スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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風を切る音が中庭に響く。
天に向かって伸びる木からはらはらと舞い落ちる葉は刹那、数ミリの切れ端となって風に乗って流されていく。
舞い踊るブロンドヘアーの艶やかな髪。
碧眼の少女は、手に持つ訓練用の片手剣をゆっくりと鞘に納める。
『……さて、そろそろ戻らなければ』
群青色の装束を纏いし女騎士──『リヨン』は、地平線の彼方から登り始めた朝日を背に、彼女の住処である屋敷へと足を向けるのだった。
屋敷内居住地区。
ここではファイターと呼ばれる戦士達と、この世界を管理する神々が各々の個室で自由に過ごしている。
「おはよリヨン!」
『おはよう、マスター』
リヨンと対面するのはこの世界を作った創造神──リヨンの保護対象の片割れ──のマスターハンド。通称“マスター”。
俗世に語られるような荘厳な雰囲気などはなく、人間の性格に近しい彼は人一番早く起床し、満面の笑みでリヨンと朝の挨拶を交わす。
壁にめり込みながら。
『なぜそうなっているのか大体の予想はつくが、一応聞いておこう。何をしているんだ?』
「クレイジーに吹き飛ばされた」
『聞くまでもなかったな』
パラパラと瓦礫を落としつつ地面に落下したマスターに一瞥もくれず反対側の扉へと。
ズモモモモ……という効果音とともに負のオーラが溢れ出す扉の主は、マスターの弟である破壊神クレイジーハンドこと“クレイジー”の自室。マスターとは異なり朝に弱い彼はとにかく寝相が悪い。起こそうとしたマスターを無意識下のうちに吹き飛ばしたのだろう。
「よし、僕もう一回行ってみるね!」
『だからお前が行っても……』
「ぎゃああああああ⁉︎」
壁にめり込むどころか今度は頭から突っ込むマスターに嘆息を禁じ得ない。学習しないのかこいつは。
『……私が起こしに行くからそこで待っていろ』
とりあえず一旦マスターは放置し、リヨンは部屋の扉を叩く。
『入るぞクレイジー』
合意を待たずに入室すれば、ベッドで布団にくるまってすやすやと眠りこけているクレイジーの姿が。デスクの上にはあまたの資料が散乱し、片付ける余裕がないまま泥のように眠りについたのだと窺える。
『おい、起きろー』
「んー……」
揺さぶりながら声をかければ、クレイジーはみじろぎして朧げにリヨンを捉えた。
するとたちまちにハッと開眼したかと思えば、リヨンの姿に硬直。
『あ、起きたな』
「……起きたから早く出て行ってくれ」
布団で身を隠しつつ告げたクレイジーに『待っている』とだけ伝え、リヨンは自室を出る。
「あ、リヨンどうだったー?」
『無事に起きたぞ』
「さっすが! リヨンだとやっぱり違うね!」
『それはどうも。壁だけは直しておくんだな』
「はーいっ」
立ち所に元通りになる壁を目に、今日も騒がしい一日が始まるのかとリヨンは遠く思う。
この物語はとある世界の片隅で繰り広げられる──ひとりの少女を中心とした物語。
騒がしくもどこかワクワクするような非日常を、どうかアナタに。