スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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「で、そこでなんちゃらがなんちゃらで〜……」
『ふふ、なんだそれ』
「面白い話だね」
穏やかな日常の片隅。屋敷の回廊にて話し込んでいたリンク、リヨン、カムイの三人。
リンクが元の世界での経験談を語る中、遠くよりバタバタといった激しい足音が近づいてくるのを察知。なんだなんだと訝しむ彼らの視界に、廊下を走ってきたらしきマスターが姿を現した。
「うわっ⁉︎ びっくりした……」
「どうしたの、マスター」
若干仰反るリンクに動じないカムイ。唯一、リヨンだけは心当たりがあるのか『あ。』と声を洩らす。
『もうそんな時間か』
「そうだよリヨン! さ、外回りに行こ!」
『ちょっ、引っ張るな! ふ、二人ともまたあとでな!』
珍しく仕事にやる気なマスターに引きづられていくリヨンを、唖然とした表情で見送る。
「……分かりやすく気合い入ってたよな」
「そうだね」
息巻くマスターに嘆息をもらした二人は、なるべく早く帰ってくるようにと密かに願う。
◇◆◇◆◇
屋敷近くの街に出てきた二人。どうやら今日のバグが発生したのはこの辺りらしい。
「いや〜いつ来ても賑わっているね!」
『お前達の仕事が功を成しているおかげだろう』
「嘘っ、今リヨンに褒められた⁉︎」
『何を言っている。私だって褒めるときは褒めるさ』
不敵に笑うリヨンに、マスターは耳の先っちょを赤らめて気恥ずかしげに笑う。
そんなマスターの様子よりも、リヨンは周囲に目を光らせる。
『目に見えて混乱などは発生していないようだな。人目につかない場所で発生しているのかも』
「あっ、リヨンってば! 待ってよ〜!」
石畳みのメインストリートから外れた路地裏に躊躇いもなく足を踏み入れたリヨンのあとを見失わないようについていく。
暫く歩いていると、左右に分かれたY時路に差し掛かる。
「分かれ道だ。どうしよ」
『ここからは分担してバグを探そう。見つけ次第連絡する』
「うん、わかった! 気をつけてね、リヨン」
『それはこちらの台詞だ。マスター』
と、左に進んだリヨンは足早に路地裏を進む。
人通りがないとはいえ、街の中心部。いつ誰が危険だとは知らずにバグに近づくか分からない。
そもそも『バグ』とは──大きな亀裂のような形をしている。空洞になっている中は深淵そのものであり、発生から一定期間過ぎると周囲のものを無差別に飲み込むブラックホールとなる。一定期間はバグによってまちまちであるため、早期発見が好ましい。
「──うわあああああああっ⁉︎」
『!』
いくつかの曲がり角を曲がった先、あどけない少年の叫び声が路地裏に轟く。声の発生源はすぐそこだ。
急ぎ駆けつけたリヨンが見たのは、宙に発生したバグに引き寄せられている少年の姿。
『手を伸ばせ!』
今まさに飲み込まれん少年の手を掴んだリヨンは力いっぱい自身へと引き寄せ、地面に突き刺した剣を頼りにバグの吸い込み力に対抗する。
『ぐっ……』
あまりの威力に剣を握る手が弱まり少年ごと体が浮いたその時。
「はああああああああっ‼︎‼︎」
軒を連ねる建物を“飛び越え”飛来したマスターが、白く輝きを放つ右手を突き出しすれ違いざまにバグを修繕。華麗に地面へと着地する。
垂れる長髪を掻き分けたマスターは、間一髪助かったリヨン達に駆け寄った。
「大丈夫リヨン⁉︎」
『ああ……私のことよりもこの少年を……』
胸に抱いてしっかりと守り切った少年は泣きじゃくってはいたものの怪我はなく。リヨンは『もう大丈夫だ』と優しく頭を撫でつつけ、その様子にマスターは肩の力を一気に抜いた。
◇◆◇◆◇
「バイバイお姉さん達!」
少年を無事親元に帰したリヨンとマスターは、帰路に就く。
「はー……」
『なんだ突然。深いため息だな』
「それはそうだよ! ……心配したんだからね」
『部下の心配なんてしなくていい。まずは自分のことを──』
「〜っそうじゃない!」
珍しく声を荒げたマスターに肩を掴まれ、強制的に視線を合わせられる。
目を見開くリヨン。マスターは自身の胸中を明かす。
「部下だとか騎士だからとか関係ないよ! 君は僕にとって大切な人なんだ。いなくなったり、危ない目にあってほしくないんだよ!」
『マスター……』
そこまで言ったマスターは、はっと我に帰り、リヨンの肩から手を退けた。
「ああごめん! 痛かった……よね?」
『いや大丈夫だ。すまない、マスター。私が軽率だった』
苦笑を浮かべるリヨンにマスターは「ううん」と首を横に振る。
「リヨンのそういうところ、僕好きだよ」
『好き……?』
「あ、ああ、ふ、深い意味はないからね⁉︎」
咄嗟に誤魔化してしまった自分を情けなく思う。
するとリヨンは、くすりと小さく笑った。
『ああ、私も好きだ。お前のそういうところ』
「えっ……」
思わず立ち止まり頬を赤らめるマスターに、ブロンドヘアーを靡かせた彼女は不思議そうに振り返る。
今日も彼女への想いは空回りしてしまったが、思わぬカウンターに悶えるマスターだった。
「……遅い。」
そんなことが起きているとは知らず、帰りが遅い彼らにクレイジーはひとり怒りを募らせていたのだった……。