スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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年末年始。至るところで新たなカレンダーが飾られ、親戚やご近所同士の挨拶が交わされる睦月。
この時期になるとファイター達は身を寄せるスマブラ屋敷から各々の世界へと里帰りし、英気を養う。
なので屋敷にはマスター、クレイジー、リヨンの三人だけとなるのだが……。
『お客様……だと?』
普段より淋しく感じる中庭でひとり剣の素振りをしていたリヨンに、そう話しかけたのはクレイジー。
『ウィリアムが新年の挨拶にでも来たのか?』
「いいや、あいつじゃない。もっと上の立場の人間だ」
『もっと上……? それは一体……』
「ああ、お前は知らなかったな。実は──」
「ただいまー! ま、間に合った⁉︎」
そこにテレポートで空中に出現したのはマスター。着地するや否や何やら焦っている様子の彼に、クレイジーは冷静に見つめ返す。
「ああ。まだ来ていない」
「良かった〜。なんかどっと増えてさ、ちょっと手こずっちゃった」
マスターにしか対処できない『バグ』処理の話に、リヨンはレイピアを鞘に納めつつ怪訝げに言う。
『最近、量が増えていると言っていたな。お前だけで大丈夫か?』
「うん、大丈夫! ……と言いたいところだけど、正直人手が欲しいくらい忙しいよー。ま、それに関しては考えがあるから気にしないでっ」
なぜか嫌な予感を覚えたものの。リヨンはそうかと返すと、改めてクレイジーに尋ねる。
『それでクレイジー。先程の話の続きは?』
「えっなになに、何の話?」
「今日来るお客の話だよ」
食い気味のマスターを嗜めながら返せば、納得したように手を叩く。
「リヨンは屋敷の外についてあまり知らないもんね。今日来るお客さんは、僕の古い知り合い……『ストマ王』さ」
『王?』
僅かに目を見開く。クレイジーは嘆息をもらした。
「困惑するのも無理はない。ストマ王とマスターが知り合いだってことは、俺もついさっき知った」
『そうなのか……。で、そのストマ王はこの世界のどこら辺を治めている方なんだ?』
「え? ここだよ?」
『……?』
「ストマはこの屋敷がある土地を含めた広い範囲の領土を持つ王様さ。最も、僕がこの世界を作った時に管理をお願いしたんだけどね」
マスターとクレイジーは神様とだけあって何かと忙しい。それこそ、人の子には任せられない仕事も数多く熟す。その中でさらに、人間達を統治するのは大変だろう。よく考えればウィリアムも貴族の子息だし、人間のことは人間が管理すべきって考えなのかもしれない……。
物思いに耽っていたリヨンの耳朶に、来客を知らせるベルの音が鳴り響く。
「おっ、来た来た! 行くよ、二人とも!」
駆け始めながら手招くマスターにクレイジーは嘆息しながらも続き、リヨンも気を引き締めて追従する。
「突然の来訪失礼した」
「ううん、全然! ストマも忙しいところ足を運んでくれてありがとうね」
立ち話もなんだし、と客室に通したマスターが破顔したに釣られてストマ王は微笑みをひとつ。マスターの知人にしては落ち着き払った人物だ。
ソファーに腰掛けるマスターとクレイジーを、テーブルを挟んで同じくソファーに腰を落ち着かせるストマ王は、淹れたての紅茶を優雅に啜る。
リヨンはというと、マスターとクレイジーが座るソファーの背後に護衛として待機しており、反対にストマ王の背後にも付き添いと見られる同じ系統の服を着こなす四人の男女が佇んでいた。
「ストマ、紹介するね。こっちは破壊神でもある弟のクレイジーで、後ろの彼女は僕らの騎士のリヨンさ」
クレイジーは依然変わらずストマ王を見据え、リヨンは恭しく会釈する。
それに笑みで返したストマ王は、自身の付き人を紹介。
「向かって左側から、ユーピル、テール、レイナ、アルクスだ。よろしく頼む」
彼らもそれぞれ会釈し、マスターはにこにこと温厚な笑みを浮かべていたが。
「で、僕らに相談ってどうしたの?」
早速話を切り出したマスターに、ストマ王はカップをソーサーに戻しつつ憂いげに答える。
「……実は、我が学園で管理している『コア』が何者かによって狙われているのだ」
「え⁉︎」
学園? 『コア』?
飛び交う言語に首をかしげるクレイジーとリヨンに、マスターが注釈を入れる。
「ストマはこの世界の中心にある『スマブラ学園』の理事長なんだ。で、『コア』っていうのは学園が管理しているこの世界における重要なもの」
「そんなものがあったのか」
知らなかったといいたげに眦を釣り上げる弟に、いつになく真剣な表情のマスターはごめんよと謝罪。
「この世界において重要なのは僕とクレイジーも同じ。だから、信頼できるストマに管理を任せたんだ」
「ただ私も王である以上、常に監視することは出来ない。その間は生徒でもあるこの子達に任せているのだが……。どうやら敵はすでに学園内に潜入しているようで、彼らだけでは……」
そこでだ、とストマ王は片手を差し伸べる。
「君の優秀な生徒達を何人か学園に編入してもらうことは可能だろうか?」
「いいよ」
「ちょ、おい!」
まさかの即答にクレイジーから怒りの叫びが飛来した。あまりにも早計過ぎると頭を抱える弟に、マスターは目を細めて。
「実は僕も、最近の異様な『バグ』の発生は誰かの手引きによるものじゃないかと思っていてね。敵の正体を知るためにも学園に行ってほしい」
そこに居たのは普段のおちゃらけたマスターではなく、この世界を管理する創造神マスターハンドの姿。これにはクレイジーも押し黙るが。
「具体的には誰を向かわせるんだ?」
「それはおいおい決めるとして……まずは、リヨン。君には積極的に行ってもらいたい」
『私か?』
「どうかな?」
『それは構わないが……お前達の護衛はどうするんだ』
「自分の身は自分で守るよ。それに毎日通えってわけじゃないし」
ね? と視線を向けられたストマ王は深く頷く。
「君達の業務に支障をきたさない程度でいい。すまないが、よろしく頼むよ」
『王命、確かに承りました』
ありがとう、とストマ王は終始笑みを湛えて、付き人とともに帰ってしまった。何かと忙しい人なのだろう。
「学校の制服は僕が作るから、リヨンはみんなが里帰りから帰ってくるまでに勉強しといてね」
『承知した。……しかし、私達に敵意を向ける者がいるとはな。一体、どんな人物なのだろう──……』
「■■■■様」
無機質な壁に囲まれた空間。暗闇が満ちる空間に、転移魔法で参上したひとりの男が王座に居座る主人を前に跪く。
名を呼ばれた主人の男は億劫げに閉じていた瞼を開き、男を無言で見下ろす。
「先程、ストマがマスターハンドに救援を要請した模様です」
部下の報告に主人の男は目を細めたのち、指示を下す。
「……学園にいる奴らに警戒を強めるよう伝えとけ」
「はっ」
男は短く返し、再び転移魔法でその場から去る。
「いよいよ、か」
男の呟きは冷たい空間に虚しく反響した。