スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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「いやいや何このタイトルぜっったい許せないんだけど⁉︎⁉︎ それにちょっと見覚えあるし……」
『うるさいぞ、マスター』
いつも以上に賑やかな屋敷で叫び散らすマスターに、お見合い相手の写真を手にクールに返すリヨン。
「俺も反対。する意味がわからない」
『だが向こうの面子というのもあるのだろう。私は構わない』
「……」
押し黙るクレイジーを他所にリヨンは『返事の手紙を出してくる』とその場から立ち去る。
「……ねえ、クレイジー」
「分かってる。今回ばかりはお前に賛成だ」
と、意地の悪い笑みを浮かべる両者は早速行動に移すべく動き始めた。
◇◆◇◆◇
今回の縁談は、彼らが住まう屋敷があるシティの隣に位置する領土の領主から打診されたものであった。
表向きはこちらとの良好な関係を結ぶためであるが、本音は異様に発生しているバグから生まれた魔物の対処に追われているため、騎士であるリヨンを引き抜きたいという魂胆だ。
バグから生まれた魔物についてはこちらの不手際であるが、わざわざ縁談をする必要はない。マスターとクレイジーはなんとか破談させようと相手側の情報を集めるも。
「ダメだ……良いところしかない……」
領主の子息は若くして優秀であり、政でも戦闘面でも申し分ないイケメンだった。人望も厚く、他領主との交流も盛んだというのだからまさに秀才だ。非の打ちようがない。
「どどどどうしようクレイジー⁉︎」
「……しょうがねぇだろ。リヨンか、相手が断るしか」
「そんなぁ〜〜」
マスターは肩を落とし、協力したクレイジーはやれやれと肩をすくめる。
そうしているうちに縁談当日を迎えてしまった……。
(動きにくいな……)
群青色のドレスに身を包んだリヨンは、領主側から派遣された馬車に乗ってお見合い会場である領主の館を訪れた。
馬車から降りるとそこには、領主らしき人物と今回のお見合い相手──ファウンテンブルーの髪色を持つ青年が出迎えた。
「ようこそリヨン殿。ささ、中へどうぞ」
軽く自己紹介を挟んだのち、リヨンは館内に案内される。
その先の部屋で用意されていたのは豪華な食事ら。リヨンと青年が対面して椅子に腰掛ければ、「あとは若いのだけで」と言いたげに、領主など最低限の使用人を残してその場から退室した。
「改めまして、リヨンさん。僕の名前はウィリアム。ウィルと呼んで欲しい」
『リヨンだ。こちらこそ気楽に接してくれ』
「嬉しいよ。どうも堅苦しいのは苦手でね」
カチン、と互いのグラスを鳴らし一口。芳醇な香りの葡萄酒が喉を突き抜ける。
「リヨン。初めに大事な話をしてもいいかな?」
『大事な話?』
面持ちを変えたウィリアムに怪訝そうに眉を顰める。
「まず今回の縁談だけど、君のほうから断ってくれないか?」
リヨンは大して驚きはしなかったものの、乗り気でないことに疑問を抱く。
『それは構わないが、そちらの利益になるのではないか?』
「父上はそう考えているけど、正直言って僕らの力を侮りすぎているからね。創造神様のお力は必要とは言え、君の力を頼ることはないというわけさ」
『なるほどな……』
「君のほうから断ってくれれば、社交界で君の評判に傷がつくことはない」
『社交界うんたらは知らないが承知した。もともと私もそこまで興味はなかったからな』
ありがとう、と微笑んだウィリアムが強かであると認識する。
「それはそうとして、出来れば友人として話はしたいんだ。そっちはどうかな」
『もちろんだ。断る理由がない』
「ありがとう。嬉しいよ」
リヨンは料理に舌鼓を打ちつつ、ウィリアムとの話に花を咲かせた。
主に戦闘の話になると両者とも熱くなり、傍らで見守っている使用人らが苦笑するほどだった。
こうして交流を終えたリヨンは、行きと同じように馬車へ乗り込む。
「リヨン」
ウィリアムが馬車の窓に近づき、最後にリヨンに囁いた。
「今日の君はとても綺麗だよ」
その類いの言葉に慣れていないリヨンは少しだけ照れくさそうに笑って。
『ああ。ありがとな』
と、馬車に揺られて屋敷へと送られていった。
◇◆◇◆◇
「あ! おかえりリヨン!」
「おかえり」
屋敷の外で出迎えたのはマスターとクレイジー。
心配そうにリヨンを見つめる二人に、若干たじろぐ。
『な、なんだ二人とも……』
「リヨン何もされてない⁇ こういうときって何かふしだらなことが起こるってフラグが……」
「それはお前の脳内だけだ馬鹿。……で、縁談はどうなった?」
『向こうから断られた。こちらからも後日連絡するつもりだ』
「破綻になったんだね! やったー‼︎」
『……なぜそこまで喜ぶ』
首筋を撫でるマスターに呆れるクレイジー。
リヨンは二人の様子を見ながら、今日の平和を噛み締めるのだった。