パルテナの鏡 掌編
リベンジマッチ?
「うおおおおおおっ‼︎」
「はああああああっ!」
裂帛の声とともに甲高い金属音が、誰もいない広場の中心で響き渡る。
互いの獲物を打ちつけ合うのは、自然軍幹部ブラックピットと冥府軍幹部サリエル。
「ど、どうしてこんなことに……」
石造りのベンチの壁に隠れつつ様子を伺う、パルテナ親衛隊隊長ピット──の頭を飾る月桂樹から、主たる光の女神パルテナの『面白いじゃないですか』という小さな笑い声が場違いにも甚だしい。
「ただサリエルに天界を案内してただけなのにぃ〜」
『ブラックピットが「戦いたい」と言うのじゃからしょうがないじゃろ』
「急に割り込んできたのはそっちじゃないか!」
今度はブラックピットの上司である自然王ナチュレがやれやれと言いたげにテレパシー越しに肩をすくめる。ピットの言う通り、突然現れてサリエルに勝負を申し込んだのはブラックピットのほうだ。
『大方、ダムド時代の戦いのリベンジじゃろ』
『あのときブラピは間一髪助かりましたからね』
「あはは……あまり思い出したくないです、その話」
サリエルが敵として対峙していた頃。ピットがサリエルによって永遠に醒めぬ悪夢を見させられた事件があった。それを打破しようとサリエルに挑んだブラックピットは、ジャミングなどの障害もあり胸を撃たれ死にかけるも──決死の覚悟でサリエルの厄災の目を撃ち抜いた過去がある。
今になって再戦を持ちかけてくるとは……、密かに嘆息をもらすピットを他所に。戦いは激しさを増していた。
パンパンパンッ!
《銃槍バイデント》の銃口から放たれる弾を、前方に低く転がる頃で回避し、《神弓シルバーリップ》を両手に間合いを詰める。
手にしたナイフで左へ右へと袈裟斬りするも、サリエルは二叉の槍先で防御しては重い一撃でブラックピットの体勢を崩す。そのまま回し蹴りで鳩尾を狙うも、ブラックピットは神弓を宙に放り投げその場で一回転。空中で神弓をキャッチすれば、すぐさまサリエルへとクロス状に切り込む。
「っ」
紙一重で回避するものの、胸元の服に軽めの切り傷が残る。一歩間違えれば致命傷にならない攻撃だ。
眦を釣り上げたサリエルは銃槍を握り直し、穂先を左上から右下へと振り下げる。ブラックピットは神弓を交差して一撃を受けるもあまりに重く、吹き飛ばされた体が豪快に広場の床を転がる。その隙を逃さず、サリエルは追い討ちとばかりに銃弾を撃ち込み、初弾を転がりながら回避したブラックピットは凄まじい早技で立ち上がりサリエルを中心とした円状に疾走する。
膠着とする戦局。互いに奇跡の力を頼ることなく行われた数時間にも及ぶタイマンは──。
「〜っあーもう我慢できません!」
“見ているだけ”だったピットが緊急参戦し、二人とも打ちのめしたことで幕が下ろされたのだった……。
『……初めからこうすれば良かったのでは?』
『それは言わないお約束じゃ』
◇◆◇◆◇
オマケ
「なるほど〜そんなことがあったんだね」
「だから帰りが遅くなったんだ」
冥府界へと帰還したサリエルは、遊びに来ていたウィルドと主であるペルセポネに状況を話した。
「申し訳ありません。つい熱中してしまいました」
「ううん、サリエル君が楽しめたなら良かったよ」
「いくら人がいないとはいえ突然剣を交えるのは異常だけど……」
「ウィル、剣じゃないよ」
「分かってるよっ。例えだよ、例え」
天然なサリエルが首を傾げる中、ウィルドは「で、」と話を戻す。
「天使様が割り込んできたってことだけど……黒天使様はそれで納得したの?」
「どうだろう。あ、でも『次こそ決着をつけてやる』って言われたっけ」
「それ納得してないやつ」
半眼を浮かべるウィルドに、ペルセポネはくすくすと笑みをこぼす。
また近いうちに勝負を挑まれるだろうなと感じた二人とは裏腹に、純粋なサリエルはブラックピットと手合わせが出来るのを待ち望むのだった。
「うおおおおおおっ‼︎」
「はああああああっ!」
裂帛の声とともに甲高い金属音が、誰もいない広場の中心で響き渡る。
互いの獲物を打ちつけ合うのは、自然軍幹部ブラックピットと冥府軍幹部サリエル。
「ど、どうしてこんなことに……」
石造りのベンチの壁に隠れつつ様子を伺う、パルテナ親衛隊隊長ピット──の頭を飾る月桂樹から、主たる光の女神パルテナの『面白いじゃないですか』という小さな笑い声が場違いにも甚だしい。
「ただサリエルに天界を案内してただけなのにぃ〜」
『ブラックピットが「戦いたい」と言うのじゃからしょうがないじゃろ』
「急に割り込んできたのはそっちじゃないか!」
今度はブラックピットの上司である自然王ナチュレがやれやれと言いたげにテレパシー越しに肩をすくめる。ピットの言う通り、突然現れてサリエルに勝負を申し込んだのはブラックピットのほうだ。
『大方、ダムド時代の戦いのリベンジじゃろ』
『あのときブラピは間一髪助かりましたからね』
「あはは……あまり思い出したくないです、その話」
サリエルが敵として対峙していた頃。ピットがサリエルによって永遠に醒めぬ悪夢を見させられた事件があった。それを打破しようとサリエルに挑んだブラックピットは、ジャミングなどの障害もあり胸を撃たれ死にかけるも──決死の覚悟でサリエルの厄災の目を撃ち抜いた過去がある。
今になって再戦を持ちかけてくるとは……、密かに嘆息をもらすピットを他所に。戦いは激しさを増していた。
パンパンパンッ!
《銃槍バイデント》の銃口から放たれる弾を、前方に低く転がる頃で回避し、《神弓シルバーリップ》を両手に間合いを詰める。
手にしたナイフで左へ右へと袈裟斬りするも、サリエルは二叉の槍先で防御しては重い一撃でブラックピットの体勢を崩す。そのまま回し蹴りで鳩尾を狙うも、ブラックピットは神弓を宙に放り投げその場で一回転。空中で神弓をキャッチすれば、すぐさまサリエルへとクロス状に切り込む。
「っ」
紙一重で回避するものの、胸元の服に軽めの切り傷が残る。一歩間違えれば致命傷にならない攻撃だ。
眦を釣り上げたサリエルは銃槍を握り直し、穂先を左上から右下へと振り下げる。ブラックピットは神弓を交差して一撃を受けるもあまりに重く、吹き飛ばされた体が豪快に広場の床を転がる。その隙を逃さず、サリエルは追い討ちとばかりに銃弾を撃ち込み、初弾を転がりながら回避したブラックピットは凄まじい早技で立ち上がりサリエルを中心とした円状に疾走する。
膠着とする戦局。互いに奇跡の力を頼ることなく行われた数時間にも及ぶタイマンは──。
「〜っあーもう我慢できません!」
“見ているだけ”だったピットが緊急参戦し、二人とも打ちのめしたことで幕が下ろされたのだった……。
『……初めからこうすれば良かったのでは?』
『それは言わないお約束じゃ』
◇◆◇◆◇
オマケ
「なるほど〜そんなことがあったんだね」
「だから帰りが遅くなったんだ」
冥府界へと帰還したサリエルは、遊びに来ていたウィルドと主であるペルセポネに状況を話した。
「申し訳ありません。つい熱中してしまいました」
「ううん、サリエル君が楽しめたなら良かったよ」
「いくら人がいないとはいえ突然剣を交えるのは異常だけど……」
「ウィル、剣じゃないよ」
「分かってるよっ。例えだよ、例え」
天然なサリエルが首を傾げる中、ウィルドは「で、」と話を戻す。
「天使様が割り込んできたってことだけど……黒天使様はそれで納得したの?」
「どうだろう。あ、でも『次こそ決着をつけてやる』って言われたっけ」
「それ納得してないやつ」
半眼を浮かべるウィルドに、ペルセポネはくすくすと笑みをこぼす。
また近いうちに勝負を挑まれるだろうなと感じた二人とは裏腹に、純粋なサリエルはブラックピットと手合わせが出来るのを待ち望むのだった。
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