悪い子へのクリスマスプレゼント


「マリオお願い! サンタクロースになって!」
「……は?」

 出会い頭。なんの前振りもなくそうネスに頼みこまれたマリオは当然ながら困惑。

「サンタになれってオマエなぁ……普通はこの世界のサンタにお願いするところだろうが」
「だってこの世界にもサンタクロースがいるとは限らないじゃないかぁ!」
「だとしてもなんでボクなんだよ」
「それは……」

 赤い服が似合いそうな雰囲気に立派な髭、何より土管が似合うといえば……そう、マリオだ。反射的に目を逸らした彼に、マリオは眼差しを鋭くしながらもやれやれと肩をすくめる。

「サンタの方はボクがどうにかしてやる」
「っほんと⁉︎」
「ああ。だから子供は子供らしくクリスマスを楽しみにしてろよ。パーティーもするんだから」
「うんっ!」

 くしゃくしゃと頭を撫でられれば、ネスは破顔して駆け出していく。
 立ち去っていくネスを前に、『サンタはどうにかする』と宣言してしまったマリオは早速頭を悩ませることに。

(サンタ役……やっぱりボクがするべきかぁ)

 それが妥当だろうなと一人頷くマリオのもとに、「ん?」と怪訝げに足を止めた二人の人物。

「マリオ、こんなところで唸ってどうしたの?」
「ヴィル、に……マスターも」
「何か困り事があるなら力になろう」

 恐らく仕事の都合上共に行動していたヴィルヘルムとマスターの二人に、マリオはちょうどいいと表情を明るくする。

「実はクリスマスのことで悩んでいてな」
「パーティーの件だろうか。それならつつがなく準備を進めているが……」
「違う違う。サンタのほうだよ、サンタクロース」

 マリオの言葉に二人は顔を見合わせると、ふっと笑みをこぼす。

「それなら心配に及ばない」
「え?」
「“この世界のサンタクロース”がどうにかしてくれるから」
「え⁇」



「リュカ!」
「あ、ネス」

 マリオの用を済ませたネスは、次にリュカの姿を探した。
 リュカはトゥーンや他の大人達と共に街へと繰り出していたらしく、小さな紙袋を手に帰宅。

「なんだなんだ出迎えか?」
「伝えたいことがあるんだよっ」
「なぁに、伝えたいことって」

 ネスは腰に手を添え、よくぞ聞いてくれましたと言いたげにふふんと胸を張る。

「サンタクロースと話してきたんだ! クリスマスの夜に来てくれるって!」
「宣言するサンタってどうなん」

 なんとも言えない眼差しを送るトゥーンの隣で、リュカは俯き気味にボソボソと呟く。

「でもぼく悪い子だから……」

 それを洩らさず拾ったネスはリュカの肩を掴む。

「だとしても! サンタさんは絶対来てくれるよ!」
「……ネス」
「リュカがどれだけ頑張ってるか、ぼくもちゃんと見ているから。保証するよ」

 真っ直ぐな瞳に、リュカは少し潤んでいる様子だった。
 傍らに佇んでいたトゥーンも、軽くリュカの背中を叩く。

「ありがとう……ネス、トゥーン」



「……というわけで、24日の夜は残業です。マスター様」
「もう少し可愛い言い回しはなかったのかな?」

 マスターの執務室。密かに交わされる計画の話に、マスターは苦笑にも似た笑みを湛えた。

「私のほうはただ転送するだけの仕事だが……大変なのは君のほうではないのかな?」
「まあ……そうですね」

 と口にする割には、ヴィルヘルムの頬は綻んでいた。

「ですが【乱闘部隊】マネージャーとして、皆さんの好みは把握しております。完璧なプレゼントを用意してみますよ」

 二人がひっそりと計画している──サンタクロース作戦。
 いつも国のために頑張ってくれている彼らを労うためのパーティーとは異なり、こちらは夢を与えるための計画。
 プレゼントはヴィルヘルムが、それを各部屋に転送するのはマスターが担当する流れとなっている。

「初めての試みだが、必ず成功させよう」
「はい。マスター様」

 彼らの喜ぶ笑顔が見えるのを今か今かと楽しみにしている。
 クリスマスまであともう少し……。
 願わくば、彼らの枕元に吊らされた靴下が埋まりますように。
 メリークリスマス!

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