SSまとめ


 ──これは、なんでもない日常の一コマ。

「ミリアムよぉ。お前の武器って、なんで鎖付いてんだ? 邪魔だろ」
「それはね……こうするためよッ!」
「あっぶな!! 刀飛ばすんじゃねぇ!」

 改めて言っておく。これはなんでもない日常の一コマである。

「ヌンチャクじゃねーだろそのぶ──」
「ミリアム!!」

 アイザックと入れ替わるように現れたのは、珍しく狼狽えている様子のバラバス。

「あらどうしたの? そんなに慌てて」
「聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「ナチュラルに会話始めるな! 退けッ!!」

 アイザック、下敷き。





「聞きたいことがある」

 救出されたアイザックも含め、バラバスは繰り返す。

「ミリアムの幼馴染とやらには彼女はいるのか」
「……はい?」
「いるのか! いないのか! どっちだ!!」
「ちょっ、声大きい! 耳に響く!」

 どうどうと落ち着かせるとバラバスはすっと元の位置に戻って。

「で、ブレイドに彼女いるかって話よね。居ないわよ。あんな部屋の片付けもロクにしない乱暴者に彼女なんて」
「言いたい放題じゃねーか」

 そうか、と息を吐くように呟く。

「にしても、いきなりどうしたんだぁ? そんな話になるなんてよ」
「そうよね。どうかしたの?」

 疑問が浮かび上がるのも当然だろう。バラバスは両腕を組みながら答える。

「ついさっきの話だ。街中で妹を見かけてな。様子を見ていたんだが……」
「えっストーカー?」
「見ていただけだ。ストーカーではない」
「それを世間一般ではストーカーと言う」

 尚否定するバラバスだったが、やがて話が進まないと思ったのが訂正するのを諦めて。

「様子を見ていたら、妹の隣に来たのが……」
「ブレイドだった、っていうわけね」
「単に買い出ししてただけじゃねーの?」

 そう指摘されてしまえば、バラバスは黙ってしまった。


「話は聞かせてもらったぞ!」


 と、まるでヒーローのお約束シーンのように窓から入って来たのはエステラ。この登場には誰もが驚く──事はなかった。日常茶飯事だった。

「バラバス。アンタは今、ブレイドが妹の彼氏か否か、気になって気になって仕方ないのだろ?」
「……いや、別にそこまでは」
「尾行しておきながら何を言っている。自ら突き放した手前、直接聞けないのではないか?」
「なにかいい案でもあるのか?」

 アイザックの問いに、エステラは腕を組みながら。

「分からないなら尾行すればいい!」
「えっ」

 尾行という物騒な言葉に、今まさにやって来たテラは驚いた。

「全員揃ったな」
「なにが? なにが起ころうとしているんだ?」

 一人事情を知らないテラにこれまでの経緯を説明。テラは心底めんどくさそうに顔を顰めた。

「ここにいる全員で二人を尾行しに行くぞ!」
「全員で行く必要あるのか?」
「一人より二人、二人より三人、三人より四人、四人より五人、五人より百人だ」
「一気に増やすな」
「いいじゃない。私も気になってきたし」
「俺は関係ない」
「人数は多い方がいいじゃねーか。聞くならまだしも、遠目から判断するなら尚更だ」
「尾行するなら少ない人数の方がいいだろ。直接聞け」
「頼む。このままでは気になって夜も七時間しか寝れん」
「はあ〜〜〜〜」(クソデカ溜息)





 ──場面は変わり、街中にある店内。

 リズミカルに棚の影から顔を出したのは、私服に着替えた『闇黒騎士隊』の五人。彼らの視線の先には、奇跡的に居たベルタとブレイドの姿が。

「ジャガイモに、ニンジンに、タマネギをカゴに入れてるな」
「ほら見ろ。付き合ってるじゃねーか」
「どう見ても買い出し中だろ!」
「カレーかしら?」
「いや、肉じゃがの可能性もある」

 買い物客がヒソヒソと小声で五人のことを話しているというのに、当の二人は全く気付かないまま。

「デート後に買い出しということもあるのではないか?」
「だろ? 同じ場所で暮らしてるんだからあり得るって」
「そうなると、二人は付き合って……」
「待て待て。いくらなんでも結論を急ぎ過ぎだ」
「あっルー買ったわ。カレーで決まりね」
「そこじゃない!」

 テラがこれだけ騒いでいても、変な客がいるなー程度でスルーしているのだろう。

 買い出しを終え、店から出た二人の後を引き続き尾行する。

「もうこれ帰るパターンだぞ」
「まだだろ。『少し休憩していかないか?』って連れ込むかもしれないだろうが」
「阿保」
「ターゲットに動きありよ!」

 ミリアムの言葉に四人が一斉に視線を向ける。

「おい、ベルタ。そっち重いだろ、貸せよ」
「き、気遣いなら要らん。自分の分に集中しろ」
「いいから。早く貸せって」
「あっ。全く、無理に交換することは──重っ!? さっきより重い! 謀ったな貴様ぁ!」
「騙される方が悪いんだ、ぐはっ!!」

 必殺トルネードアタックが、見事ブレイドの鳩尾に決まる。膝を付き、痛みに悶えるブレイドを置いてベルタは足早に去っていく。

 その様子にテラは無いなと確信。

「あー……あれはないな」
「近頃は“ケンカップル”という分類もあるらしいからな……まだ確証は持てない」
「はあ〜〜〜〜」(クソデカ溜息)

 これが、なんでもない日常の当たり前であるのだから、テラの心労は尽きない。


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 本編では違う。これはギャグだからこその性格である。一部は変わらないが。

 勿論二人は付き合っていません。バラバスは尾行なんてしません。ご注意下さい。

 今回はクソデカ溜め息を使いたかっただけ。本編とは何ら関係ありません。
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