私たちが帰る場所
兵士らをその場から下げ、ヴィルヘルムを自身のベッドに横たわらせたマスターは、そのままマリオに容態を診てもらう。
「……大丈夫そうか?」
「どうみても大丈夫じゃねぇよ。いくつか骨やってるぽいし、こりゃあ治癒師を呼んだほうがいいな」
本来なら王国一の治癒師であるヴィルヘルムが自力で回復するのが最善。しかし、当の本人は目覚める気配がない。
額に手を添え嘆息したマリオは、「で?」とマスターとクレイジーに半眼を向ける。
「何をどうすればこうなるんだ? またクレイジーがぶっとばしたのか」
「今回は俺じゃなくて
「っ確かにそうであるが、元はと言えばお前が避けずに殴られれば良かった話だ」
「無茶苦茶言うンじゃねーよ」
どっちが悪いか睨み合い責任を押し付け合う両名。最早責任うんぬんはどうでもいい。
目下、考えるべきことはヴィルヘルムの治療と、彼が行う予定だった業務をどうするか。
「……喧嘩は後で勝手にしてくれ。とにかく今日はマスター、お前がヴィルの仕事を引き受けろ」
「そ、そうだな」
責任を重く捉え軽く項垂れるマスターを嘲笑うクレイジー。
「はン、先を見てねーからこうなンだよ」
「お前もだぞ、クレイジー」
「……は?」
腕を組みこちらを睨み上げるマリオを見下しつつ、圧をかける。
「この俺に指図すンのかよ、テメーは」
「マスターがヴィルの仕事を引き受けたら、今度はマスターの仕事をやれるヤツがいなくなっちまう。……少しだけとは言え、お前はマスターの『フリ』して城回してたんだから出来るだろ」
さすが個性豊かなファイターを束ねる者と言うべきか。物怖じせず言い返したマリオに、クレイジーは心底嫌そうに顔を歪めた。
「……先を見てないのは果たしてどちらかな」
「黙れ糞野郎」
「はいはいその辺にして、さっさと行った行った! ボクはヴィルの付き添いしてっから」
部屋から強制排除された二人は互いに睥睨し合う。
我先にと――いつもより乱雑に――歩き出したマスターの背を見つめ、クレイジーはやれやれと肩をすくめた。