スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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『では行くぞリンク』
「おう!」
地平線の彼方より朝日が顔をのぞかせる時間帯。
屋敷の庭に聳え立つ大木の根本で、互いに軽装の騎士二人が集まっている。
そのうちのひとり、リヨンは大木の幹に手を添えており、対するリンクは伝説の秘宝トライフォースの印が刻まれた王家直々に賜った鞘から愛剣であるマスターソードを引き抜き、すっと構えを取る。
それを確認したリヨンは大袈裟に大木を揺らす。
頭上から舞い落ちる落ち葉に、リンクはマスターソードを振るった。
ことごとくを銀閃が捉え、落ち葉が縦軸横軸斜め軸と両断されてゆく。
最後の一枚が切り落とされたのち、リンクの足元には綺麗な斬撃のあとが散らばっていた。
ふぅ、と息を吐き、キンッと鞘に剣を収める。
『流石だなリンク。ハイラルの勇者と呼ばれるだけある』
「そんなことはないさ。リヨンだって出来ただろう?」
ひと足先に同じ手法で鍛錬をしていたリヨンは、肩肘を張ることなく謙虚に「いやいや」と首を横に振る。
『騎士としてはまだまだ足りないぐらいだ』
ここで普通なら「そんなことはない」と否定する者がいるのだろうが。リンクは何かを思い、考え耽る。
「……そうだな。主君を守るには、まだまだ力が足りない」
手のひらを見つめる涙ぐましい鍛錬の跡に、リヨンは「ああ」と深く頷いた。
『心と体、どちらも守ってやりたいがそうはさせてくれない』
「いつだって騎士の一つ上を行く」
『それが主君というもの』
見つめ合う二人は互いにそう口にすると、ふっと笑みをこぼし合った。
『そういえば、リンク』
「ん?」
『リンクは騎士と呼ばれるのと、勇者と呼ばれるのどっちが良いんだ?』
ゼルダ姫近衛騎士。ハイラルの勇者。
二つの異名を持つ彼にとってどちらが誇らしいのか、リヨンは興味本位で聞いてみるも。
「……今はどっちでもないかな」
哀愁帯びた瞳で返され、追求するのをやめる。
きっと彼は彼なりに苦しんでいるのだろうと思いながら。
『そうか』
リンクはパッといつもの笑みを取り戻すと、「でもな!」と笑う。
「なりたい役柄ってのはあるんだ」
『ほう、それはなんだ?』
「ははっ、秘密だ」
肘で小突かれたリヨンもまた釣られて笑い、なんだなんだと戯れる。
いつの日もこうして一緒にいられたらいいのに。
それがリンクの願いだということを、彼女はまだ知らない。
(だから俺の前から消えないでくれ。……頼むから)
あの四人の英傑のように。
我が主君のように。
消えないで。
どうか。