スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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『皆、忙しい中集まってもらってすまない』
冒頭からそう一言添えたのはリヨン。集められた一部のファイター達は疑問に思う。
「わたくし達を集めてどうしたの?」
代表してピーチが尋ねれば、リヨンは『ああ……』と覇気のない声で事の経緯を話し始めた。
『全員、マスターとクレイジーが出掛けているのは知っているな』
「はい。存じておりますが……」
『だから今日一日、仮として私の主人となる人物を決めたい』
全員の脳内がはてなマークで埋め尽くされたのを、リヨンは察することが出来なかった。
確かに集められたのは王族たる者達だが、リヨンの言動に戸惑う。
曖昧な雰囲気に終止符を打ったのは、カムイだった。
「ええと、つまりリヨンは新しい主人を決めたいんだよね?」
『ああ』
「休むという選択肢は?」
『ない。寧ろ疲れるばかりだ』
断言するリヨンにカムイは暫し悩んだ末、わかったよと頷く。
「なら僕の臣下になってよ。皆もそれでいい?」
「構わないが……大丈夫か?」
ルキナに同行したクロムが不安げに聞いてくるも、カムイは笑って「大丈夫だよ」と返す。
「臣下、だからね」
「?」
◇◆◇◆◇
『さてカムイ。今日はどうするんだ? 何処かへ行くなら護衛するぞ』
「ううん。今日は部屋でゆっくり過ごすつもりだよ」
『そ、そうなのか……』
「リヨンも付き合ってね。僕の臣下達もそうしてくれたんだ」
リヨンからすれば護衛という名の鍛錬がしたかったのだが仕方ない。部屋に招き入れられた彼女は、カムイとともに部屋の椅子に腰掛ける。
「リヨン、これ見てよ。女性の僕と弟のレオンが登場している漫画でさ、みんなカッコよく活躍しているんだよね」
『そんなものがこの世界にはあるのか。驚きだな』
「だよね。リヨンも読んでみてよっ。面白いからさ!」
勧められるがまま読み始めたリヨンはそのまま夢中になり、前後編共に読破。
『なかなか面白かった。カムイ自身の話も聞いてみたいな』
「えっ本当? もちろんいいよ。じゃあ僕の産まれた国や大事な家族について話そうかな……」
カムイは自身の故郷である白夜王国と暗夜王国。そして産まれた透魔王国について話をし、白夜王国と暗夜王国にはそれぞれ四人ずつ兄妹がいることも語る。
自身の面倒を見てくれている臣下の話や、旅路の途中で出会った仲間達の話など、個性豊かな内容が続く。それはリヨンが時間を忘れてしまうほど濃いものだった。
全てを話し終えたカムイはひと息つき、それを見たリヨンは『一杯淹れよう』と席を立つ。
『にしてもカムイは強いのだな。両方の国に敵視されながらも前へ歩み続けるとは』
「僕はただ平和な世の中にしたかっただけだよ。どっちの国も家族も、僕にとっては大事なものだったんだ。……怖くなかったといえば嘘になるけど、アクアやジョーカー、リリスが側にいてくれたから」
『……そうか。少し、羨ましいな』
「羨ましい?」
部屋に置かれたティーカップの音を鳴らしつつ、リヨンは心中を語る。
『私には過去の想いが何もない。何かの選択を迫られたとき、判別の材料となるものがないのだ』
「リヨン……」
『きっと、困ってしまうだろうな』
「そんなことないよ!」
と、リヨンの隣に並んだカムイはその手を掴んだ。
「今だってリヨンは想いを作り続けている。それは決して無駄じゃないよ」
『カムイ……』
「それにリヨンは騎士として誰かの想いも守っているじゃないか! それは誰にだって出来ることじゃないと思う!」
カムイにそう諭されたリヨンは肩をすくめ、瞑目。
『……そうだな。それにこうして私を“休ませようとしてくれる”人もいるんだ。記憶の有り無しなんて些細なことだったな』
自分の魂胆を見抜かれたカムイは目を見開いたあと、気恥ずかしげに笑うのだった。