スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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俺は兄貴から生み出された破壊神。対となる存在。
自我が芽生え始めた頃から俺は俺で、与えられた使命を淡々と熟すだけ。
それはまるで物語のシナリオ通りに動く登場人物のようで……少し疎ましかった。
そんなある日、俺達兄弟は屋敷の地下で倒れている少女を保護した。
恐らく兄貴の情報を基に作られた存在だと思うが……俺や他の奴らとは違い、ソイツは記憶を持っていなかった。
助けた俺達を主と仰ぎ騎士と名乗った女。
記憶という枷がなく自由なアイツは──例え兄貴の予想通りでも──新鮮で、輝いてみえた。
だが、内なる感情が俺に囁く。
手が届かないのなら壊してしまえ、と。
だからある程度の距離を置いていたのに……。
「クレイジー、口を開けろ」
「……」
「はい、あーん」
人目のあるカフェで躊躇いもなく自身が頼んだパフェを一口分掬い、クレイジーに差し出すリヨン。
嫌々ながらも恐る恐る口を開けたクレイジーは、ホイップの甘さとリヨンの行動に思わず酔いしれる。
「どうだ、美味しいか?」
「……甘い」
「そうか。二時間も待った甲斐があったな」
「遊園地レベルってもんじゃねぇよ……」
リヨンが以前から食べたがっていたスイーツ店にひょんなことから同行することになったクレイジー。その目的のパフェは“二人組限定品”であり、一時的に恋人を演じることとなった。
周囲の席では甘々な二人組がイチャイチャとパフェを堪能している。リヨン達も偽装しているとバレぬように、先程のような『あーん』などを行っている。
とは言え、クレイジーは甘いもの(特にホイップが大量に使われた甘々な食べ物)は好まない。無難にブラックコーヒーで口の中に残る甘さを相殺する。
「にしても……量が多いな」
「二人分だからな。だが心配するな。これぐらい平らげてみせるさ」
はあ、と空返事を返すクレイジーは内心『二時間待ってまで食べるものか』と呆れていたが。
「ん。待った甲斐もあって美味しく感じるな」
「そうかよ」
すでに上層部を平らげたリヨンに、僅かに頬が緩む。
騎士としてかっこいい面を持ちながら、年相応にエンタメを楽しむ部分──いわばギャップは効果的面。
「それに……」
「なんだよ」
「お前とこうして仕事以外の話をするのはなかなか無いからな。新鮮で面白い」
かと思えば胸中を素直に吐露するリヨンに、クレイジーは明後日の方向を向きつつ「そうかよ」と素っ気なく返す。
「ああ。待っている間も楽しかった。付き合ってくれてありがとうな」
「っ……」
さらなる追い討ち。
あっという間に平らげてしまったリヨンはふうと息を吐く。
するとクレイジーは突然席を立ち、向かい側に座るリヨンに手を伸ばす──。
「な、なんだ、クレイジー」
「いいから」
至近距離で視線が絡み合う二人。思わずたじろぐ中、クレイジーは──リヨンの口元についたホイップを指で拭っては舐めた。
「ん、甘いな」
「クレイジー……」
リヨンの一言にクレイジーは無意識のうちにやってしまった行為に羞恥心を覚え、密かに耳を赤くする。
対してリヨンはクレイジーをじっと見据えたまま。
「……お前も実は食べたかったんだな、パフェ」
「は? いや俺は……」
「今日は食べれないがまた今度食べにこよう」
あらぬ誤解をされてしまったが、次のお出かけの口実が出来てしまった。
全く、と肩をすくめたクレイジーに、リヨンは首をかしげる。
(お人よしもいいところだな……)
だからこそ危うくて、守りたくなる。
例えこの手が破壊することしか出来なくとも。
いつかこの感情が爆発したとき、彼女ならきっと止めてくれるかもしれない。
そんな希望を抱きながら、彼は今日も彼女と生活を共にする。