パルテナの鏡 - 厄災の目 -
1章:訪れる厄災
──そこは、人の寿命をはるかに超えた命達が住まう天の地、エンジェランド。
そこの一角に存在する、女神の神殿を走る一人の少年。
「おはようございます! パルテナ様!」
元気な声が部屋に響き渡る。
パルテナ、と呼ばれた美しい女神はエメラルドの髪を揺らしながら振り返る。
「おはようございます、ピット」
柔らかい微笑みを向けられる。背中に純白の羽を携えた天使──ピットは女神の下まで歩み、膝をつき忠義の意を示す。すぐにパルテナに「いつも通りにしてください」と言われ、立ち上がった。
「それでパルテナ様、ご用件は……」
天使の少年ピットは、女神パルテナに仕える天使であり、親衛隊の隊長でもある。エンジェランドを治める女神の手となり足となり、様々な困難を乗り越え、生きとし生けるものの命を守ったピットには、冥府神ハデスとの戦いが終結すると、数日間の休息を与えられていた。そんな中での突然の呼び出し。何かあったのかと不安になる。
「ピット。貴方にはこれから、人間界に向かってもらいます」
やっぱり。ピットは、パルテナの真剣な眼差しに頷いた。
「事情は向かいながら説明します」
「これを」と渡されたのは、金色に輝くピットの武器"パルテナの神弓"。ピットは神弓を受け取ると、部屋の中にある光の階段を駆け上がり、暗闇の中に潜む大きな扉の前に立つ。
『準備はいいですか? 急な戦闘ですが……』
「ノー問題です!門 を開けてください!」
頭につけた月桂樹から送られるテレパシーに、自身を鼓舞するように元気に答える。
『……ありがとう。ピット』
轟音を立てて、開かれる扉。隙間から溢れ出す光に照らされながら、ピットは神弓を握りしめた。
「パルテナ親衛隊隊長ピット! 出撃します!」
サンダルを履いた足を踏み込み、扉から勢いよく飛び出し、空を舞う。
「それでパルテナ様。事情……とは?」
自力で飛ぶことができないピットは、パルテナに【飛翔の奇跡】と呼ばれるものを掛けてもらい5分間だけ、空を飛ぶことが可能となる。門 から飛ぶと同時に、ピットの羽は光に包まれ、パルテナによってコントロールされながら目的の地へと向かっていた。
雲海の上を飛行しながら、気になっていたことを尋ねる。
『それは妾から説明してやろう』
「ナチュレ!?」
パルテナとは別のテレパシーに、ピットが驚いたように叫ぶ。
自然王ナチュレ。自然を司る女神で、人間を浄化しようと目論み、パルテナ軍と衝突している。ピット達とは敵の立場なのだが、ハデスとの戦いの際は幾度となく協力し合った仲でもある。
「じゃあ、今回は自然軍が原因じゃないんだなー……」
『ハデスとの戦いが終わって2年じゃぞ? まだ自然軍は体制を整えておらぬ』
「ん? それなら、ボクはどうして人間の街に?」
『それは……ッ! ピット!』
『来たぞ……冥府軍じゃ!』
雲海から飛び上がり、ピットの行方を遮ったのは崩壊したはずの冥府軍だった。
「どうして冥府軍が……ハデスは復活してませんよね!?」
冥府軍の下っ端、モノアイの目から放つ球を交わしながら、神弓で次々と現れたモノアイ達を打ち抜き、浄化する。
『恐らく……。復活するには早過ぎます』
「うっ……」
大量のザコ敵を相手にする中。ピットは、背中から感じる異常な熱さに顔を歪めた。【飛翔の奇跡】の効果が切れ始め、ピットの翼が限界を迎えつつあるのだ。
『背中の羽が……ピット!』
『心配ご無用じゃ。すでに手は打ってある』
焦るパルテナとは裏腹に、冷静に返すナチュレ。その声と共に【飛翔の奇跡】の限界を迎えつつあるピットを襲おうとした冥府軍が、一斉に浄化された。
「っ……ブラピ!」
「チッ……乗れ!」
なんだなんだと目を見開けば、二頭のユニコーンを引き連れたピットのコピーである天使ブラックピットが、こちらに手を差し伸べていた。ギュッと手を掴み、戦車に乗り込むと同時に【飛翔の奇跡】は切られた。
「フラッシュ……シルバー……あと、ブラピ。ありがとう!」
「オマケ扱いすんな! ブラピって呼ぶな!」
耳元で叫ばれ、ピットは耳を押さえながら「注文が多いな〜」と呟く。
『そういえばブラピは、ナチュレの元にいたのでしたね』とパルテナが思い出したように呟く。元々無所属だったブラックピットは、ハデスとの戦い後、ナチュレと利害一致し、自然軍に加入していたのだ。
『ありがとう、ブラピ。おかげで助かりました』
「オイ」
『ここらの敵はブラックピットに任せて、ピット。お主は街へ向かえ!』
「命令すんな!」
と言いつつ、ブラックピットも同じ気持ちだったのか、ピットとは違い白銀に光る神弓"シルバーリップ"が転送されると、戦車から飛び降り、ナチュレが使う【飛翔の奇跡】によって空を飛ぶ。
「ありがとう! ブラピ! ナチュレ!」
手綱を手にし、一振りするとピットは光の速さで街へと向かう。
「……来いよ。冥府のゴミ共」
『ブラックピットよ! そやつらをゴミと一緒にするでない! リサイクルできるゴミと違いやつやは……』
「あーもう! わかった、わかったから!」
「……ブラピ。大丈夫かな……」
『ナチュレもついてますし、大丈夫でしょう』
ブラックピットの怒号を背に、光の戦車で街へと急ぐ。わらわらとピット達の周りに集まる冥府軍を、フラッシュとシルバーの角から発生するビームで浄化し、先に進んでいた。
「それにしてもパルテナ様。どうして冥府軍が復活したのでしょう?」
『可能性としてはタナトスなのでしょうが……挨拶もなしに冥府軍を派遣するとは思えません』
「『ピット君お久しぶりデスね〜』とか、言ってきそうですしね!」
『まあ、お上手ですね』
「何回も会っていますから!」
冥府軍の空母とも呼べるホエーラを浄化し、一網打尽にする。
「それでは一体誰なのでしょう?」
『それは分かりません。ただ……メデューサやハデスのような、強大な力の持ち主であることには変わりありません。その正体を探るためにも、民を救いなさい、ピット』
「了解です!」
『雲に穴を開けます。くぐり抜けてください』
雲海の一部に穴が開き、雲のトンネルを手綱を引いて通り抜ける。
「人間の街が……!」
雲海から出ると、そこには冥府軍に襲われている人の街が。
「人間達は……無事なのでしょうか」
『どうやら避難は済んでいるようです。……ですが。また民の街が……』
パルテナの苦しそうな声が、月桂樹から伝わる。パルテナは以前、混沌の遣いと呼ばれる生物に体を奪われ、天界や地上界に大きな混乱をもたらしたことがある。人を愛するパルテナにとって、それは忘れ難き出来事となった。
「パルテナ様は『人間は強い生き物だ』と教えてくれました」
フラッシュとシルバーにありがとうと伝え、戦車から飛び降りる。
「ならば、何度でも、立ち上がると思います! パルテナ様!」
羽を何度かバタつかせ、加速を下げると人間の街に降り立つ。
『……そうですね。そのためには、冥府軍をどうにかしなければいけません。ピット、民を守るため地上戦を!』
「ハイ! パルテナ様!」
パルテナの神弓を番え、光の矢が出現すると、モノアイに向けて放つ。
『待って下さい! ピット!』
「えっ?」
『冥府軍が、退却していきます!』
パルテナの信じられないと、焦る声が聞こえる。ピットは神弓を下ろすと、先ほどまで浄化しようとしていたモノアイが街から去るのを見つめた。
「……どういうことなのでしょう」
気が付けば、人間の街にいた冥府軍の姿は見えず、状況を飲み込めないピットがポツンと一人いるだけだった。
「オイ、ピット」
そこに、冥府軍を浄化していたブラックピットが降り立ち、ピットと合流する。
『お疲れ様です、ナチュレ。光の戦車は、元の場所に転送しておきました』
『置き場所を知っておるとは……。空にいた冥府軍もみな、退却したようじゃ』
「フン。オレたちにビビって逃げたか?」
『それはないじゃろ。だとしたら、始めから仕掛けてなどおらぬ』
ナチュレに言われ、ムッと口を結ぶブラックピット。
『念のため、見回りをお願い出来ますか? ピット、ブラピ』
「ブラピ呼びやめろ」
「あう。くわばらくわばら、デスね」
「何ソレ」
「パルテナ様! ただいま帰還しました!」
出撃前、パルテナと話した部屋に帰還したピットが戻って来た。
「ご苦労様です、ピット」
「すみませんパルテナ様……何も手がかりが掴めず……」
申し訳ありませんと俯くピット。
あの後、ブラックピットと共に街の中を回ったが冥府軍どころか手がかりも掴めず、仕方なくその場から引き上げたのだ。
「ありがとう、ピット。貴方は十分民を守ってくれました。民は皆、貴方に感謝しているのですよ?」
「だから気に病まないでくださいね」と宥めるように頭を撫でられ、ピットは撫でられた箇所を抑えると、笑顔で頷いた。
「ハイッ!」
「では引き続き、私は調査を進めますので、ピットは休んでいて下さいね」
分かりました! と部屋を後にするピットを見送ると、パルテナは"パルテナビジョン"に目を向けた。……そこには、幼い容姿に真っ赤なドレスを身につけたナチュレの姿が。
『……良いのか、本当のことを伝えなくて』
「えぇ。確証がない今、下手に伝えても混乱を招くだけですから。……それで、話というのは」
ナチュレは一度目を伏せ、気持ちを落ち着かせると目を開けた。
『妾達……パルテナ軍と自然軍が、狙われたかもしれぬという話じゃ』
2章:憎悪に満ちた瞳→
──そこは、人の寿命をはるかに超えた命達が住まう天の地、エンジェランド。
そこの一角に存在する、女神の神殿を走る一人の少年。
「おはようございます! パルテナ様!」
元気な声が部屋に響き渡る。
パルテナ、と呼ばれた美しい女神はエメラルドの髪を揺らしながら振り返る。
「おはようございます、ピット」
柔らかい微笑みを向けられる。背中に純白の羽を携えた天使──ピットは女神の下まで歩み、膝をつき忠義の意を示す。すぐにパルテナに「いつも通りにしてください」と言われ、立ち上がった。
「それでパルテナ様、ご用件は……」
天使の少年ピットは、女神パルテナに仕える天使であり、親衛隊の隊長でもある。エンジェランドを治める女神の手となり足となり、様々な困難を乗り越え、生きとし生けるものの命を守ったピットには、冥府神ハデスとの戦いが終結すると、数日間の休息を与えられていた。そんな中での突然の呼び出し。何かあったのかと不安になる。
「ピット。貴方にはこれから、人間界に向かってもらいます」
やっぱり。ピットは、パルテナの真剣な眼差しに頷いた。
「事情は向かいながら説明します」
「これを」と渡されたのは、金色に輝くピットの武器"パルテナの神弓"。ピットは神弓を受け取ると、部屋の中にある光の階段を駆け上がり、暗闇の中に潜む大きな扉の前に立つ。
『準備はいいですか? 急な戦闘ですが……』
「ノー問題です!
頭につけた月桂樹から送られるテレパシーに、自身を鼓舞するように元気に答える。
『……ありがとう。ピット』
轟音を立てて、開かれる扉。隙間から溢れ出す光に照らされながら、ピットは神弓を握りしめた。
「パルテナ親衛隊隊長ピット! 出撃します!」
サンダルを履いた足を踏み込み、扉から勢いよく飛び出し、空を舞う。
「それでパルテナ様。事情……とは?」
自力で飛ぶことができないピットは、パルテナに【飛翔の奇跡】と呼ばれるものを掛けてもらい5分間だけ、空を飛ぶことが可能となる。
雲海の上を飛行しながら、気になっていたことを尋ねる。
『それは妾から説明してやろう』
「ナチュレ!?」
パルテナとは別のテレパシーに、ピットが驚いたように叫ぶ。
自然王ナチュレ。自然を司る女神で、人間を浄化しようと目論み、パルテナ軍と衝突している。ピット達とは敵の立場なのだが、ハデスとの戦いの際は幾度となく協力し合った仲でもある。
「じゃあ、今回は自然軍が原因じゃないんだなー……」
『ハデスとの戦いが終わって2年じゃぞ? まだ自然軍は体制を整えておらぬ』
「ん? それなら、ボクはどうして人間の街に?」
『それは……ッ! ピット!』
『来たぞ……冥府軍じゃ!』
雲海から飛び上がり、ピットの行方を遮ったのは崩壊したはずの冥府軍だった。
「どうして冥府軍が……ハデスは復活してませんよね!?」
冥府軍の下っ端、モノアイの目から放つ球を交わしながら、神弓で次々と現れたモノアイ達を打ち抜き、浄化する。
『恐らく……。復活するには早過ぎます』
「うっ……」
大量のザコ敵を相手にする中。ピットは、背中から感じる異常な熱さに顔を歪めた。【飛翔の奇跡】の効果が切れ始め、ピットの翼が限界を迎えつつあるのだ。
『背中の羽が……ピット!』
『心配ご無用じゃ。すでに手は打ってある』
焦るパルテナとは裏腹に、冷静に返すナチュレ。その声と共に【飛翔の奇跡】の限界を迎えつつあるピットを襲おうとした冥府軍が、一斉に浄化された。
「っ……ブラピ!」
「チッ……乗れ!」
なんだなんだと目を見開けば、二頭のユニコーンを引き連れたピットのコピーである天使ブラックピットが、こちらに手を差し伸べていた。ギュッと手を掴み、戦車に乗り込むと同時に【飛翔の奇跡】は切られた。
「フラッシュ……シルバー……あと、ブラピ。ありがとう!」
「オマケ扱いすんな! ブラピって呼ぶな!」
耳元で叫ばれ、ピットは耳を押さえながら「注文が多いな〜」と呟く。
『そういえばブラピは、ナチュレの元にいたのでしたね』とパルテナが思い出したように呟く。元々無所属だったブラックピットは、ハデスとの戦い後、ナチュレと利害一致し、自然軍に加入していたのだ。
『ありがとう、ブラピ。おかげで助かりました』
「オイ」
『ここらの敵はブラックピットに任せて、ピット。お主は街へ向かえ!』
「命令すんな!」
と言いつつ、ブラックピットも同じ気持ちだったのか、ピットとは違い白銀に光る神弓"シルバーリップ"が転送されると、戦車から飛び降り、ナチュレが使う【飛翔の奇跡】によって空を飛ぶ。
「ありがとう! ブラピ! ナチュレ!」
手綱を手にし、一振りするとピットは光の速さで街へと向かう。
「……来いよ。冥府のゴミ共」
『ブラックピットよ! そやつらをゴミと一緒にするでない! リサイクルできるゴミと違いやつやは……』
「あーもう! わかった、わかったから!」
「……ブラピ。大丈夫かな……」
『ナチュレもついてますし、大丈夫でしょう』
ブラックピットの怒号を背に、光の戦車で街へと急ぐ。わらわらとピット達の周りに集まる冥府軍を、フラッシュとシルバーの角から発生するビームで浄化し、先に進んでいた。
「それにしてもパルテナ様。どうして冥府軍が復活したのでしょう?」
『可能性としてはタナトスなのでしょうが……挨拶もなしに冥府軍を派遣するとは思えません』
「『ピット君お久しぶりデスね〜』とか、言ってきそうですしね!」
『まあ、お上手ですね』
「何回も会っていますから!」
冥府軍の空母とも呼べるホエーラを浄化し、一網打尽にする。
「それでは一体誰なのでしょう?」
『それは分かりません。ただ……メデューサやハデスのような、強大な力の持ち主であることには変わりありません。その正体を探るためにも、民を救いなさい、ピット』
「了解です!」
『雲に穴を開けます。くぐり抜けてください』
雲海の一部に穴が開き、雲のトンネルを手綱を引いて通り抜ける。
「人間の街が……!」
雲海から出ると、そこには冥府軍に襲われている人の街が。
「人間達は……無事なのでしょうか」
『どうやら避難は済んでいるようです。……ですが。また民の街が……』
パルテナの苦しそうな声が、月桂樹から伝わる。パルテナは以前、混沌の遣いと呼ばれる生物に体を奪われ、天界や地上界に大きな混乱をもたらしたことがある。人を愛するパルテナにとって、それは忘れ難き出来事となった。
「パルテナ様は『人間は強い生き物だ』と教えてくれました」
フラッシュとシルバーにありがとうと伝え、戦車から飛び降りる。
「ならば、何度でも、立ち上がると思います! パルテナ様!」
羽を何度かバタつかせ、加速を下げると人間の街に降り立つ。
『……そうですね。そのためには、冥府軍をどうにかしなければいけません。ピット、民を守るため地上戦を!』
「ハイ! パルテナ様!」
パルテナの神弓を番え、光の矢が出現すると、モノアイに向けて放つ。
『待って下さい! ピット!』
「えっ?」
『冥府軍が、退却していきます!』
パルテナの信じられないと、焦る声が聞こえる。ピットは神弓を下ろすと、先ほどまで浄化しようとしていたモノアイが街から去るのを見つめた。
「……どういうことなのでしょう」
気が付けば、人間の街にいた冥府軍の姿は見えず、状況を飲み込めないピットがポツンと一人いるだけだった。
「オイ、ピット」
そこに、冥府軍を浄化していたブラックピットが降り立ち、ピットと合流する。
『お疲れ様です、ナチュレ。光の戦車は、元の場所に転送しておきました』
『置き場所を知っておるとは……。空にいた冥府軍もみな、退却したようじゃ』
「フン。オレたちにビビって逃げたか?」
『それはないじゃろ。だとしたら、始めから仕掛けてなどおらぬ』
ナチュレに言われ、ムッと口を結ぶブラックピット。
『念のため、見回りをお願い出来ますか? ピット、ブラピ』
「ブラピ呼びやめろ」
「あう。くわばらくわばら、デスね」
「何ソレ」
「パルテナ様! ただいま帰還しました!」
出撃前、パルテナと話した部屋に帰還したピットが戻って来た。
「ご苦労様です、ピット」
「すみませんパルテナ様……何も手がかりが掴めず……」
申し訳ありませんと俯くピット。
あの後、ブラックピットと共に街の中を回ったが冥府軍どころか手がかりも掴めず、仕方なくその場から引き上げたのだ。
「ありがとう、ピット。貴方は十分民を守ってくれました。民は皆、貴方に感謝しているのですよ?」
「だから気に病まないでくださいね」と宥めるように頭を撫でられ、ピットは撫でられた箇所を抑えると、笑顔で頷いた。
「ハイッ!」
「では引き続き、私は調査を進めますので、ピットは休んでいて下さいね」
分かりました! と部屋を後にするピットを見送ると、パルテナは"パルテナビジョン"に目を向けた。……そこには、幼い容姿に真っ赤なドレスを身につけたナチュレの姿が。
『……良いのか、本当のことを伝えなくて』
「えぇ。確証がない今、下手に伝えても混乱を招くだけですから。……それで、話というのは」
ナチュレは一度目を伏せ、気持ちを落ち着かせると目を開けた。
『妾達……パルテナ軍と自然軍が、狙われたかもしれぬという話じゃ』
2章:憎悪に満ちた瞳→
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