SSまとめ



 はぁ、と男は少し先に見えた光景に溜め息を洩らした。


 仕事帰り。『闇黒騎士隊』所属戦士アイザックは、特に目的もなく街を散策していると、兄弟弟子のアランを見つけた。いつもの調子で話しかけようと駆け寄るも、アランの他に複数の姿が見え立ち止まる。んだよ、友達(ダチ)かよ。と、一気に話しかける気が失せ、拠点に戻ろうと踵を返した。……が、彼は今、建物の影に隠れるように様子を見ている。それは──。

「ストーカーか?」
「ぎぃやあああああああああ!!」
「バケモノ見たように叫ぶな」

 ちょうどアイザックの悲鳴は別の音に掻き消されたため、アランの耳までは届かなかった。

 アイザックははち切れんばかりに鳴る心臓を抑え、呼吸を整えながら、いつの間にか居たエステラを睨みつけた。

「なにしに来た!」
「そこまで驚くことはないだろう」
「驚くわ! 誰があんな奴のストーカーするか!」
「二重の意味で驚いてたのか」

 ぎゃんぎゃん狂犬の如く騒ぐアイザックを押し除け、エステラもこっそりと見つめる。

「ん? アランと一緒にいるのは誰だ?」
「士官学校の卒業生だろ。教師なんだから覚えてろよ」
「よく知ってるな」

 アイザックは士官学校生ではなかったため、忍び込むのに近い形で臨時教師のエステラの元に通っていた。そのため、アイザックがアラン以外の生徒と関わりを持つことはないはずなのだが……。

「……あいつら、あまり良い印象持っていないみたいだからな」

 それが誰を指すのかすぐに分かった。

 少しして、なるほどなと目を閉じて頷く。

「あいつもあいつでほっとけばいいのに」
「まあ、変に刺激するより流しといた方がいいと思っているんだろうな」
「逆効果だっつうの。俺だったら腹立つわ」

 直後。それまで黙っていたアランが反応し、すかさずアイザックが、エステラの制止も聞かずに近づく。

「っ今の言葉訂正し──」
「おい」

 今にも殴り合いが起きそうな雰囲気に響く、鶴の一声。

 アイザックは腕を組みながら一同を見下して。

「通行の邪魔だ。……散れ。」

 と、一睨み。そそくさと逃げるようにその場から離れる男達に、根性ない奴らめ、と鼻を鳴らす。

 アイザックはそっぽ向いて黙り込むアランを一瞥。自身の後頭部を荒々しく掻き乱しながら。

「……で? 殴りかかりたくなるような言葉でも言われたのか?」

 図星。小さく肩を跳ね上がらせるアランだったが、口にすることはなく。その態度に、アイザックはアランの頭を鷲掴み、力を入れる。

「街中で殴り合い起こすんじゃねーよあぶねーだろうが。あと話聞け」
「いだだだだだだだだっ未遂だったからいいだろ! あと話は聞いてた」
「俺が止めなきゃ殴ってただろーが」
「そこら辺でやめとけアイザック」

 遅れてやって来たエステラに言われ、仕方なく解放する。

 アランは頭を抑えながら、エステラの姿に「師匠……」と気まずそうに呟いた。

「アラン。アイザックもオマエを心配して言ってくれたんだ。そうでなければストー……」
「黙れババア!!」
「人がせっかく話そうとしているのになんだその態度は」
「てめぇのは告げ口だ」
「……予定変更。来い、アイザック。その腐った根性叩き直してやる」
「直せるもんなら直してみやがれ!」
「その言葉はアタシに勝ってから言うんだな」

 いきなり目の前で始まった煽り合いに苦笑。アイザックがボコボコにやられる未来が目に浮かぶ……。

「アラン。このあと予定は?」
「と、特にありませんけど……」
「なら、久しぶりにどうだ? 成果を見てやる」
「お願いします!」

 グッ、と拳を引き寄せながら元気よく即答。

「腕が鈍ってないといいなぁ?」
「オレは毎朝素振りと走り込みをしているんだ。むしろそっちこそ腕が落ちてないか?」
「クソ真面目餓鬼」

 まるで狂犬と子犬が唸り合っているようにも見え、エステラは二人には分からないよう吹き出した。

「ホラ! さっさと行くぞ馬鹿弟子共!」
「痛って!?」

 背中をバシーンッと叩かれ、同時に叫ぶ。

「し、師匠……もっと優しく……」
「骨が……折れる……」
「この程度で根をあげるとは情けないな。置いてくぞ」
「クソッ……おい行くぞ!」
「言われなくとも……!」

 痛みを我慢しながら先を歩くエステラに喰らいつく二人。そのままアランとアイザックは夕方までエステラにこってり絞られたらしい。





「……」
「……」
「……」


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 ※実は見てました。

 アランの士官学校生時代にも同じようなことがあり、そのときもアイザックがさりげなく助けてました。アランが言われた言葉は実はこっそり見ていた三人に関係することです。
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