パルテナの鏡 掌編

※旧名秋桜pixiv垢にて2019/06/06に掲載。



「お前、生まれたときからそんな話し方なのか?」



「……珍しいと思えば、そのようなことで妾の部屋に来たのか」

部下であるブラックピットの問いに、上司のナチュレは呆れたように返した。

「気になって眠れない」
「ほう、そこまで好いてくれるのは嬉しいが、生憎天使には興味がなくてのぉ」
「質問に答えろ破壊王」
「妾は自然王じゃ!」

もう良い、下がれ! とナチュレはその小さな体でブラックピットを部屋から追い出そうと押したり引いたりするが、ブラックピットはまるで石像のようにその場から動かない。

「ぜぇ、ぜぇ……お主、中々やりおるな」
「(奇跡使えよ)」

んぐーー! とナチュレは最後の力を振り絞りブラックピットの体を押すが全く効果は無く。あまりの軟弱さにブラックピットは目を細めた。

「弱」
「やかましいわ!」

肩を上下させ息をしていたナチュレだったが、少しして落ち着き、二人の間に沈黙が流れる。

やがてナチュレは諦めたかのように息を吐いた。

「……そうじゃな。いい機会かも知れんし、教えてやってもよいな……」



妾たち神は、実に多彩な方法でこの世に生まれる。

親神の涙や血から生まれる者や、意思が集まって形になった者。もちろん、人間どものように交わって生まれる者もおる。パルテナはこれらしいがな。

じゃが、妾は違う。

妾は……転生したのじゃ。人から神へ、とな。

下等な生き物から神へ転生したのじゃ。それだけで、神々からの批判も集まる。

さらに妾はこの姿。力はあっても……下に見られることが多かった。

それからじゃ。妾がこの話し方になったのは。

今ではもう……昔の話し方さえ、覚えておらん。



「……とまあ、このような話じゃが、今ではそんな事はない。安心せい」

全てを笑い飛ばすようにナチュレの豪快な笑いが部屋に響く。

それでもなお、ブラックピットの表情は優れたものではなかった。

ナチュレは自身の杖を取り出すと、支柱の先でブラックピットの腹をどつく。突くではない、どつくだ。

「何するんだよ!」
「なんじゃ。お主らしくないの。
……よい、同情などいらぬ。妾はこれでも、この状況を楽しんでおるのじゃ」

痛みからズキズキするお腹を抑えたブラックピットだったが、ナチュレの言葉に驚かされた。

「……フン」
「全く。素直じゃないのぉ」
「オマエもだろ」

そうかのぉ〜とニヤニヤしながらナチュレがブラックピットの顔を覗き込む。

「これを機にお主もナチュレ様と呼んでよいのじゃぞ?」
「嫌だね」
「なんじゃ、釣れないのぉ」

カツンと靴の音が部屋に響く。ブラックピットはこれ以上の長居は無用だと判断し、ナチュレから背を向ける。

「ナチュレ」

部屋を出る一歩前。ブラックピットは振り返らずに声をかける。

「明日も頼んだ」
「…………当たり前じゃ!」

何千年もの歳月を経て、ようやく手に入れた大切なもの。

小さな女神は、その幸せを噛み締めるように笑った。




Fin。



ここまで読んでくださり、ありがとうございました!この先は私の自己解釈についての説明です。

・ナチュレ様の力について
神として幼いナチュレ様は、どうしてパルテナと同じぐらいの力を持つのか。
理由として、ナチュレ様は神としてイレギュラーな存在(生まれた元が強力な力を持っていた、外部から力を得た、突然力が芽生えたなど)だったのでは?だからパルテナもナチュレの事を知っていた…?

・ナチュレ様の転生
人から神に転生するのは稀のケース。神にとってイレギュラーな存在。
もともと強い力を持ったナチュレ様は何らかの出来事があり、転生。神になってその力を昇華させた…。
ブラックピットがピットの事を嫌いなように、ナチュレ様が人間を嫌いなのは転生前にいろいろあったから…。

・パルテナ様の出自
神々の中でも力を持った一族の生まれ(主神など)。いわゆる王族なのでは…?
ピットしか戦えるものがいないエンジェランドが侵攻されないのは、パルテナの出自が関係しているのでは…。


以上が今回、この小説を作るために考えたものです。
あくまで個人的解釈ですので、へえ〜と流していただければ幸いです。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!
3/3ページ