって」

 ブレイドとアランの共同部屋に隠れた二人。一階に聞こえぬよう小声で会話する二人だったが、険悪な雰囲気だ。

 ムスッとするブレイド(見た目はレベッカ)に、レベッカ(見た目はブレイド)は少しだけ俯いて。


 ワタシが足を踏み外さなければこんなことには……。
(※本当にそれだけだろうか)


 ぐるぐると後悔の念が渦巻く。そんな時、誰かが階段を上がって来る音が。

「ちょっ……! どこに行くんですかミリアムさん!」
「前にブレイドに貸してた本があるのよ。ブレイドは居ないけど、いい加減返してほしくてね」

 扉越しに会話を聞き、しまったと青ざめる。レベッカからは痛い視線が飛んできた。

 一段ずつ階段を上るミリアム。どうしようと焦る二人。

「こっちだっ」





「おっじゃましまーす」

 無遠慮で扉を開けるミリアム。

 因みに、男子部屋は入り口から手前がブレイド、奥がアランと分かれている(女子部屋も似たような感じだ)。

 ブレイドの棚やベッドの下などを探り、目的のブツを発見。そのまま特に気にすることなく、部屋を後にした。

「……行ったか?」
「……行ったね」

 ヒョイっと顔を出す二人。

 二人が隠れたのは、奥側にあるアランの本棚と窓との僅かな隙間。ミリアムが居ないことを確認すると、二人は音を立てずに隙間から出て。

「心臓が止まるかと思った……」
「やめろよ。戻ったら止まってたとか洒落になんねぇから」

 後はアラン達がどうにかしてくれる……と信じよう。

 二人は途端に気まずくなり、互いに口を閉ざす。

「……なあ」

 先に話しかけたのはブレイドだった。なに? とレベッカは聞いて。

「夜までに戻らなかったら……どうする?」
「そうね……。とりあえずお風呂は入らなくていいけど、明日も続いたら……」
「ちょっと待て」

 ブレイドに止められ、レベッカは不思議そうに目を丸くした。

「どうしたの?」
「いや……意外だなって思って。お前いつも身嗜み整えてるから、風呂入んなくてもいいんだなって……」
「別にいいわけじゃないけど……。でも、戦士だから。そういう事態だってあるでしょう。その時まで、こだわるようなことはしないわ」

 あくまでも自分は戦士だと。

「……」
「どうして黙るのよ」
「凄いなって」
「そう?」
「嘘ついてると思ってるだろ」

 お世辞だと思っていたレベッカは驚いたように目を見開き。

「……ありがとう」


 二人はお昼頃、無事に戻ることが出来た。


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 入れ替わりネタを書きたかっただけです。因みにブレイドはあまり気にしないタイプです(アランはめっちゃ気にする)。
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