SSまとめ
“はじまりの地”にある繁華街──。
「お待たせしました! 揚げ豆腐ときんぴらでーす!」
「ここに置いてくれ」
ビールジョッキ片手にエステラは机をトントン。店員が立ち去ると、エステラは揚げ豆腐を隣で飲むバラバスの方へ動かして。
二人は仕事帰りに、繁華街にある居酒屋で珍しく飲んでいる。
窓から見える街の景色を肴に、一言二言で終わる会話を繰り返していた。
「そういえばバラバス。妹とはあれから話したのか?」
「……」
「話してないのか」
「貴様には関係ない」
ほう〜? とニヤつくエステラの視線を鬱陶しく感じていた時。
「エステラにバラバス。二人で居るなんて珍しいな」
窓側のカウンター席に腰を掛けていた二人の元に、“白獅子王”アルタリア・モルスが合流。
「隣いいか?」
「勿論。アルタリアはこんな時間にどうしたんだ?」
「さ、散歩だ散歩」
隣に座るアルタリアに、エステラはメニューを渡しながら。
「そうは言うが、本当はアランと鉢合わせないか……」
「エステラ!」
「すまんすまん。まあ、アランは今頃勉学に励んでいるだろうしな」
「なぜ我が会いたい前提で話すのだ……。エステラ、我は汝がジェダルに暴露したのも怒っておるのだぞ」
「アタシに対する不満なら幾らでも聞くが……照れているようにしか聞こえないな」
「ぐっ……」
モルス相手によくやるなとバラバスは繰り広げられる会話を耳に酒とつまみを。窓の外に広がる街道を歩く人々を特に意味もなく見つめていたが……。
「……エステラ」
「どうしたバラバス?」
「後で金は返す。払っておいてくれ」
と、バラバスは飲みかけのビールを置いて店の外へ。困惑するエステラだったが、自身もまた立ち上がると会計しにレジへ向かい、アルタリアもどうしたのだと疑問符を浮かべる。
やがて会計を済ませたエステラはアルタリアと共にバラバスの後を追った。
「……なにをしているのだ汝は」
バラバスの姿は意外にもすぐ見つかった。
……建物の影に隠れるようにして。
いいから隠れろと手を振られ、二人はバラバスと同じように建物の影からこっそりと顔を出す。
「あれを見ろ」
バラバスが顎で指した先で歩いていたのはベルタ。その横にはブレイ……ではなく、アランが並んでいた。
「なるほど。今日はアランか……」
「「語弊を招くような言い方はやめろ」」
バラバスとアルタリアの威圧感ある声が揃う。エステラは揶揄うようにくすくすと笑い。
「ともかく、なぜ汝らは隠れているのだ。堂々と姿を表せば良いだろ」
「ブーメラン発言だぞアルタリア」
「アルタリア様、これは尾行でもストーカーでもありません。見回りの一環です」
「物は言いようだな……」
道ゆく人々に噂されながらも見回り(という名の尾行)は続き……。足を止め、何やら話し込む二人を監視する。
「この辺りに目的地があると言うのか?」
「良かったなバラバス。近くに逢引き出来そうな場所はないぞ」
「潰すぞ。」
すると、ベルタはアランと別れて向かい側で営業している店に一人入っていった。
「……アランは?」
「待っているようだな。あの店はほ」
「……」
「あっバラバス」
スッと隠れていた建物の影からバラバスはアランの側へ移動。違う方向を見つめていたアランは背筋凍る殺気に気付き振り替えると。
「ばっバラバスさん……」
悲鳴をあげないだけ良かった。
はち切れんばかりに波打つ心臓を抑えながら、こんばんはと挨拶を。
「……」
「あ、あの〜……?」
「バラバス。あまりアランを虐めてやるな」
「師匠!? あああアルタリア様も!」
エステラはバラバスの方に手を回してぐっと力を込める。
「よく見な。ベルタが入っていったのは本屋だ」
バラバスはダダ漏れであった殺気を鎮めた。
「汝らはここでなにをしているのだ?」
「えっと……ベルタが買いたい物があると……」
「一緒に来いと言われたのか。ベルタに」
「いや、一人で行きそうだったのでオレが……さすがに、夜道を女性一人で歩かせるわけにはいかないですしね」
「……そうか」
なんでちょっとニヤついているんだ。
「あっ」
声を上げたのは紙袋を手にしたベルタ。表情を険しくしながらアランの元に歩み寄る。
「こんなところで何を……」
「バラバスが二人を見つけてあ」
「戻る。」
「待ちな」
踵を返すバラバスの首根っこを捕らえる。バラバスは逃げるのを諦めたが、ベルタには背中を向けたまま。
「三人で居酒屋に居たんだが、バラバスが二人を見つけてな。気になったから追いかけて来たというわけだ」
「我は二人と偶然出くわしただけだが……」
そうだったのかとアランとベルタは納得。エステラはベルタが抱える紙袋を見つめながら。
「それで? 欲しい物は買えたのか?」
「か、買えましたけど……」
何を買ったのかと期待の眼差しを向けられても、ベルタは戸惑いつつ視線を逸らして。
「い、言えません……少なくとも、兄さんだけには……」
強調される“だけ”。エステラは必死に笑いを堪えながらそうかそうかと頷き。
「引き止めて悪かったな。アラン、ちゃんと送るのだぞ?」
「ハイ。では失礼します」
アランとベルタは会釈すると宿舎への道を歩き始める。
「あ、アラン!」
アルタリアの声に驚きながらも振り返り。
「良い夢を」
「……貴女様も」
笑顔で答えるアランの隣でベルタは少し恥ずかしそうに小さく呟く。
「お、おやすみなさい。兄さん」
ベルタは返事を待たずに足早に道を進み、アランも歩幅を合わせて横に並ぶ。
「……おやすみ。ベルタ」
その背中を見つめながら、バラバスは頬を緩ませた。
「さーって、飲み直すとするか。慰めがてらにな」
「要らん」
「肉料理も美味い店があるのだが行くか?」
「いいな。気をしっかり持てバラバス」
「余計なお世話だ」
「すまないアラン。こんな時間に付き合わせてしまって」
「オレが行きたいって言ったんだから気にすることないだろ。あ、でも……さすがに何を買ったか気になるな……」
「言われると思っていた。……今日発売の雑誌に、『闇黒騎士隊』の情報が載っていると知ってな」
「それだったのか? オレも買ったぞ」
「初めからアランに聞いておけば良かったな……。それとこの事は……」
「わかってるよ。オレそんなに軽い男に見えるか?」
「そうだな。軽いのはブレイドの方だ」
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
今回は以前にも投稿した『お兄さんは心配です』の続編的なSSです。タイトルからあー、となった人もいるかもですね……。
バラバスとベルタの関係は20話以降の設定です。
裏話として、ベルタはあまり雑誌を買わないですが、アランはわりと買ってます。アイザックの情報はどうでもいいですが、エステラの情報が載っている雑誌は予約して買ってます(ガチ勢)。最近はモルスの情報もチェックしているとかいないとか……。