第1.5部短編集


──前略。

4話にて『戦神の勇者隊』の拠点に泊まることとなったレイ。新拠点となって初めて帰ってきたブレイド(と手伝いでアラン)が自室の荷解きをしている間、夕食の準備に名乗りを上げた。

「作るのはいいけど……あまり材料ないわよ?」
「それなら大丈夫! さっき確認したけど主要な食材はあったし、作れるよ」
「そこまで言うなら任せるぞ」
「うんっ。鍋借りるね」

鍋にカレールーを取り出したあたり、カレーなのは間違いない。

「そういえば、レイは料理出来るのか……?」
「あまり凝った料理は出来ないけど、普通には出来るよ。ラディ……えっと、僕の親友に手解きしてもらったからね」

近くで話を聞いていたヴァニラが、ああ、と溢す。

「ラディウスよね」
「え? そうだけど、言ったっけ?」

首を傾げるリアムに、しまったとアイコンタクトを取るレベッカとベルタ。以前レイの家を覗き見した際、通話していた相手がラディウスであって、本人の口からはまだ聞いていないのだ。

「言ってなかった?」
「うん……してなかったような気が」
「ね、寝言で言ってたのよ。さっき」
「ず、随分と大切な相手だったようだから印象深くてな」
「あ、そうなんだ。でもちょっと恥ずかしいなぁ……」

ひとまずは納得してくれたようで胸を撫で下ろす。

「ラディウスさんってどんな人なの?」
「優しくてーかっこよくてー強くてー天然でーどこか抜けててー料理好きな喫茶店のマスター!」
「……似たような奴に覚えがあるのだが」
「奇遇ね、ベルタ。ワタシもよ」

一部を除き、だが。

「料理好きなのにレストランじゃないのね」
「多分やろうと思えば出来るんだけど、長く居たいって思って貰えるような雰囲気にしたかったんだって。僕も給仕手伝ってたなー。たまに上司のコメィトさんも来てくれたりね」

後ろ姿からも嬉しそうなのが分かる。同時に、自分達のようにモンスターの危険に晒されていないことも。

「レイが初め、モンスターに興味を持っていたのも頷けるな」
「そうだね……。魔物はいるけど『エレメンタル大陸』程じゃない。それよりも多いのは……勢力同士の衝突かな……。少し前にも、大きな勢力がぶつかり合って大変だったし……」

モンスターという共通の敵。強い権力を保有する“モルス”。主にこの二つがあるからこそ成り立つ『エレメンタル大陸』の現状。

一見すると平和に見えそうでも、事実はそうでもない。

「どこも似たような感じなのね……」
「え?」
「ううん、なんでもない。もうすぐでできる?」
「んー、あとちょっとだよ、ヴァニラちゃん」
「……ちゃん?」

重苦しい雰囲気から一転。レイの呼び方に目を丸くする。

「あ、嫌だった?」
「そんな風に呼ばれたのはじめてだったから」
「……ベルタちゃ」
「やめろ、レベッカ。むず痒くなる」

「よーし、出来た! あり合わせで作ったけど美味しいはず!」
「今なんて言っ」
「アラン君とブレイド君呼んできて、ベルタちゃん!」
「……分かった」

ちゃん付けが認められたところで、合流したアランとブレイド達も含めてカレーを前に手を合わせる。

『いただきます』
「はい、どうぞ」

一口、口に運ぶ。

「……美味しいぞ」
「ええ、そうね」
「そりゃあ変な事はしてないもん。不味くは無いよ」

と、ここでブレイドが疑問を抱く。

「……レイ。このカレーって肉入ってないよな?」
「うん。無かったからね」
「じゃあこの弾力があるのは何だ」
「ちくわだけど」

ピタリと食事の手が止まる。

「ちくわ!?」
「うん、お肉の代わりにね。何か変?」
「違和感ないのが腹立つな……」
「何で!? ちょっとした節約レシピだよ。案外豆腐もイケるんだよ」
「今度やってみるか……」
「やらなくていい」
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