パルテナの鏡 掌編

略称?愛称?
3章:はじまりのまえのお話にちょっとかかってます。


 それはダムド戦後、サリエルが天界エンジェランドに位置するパルテナの神殿でお世話になっていた頃の話。


「フフン、今日はボクの勝ちだね!」
「いい気になるなよ。次は勝ってやる!」
「受けて立つぞ『ブラピ』!」
「だからなんだよブラピって‼︎」

 神聖な地にいるとは思えない賑やかな声に、たまたま居合わせたサリエルは小さく笑みをこぼす。と、こちらに気付いた彼らがサリエルに歩み寄る。

「あっサリエル! 起きて大丈夫?」
「うん、段々調子が戻ってきたみたい。2人は何をしていたの?」

 サリエルの問いに、ピットは誇らしげに胸を張って答えた。

「天界スポーツ『天使の降臨』!」
「『天使の降臨』……?」
「模擬戦みたいなもんだよ。チームに分かれて勝負するんだ」

 「今度サリエルもやろうよ!」という誘いを(様々な事情から)軽く流し。サリエルは別の話題を切り出す。

「あの……『ブラピ』って?」

 元々敵対していたサリエルにとって、敵組織の幹部の名がなんであろうと関係のないこと。ゆえに、『ブラピ』が『ブラックピット』の略称であるのを知らなければ、気付くこともなかった。
 ピットは目を丸くしていたが、そっぽ向くブラックピットの肩に腕を回す。

「ブラックピットだから、ブ、ラ、ピ!」
「ああ……なるほど」
「オレは認めてないからな!」

 ニタニタと笑うピットの腕を、離せッと乱暴に引き剥がす。

「オマエもそう呼ぶんじゃないぞ」
「? 元よりそのつもりだったよ?」

 不思議そうに首を傾げるサリエルに、ピットは思わず聞き返す。

「えっなんで? 呼びづらくない?」
「たしかに戦闘中噛みそうだけど」
「そこかよ」


「愛称って親しい人が呼ぶものって聞いたから」


 サリエルの言葉に、2人は呆気に取られていたが。次の瞬間、ピットは吹き出し笑い、ブラックピットはわなわなと体を震わせた。

「愛称じゃないッ‼︎」

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