二人ならなんとかなる


 中は無人だった。周囲に視線を這わせて前進すれば、バタンッ! とホラー展開お決まりの開けていた扉が閉まるが発生。しかしながら二人は怖気付くことなく、ルイージの姿を探す。

「ルイージ! どこだ!」
『グワッハッハッハッ! マリオ! よく来たな!』
「キングテレサ! ルーを返せ‼︎」

 紫色の瞳に鋭利な刃。頭には煌めく黄金の王冠。
 現れたキングテレサにマリオは怒りを露わにし、ヴィルヘルムは静かに構える。

『返して欲しかったらこの奥まで来てみてやがれ!』
「あっ待て!」

 煙の如く消えてしまったキングテレサに手を伸ばすも届かず。マリオはギリッと奥歯を噛み締める。

「マリオ。とりあえず今は言う通りに──」
「「⁉︎」」

 それはまるでクラッカーが弾けるかの如く。
 ポンッポンッと白い煙に巻かれて登場した大量のテレサに、二人は取り囲まれた。

(しまった! 対抗手段が……)

 ほぼ無敵であるテレサは嘲笑うか如くケケケと怪奇的な笑みを浮かべる。
 懐の帽子を握りしめるマリオに対し、ヴィルヘルムは冷静に場を見極めていた。

「【十と五の白き祈り、繋ぐは光の神秘、我が身を囲え母なる聖環】──【セイントサークル】!」
『ギャアアアアアアア‼︎』

 ヴィルヘルムを中心とした円環がことごとくを浄化していく。おお〜と困惑と感心するマリオ。

「凄いな、ヴィル!」
「僕は【光の賢主】だよ。幽霊退治はよくしていたさ」

 助かったと手を叩くマリオに、もうと眉根を寄せる。

「僕がいなかったらどう助けるつもりだったのさ」
「ぐっ……つい反射的に」
「まあそこがマリオのいいところなんだけど……」

 と、返したヴィルヘルムはふと思案する。

(もしかして今回のは突発的な計画じゃなくて前から練られていたもの……? 今日の『大乱闘』が“対魔”に関するファイター達だと知って……)

 ともなれば堂々とした態度にも頷ける。
 しかしひとつ誤算があるとすれば、聖職者でもある自分が同行していることだろう。先程の戦いを見ていれば警戒するに違いない。気をつけなければ。

「いけるか、ヴィル」
「うん。大丈夫だよ」

 先へ続く扉を押し開くマリオに続くヴィルヘルム。
 ──ヴィイイイイイイ!
 聞こえてきたのはチェンソーの音でした。

「ヴィル!」

 互いに頷き合い、チェンソーを手にした人形達の突進を左右に回避する。そのままそれぞれに向かって来た人形を前に、マリオは炎を生成。

「人形なら負けないぜ!」

 マリオの炎はさらに燃え上がり、チェンソーすらドロリと溶かしてしまうほどの熱を持つ。

「はああっ!」

 そのまま腕を振るうと、一瞬にして人形達は黒焦げに。溶けかけたチェンソーがバラバラと音を立て、床に重なる。
 ヴィルヘルムはとマリオは対面を見るも、彼は手にしたレイピアでチェンソーごと人形の群れを切り裂いていた。
 ガチャンと先へと続く扉がまた開かれる。
 二人は同時に発走とすると扉に近づき──。

「マリオ!」
「⁉︎」

 後方を走っていたヴィルヘルムと引き裂くように扉が閉まってしまった。
 すぐに扉に飛びつくも、向こうの声すら聞こえない。くそっと悪態をつく。

『待っていたぞ〜マリオ!』
「キングテレ……ルイージ!」
「兄さん‼︎」

 最後の間では今回の黒幕であるキングテレサと、彼の近くに浮遊する檻に閉じ込められたルイージの姿が。

「キングテレサァアア‼︎」
『さあパーティーの始まりだ!』

 と、合図を元に現れたテレサの群れに尻込みするも。ここで頼れるのは自分しかいないと気合いを入れる。

「くそっ……そこを退け!」

 大量のテレサを前に、無茶苦茶にファイアーボールを乱射するも嘲笑うが如く回避されていく。

(兄さん……?)

 “何かがおかしい”。そう感じたのは双子だからなのか。
 隣で哄笑を上げるキングテレサが気づかぬ間に──マリオのファイアーボールがルイージの檻の一部を溶かしていた。
 そう。全てはこの為のカモフラージュ。

「マリオ!」
『ナニ⁉︎』

 強引に檻を蹴破ったルイージはマリオのもとにジャンプ。
 難なく受け止めたマリオは懐からルイージの帽子を渡す。
 中に入っていた“何か”に目を見開いたルイージは、マリオとともにニッと好戦的な笑みを浮かべた。

「二人いれば」
「なんとかなる!」
『そ、それは……!』

 “何か”──“スーパースター”を二人同時に行使。極才色の光に体を包まれた二人は、周囲のテレサを呆気なく打ち消してキングテレサの元へ。

『ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロォオオ‼︎‼︎』
「「はあああああああああっ‼︎」」

 息の合ったパンチを繰り出し、スターの威力に負けたキングテレサは断末魔とともに浄化されていく。

「っ、ルイージ」
「兄さんっ」

 スターの効力が切れた二人は再会を噛み締めるように抱きしめ合い、額をすり合わせるのである。

「どうやら解決したみたいだね」
「ヴィル! 無事だったか!」
「当たり前だよ。ルイージさんもご無事で何よりです」
「ありがとう、ヴィルくん」
「ヴィルがスーパースターをくれたんだぜ」
「そうなんだ! どうもありがとう」
「いえ」

 かくして、ルイージ誘拐事件は幕を下ろしたのだった──。

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