スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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「チェックメイト」
『あ。』
カツン、と音を立てて白黒の卓上舞台から
今し方白のキングを打ち負かされたリヨンは、おお〜っと対戦相手であるルフレに拍手を送る。
「僕の勝ち、だね」
黒のチェス駒を手ににこやかな笑みを浮かべる彼が披露した策に、リヨンは感銘を受ける。
『どの駒も犠牲にせず相手を敗北させるとは……』
「元の世界でも似たような遊戯をやっていてね。……僕は駒を、ただの駒とは思えないから」
憂いげのある表情に、リヨンは気を遣い「そうか」とだけ返す。
「そういえばリヨン、
ルフレの話題にリヨンは偽りのない笑みを浮かべて。
『全くないな。記憶はなくとも道具や常識は覚えているし、困っていてもみんなが助けてくれる』
「はは、それは良かったよ。僕も同じだったからさ」
『ルフレも……記憶がなかったのか?』
まさかの言葉に軽く瞠目する。
ルフレはすっと革の手袋を取ると、甲を見せるように差し出した。そこには何もない。
「昔……クロムと出会ったとき、僕には記憶がなかった。ただ自分の名前とクロムの名前だけは知っていたんだ。
手袋をはめなおしたルフレは遠くを見つめる。
「正直言って、思い出したくない記憶だったよ。そんな苦しんでいた僕を、クロムや自警団のみんなが助けてくれた。真白な記憶と心を、七色に染めてくれたんだ」
リヨンに向ける眼差しが穏やかなものとなる。
静かに耳を傾けてくれている彼女に、ルフレは微笑を湛えた。
「だからもしリヨンが困っていたら僕やみんなに相談して。きっと力になれるから」
リヨンは察した。自分の事情を話すことで話しやすい環境を作ってくれているという優しさを。
手のひらで転がる白のクイーンの駒を見つめ、目を細めた。
『ああ。私もいつか自分の記憶と向き合う時が来るのだろう。……その時は、頼らせてもらうな』
「ああ。共に乗り越えよう」
頼もしい軍師の言葉とは裏腹に、リヨンは少し罪悪感を抱いていた。
『しかしルフレ。そんな大事な話を聞いても良かったのか? 私達はまだ知り合ったばかりだというのに……』
と、気を遣ってくれたルフレに申し訳ないと謝罪する。
ルフレは片手を挙げて優しく制する。
「構わないさ。なんだか他人事のような気がしないしね。それに……」
『それに?』
「放っておけないんだ、君のこと。いつでも君を目で追ってしまう」
『?』
小首をかしげるリヨンに小さく吹き出したのち、ルフレは形の良い顎に手を添えて。
「今は気づかなくともいつかは気づかせてみせるさ。僕は軍師だからね」
なおも反応がないリヨンを前に、ルフレは心中で思う。
(クロム。君が前に言っていた『愛』について、少しだけ分かった気がするよ)
「さて、勝負もついたことだしお茶にでもしようか」
『それなら私が作ろう』
「作るって……淹れるじゃなくてかい?」
『ああ。新鮮なリンゴを貰ったんだ。せっかくならジュースにしようと思ってな』
ルフレはこののち、リヨンは素手でリンゴを握りつぶしたジュースを振る舞わられるとは思っていなかった。