スマブラDiary for Refrain(夢小説)
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※今作のみ夢主とクレイジー(擬人化)が結ばれております。
風を斬る音が屋敷の中庭に響く。
時は、夜の帳が下りた時刻。皆が寝静まる中、斬撃の後に遅れて響く風切り音は、羽の形を模したレイピアから発せられていた。
「まだ起きていたのか、リヨン」
『クレイジー』
最後にヒュンッと斬り上げ、鍛錬を終了させたリヨンは、自身を優しく見つめる視線に気づく。
振り向くと、少し離れた場所でクレイジーが静かに佇んでいた。今し方仕事を終えたところなのだろう。何となく疲れ切った表情をしている。
兄であるマスターは今、遠方に発生したというバグを処理に屋敷を留守にしていた。その為、2、3日はクレイジーが管理を一任されている。疲弊しているのも頷けた。
『クレイジーこそ休んだほうがいいのではないか?』
「いや、ここまで働いていると逆に眠れなくてな」
困ったもんだ、と肩をすくめるクレイジーに目を細める。
『そうだ、クレイジー。眠れないなら少し散歩でもしないか? 気分転換にもなるだろう』
レイピアを鞘に収めたリヨンにクレイジーは少しだけ目を丸くして、「ああ」と快諾する。せっかくならと屋敷の外に出た二人は、街とは真反対に位置する草原へと足を運ぶ。
(……これって、デートってやつじゃないか?)
意識してしまったクレイジーは火照る頬を夜風で冷ます。
そんなこととはつゆ知らず、リヨンは草原につくや否や両腕を力一杯広げて深呼吸。
『ん〜やっぱり夜の風は気持ちいいな。スッキリする』
夕暮れ時に光るような黄金 色の髪が風に靡く。
蒼穹を宿したかのような瞳はキラキラと瞬いており、真っ白な自分とは大違いだとクレイジーは見惚れていた。
『ん? どうした、クレイジー』
「い、いや、なんでもない」
ぷいっと明後日の方向に向いたクレイジーはふと、頭上で輝く月を見上げる。
「月が綺麗だな」
と、問いかけるも返事がない。
不思議に思って隣を見遣れば、リヨンの耳が少しだけ赤く染まっているように見えて──。
「『⁉︎』」
突如として肌を震わせる不穏な気配。
周囲を這うようにしてみれば、彼らを囲うかの如く幾つもの【バグ】が発生していた。
しかもそれだけじゃない。深淵たる亀裂の中より、アンデット系のモンスターが這いずり出てきた。モンスターが出現する【バグ】はかなりの上位種。至急マスターに応援を求めるべきだが。
《キシャアアアアアア‼︎‼︎》
『悠長なことはしていられないな……!』
鞘からレイピアを引き抜き斬殺したリヨンと背中合わせとなるクレイジーも同意する。
「まずはコイツらを倒してからだ。──【現れよ、我が分身】」
左手を正面に翳したクレイジーの足元と頭上に魔法円が展開。上空に召喚された大きな左手──クレイジーハンドの“分身”。
臨戦体制を整えた二人に、モンスターの群れが一斉に襲いかかる。
「せいっ!」
裂帛の声とともに数体のモンスターを、目にも止まらぬ斬撃で両断する。両断されたモンスターが霧散するより先に別のモンスターの元へ発走。袈裟斬り、一文字斬り、突きといった華麗なる剣術でマントを翻し戦場を駆け巡る。
「……失せろ」
一方でクレイジーは、のたうちまわり次々と圧死させる半身を目に、討ちもらしたモンスターに左食指を向けてビームを発射。爆炎に紛れて突進を敢行してきたモンスターには、自身を囲う青白い円状の炎を放ち、焼失。半身に次の指令を送りつつ、自身でも駆逐していく。
二人の息の合ったプレイのおかげで【バグ】からモンスターの出現はピタリと止まり、ひとまず片付いたと互いに頷き合う。──のだったが。
「リヨン‼︎」
『⁉︎』
最後の悪あがきとも言うべきか、【バグ】から生み出された一匹のダークウルフがリヨンの背後をとる。
防御が間に合わない──!
迫り来る衝撃に思わず双眸をギュッと瞑るも。……痛みがない。
『なっ……クレイジー!』
「ぐっ……」
見ればクレイジーが自身の盾となり、ダークウルフの鉤爪を受け止めていた。
リヨンはすぐに眦を釣り上げダークウルフを葬り去ると、力なく倒れたクレイジーの傍らに膝をつく。
『待っていろクレイジー。今マスターを呼ぶからな……!』
【バグ】によるモンスター は創造神であるマスターにしか治せない。
急ぎマスターに連絡を取りつつも、リヨンは自身のマントを引きちぎって胸部に深く刻まれた掻傷に強く充てがう。
「リヨン……」
『大丈夫だ! すぐに……すぐに来るからな……!』
マスターからの返事はない。恐らく寝ているのだろう。
必死に願いながらも、リヨンは目尻に溜まる涙を抑えずにはいられなかった。
『私のせいで……私のせいでこんな……‼︎』
「おま、えの……せいじゃ……ない……ゴホッ!」
『っ!』
吐血したクレイジーに、遂に涙腺が崩壊した。
自分がしっかりしないといけないのにと思いつつも止まらない涙に、クレイジーは苦し紛れに笑って。
「リヨン……き、いてくれ……」
『もう話すな!』
「……好き、だ」
ハッと息を呑んだ。
本能で理解した。これはクレイジーが自分を異性として愛しているという意味だと。
「やっと……言えたな……」
『クレイジー……? クレイジー!』
満足したかのように心拍数が著しく下がっていく。
リヨンは必死に呼び止めた。
『私もっ……私も好きなんだクレイジー!』
「……」
『だから私を置いていかないでくれッ‼︎』
「……!」
愛する者の言葉に、クレイジーの双眸が光を取り戻し始める。
そしてその時。
「リヨン! クレイジー!」
『マスター! 来てくれたか!』
ようやく参上したマスターの姿にリヨンは「早くクレイジーを!」と怒鳴りつける勢いで叫ぶ。
マスターは現状を理解するよりも先に弟に治癒術を施すと、周囲の【バグ】もあっという間に消し去ってしまった。
「マスター……遅い……」
「ごめんよ、クレイジー」
リヨンの手を借りて上体を起こしたクレイジーは、マスターに悪態をつく。
頰をかくマスターを横目に。クレイジーはリヨンと真っ直ぐ目を合わせて。
「……さっきの言葉、嘘じゃないよな」
リヨンもまた見つめ返す。
「ああ。もちろんだ」
その言葉に。力なく笑ったクレイジーはリヨンの後頭部に腕を回し──唇同士を触れ合わせた。
柔らかい感触と鉄の味。到底ロマンチックな雰囲気の初キスではなかったが。
リヨンもクレイジーの胸元に優しく手を添え、享受するように瞑目する。
……しばらくして離れた二人はそのまま見つめ合うも。マスターの存在に気づき、慌てふためく。
『あ、その、マスターあのな……。と、とりあえずクレイジーの容体を見てやってくれ!』
「……うん。」
心ここに在らずといった具合に治療を再開したマスターに、混乱をすり抜け結ばれた二人は、気まずげに苦笑をこぼしたのだった。
風を斬る音が屋敷の中庭に響く。
時は、夜の帳が下りた時刻。皆が寝静まる中、斬撃の後に遅れて響く風切り音は、羽の形を模したレイピアから発せられていた。
「まだ起きていたのか、リヨン」
『クレイジー』
最後にヒュンッと斬り上げ、鍛錬を終了させたリヨンは、自身を優しく見つめる視線に気づく。
振り向くと、少し離れた場所でクレイジーが静かに佇んでいた。今し方仕事を終えたところなのだろう。何となく疲れ切った表情をしている。
兄であるマスターは今、遠方に発生したというバグを処理に屋敷を留守にしていた。その為、2、3日はクレイジーが管理を一任されている。疲弊しているのも頷けた。
『クレイジーこそ休んだほうがいいのではないか?』
「いや、ここまで働いていると逆に眠れなくてな」
困ったもんだ、と肩をすくめるクレイジーに目を細める。
『そうだ、クレイジー。眠れないなら少し散歩でもしないか? 気分転換にもなるだろう』
レイピアを鞘に収めたリヨンにクレイジーは少しだけ目を丸くして、「ああ」と快諾する。せっかくならと屋敷の外に出た二人は、街とは真反対に位置する草原へと足を運ぶ。
(……これって、デートってやつじゃないか?)
意識してしまったクレイジーは火照る頬を夜風で冷ます。
そんなこととはつゆ知らず、リヨンは草原につくや否や両腕を力一杯広げて深呼吸。
『ん〜やっぱり夜の風は気持ちいいな。スッキリする』
夕暮れ時に光るような
蒼穹を宿したかのような瞳はキラキラと瞬いており、真っ白な自分とは大違いだとクレイジーは見惚れていた。
『ん? どうした、クレイジー』
「い、いや、なんでもない」
ぷいっと明後日の方向に向いたクレイジーはふと、頭上で輝く月を見上げる。
「月が綺麗だな」
と、問いかけるも返事がない。
不思議に思って隣を見遣れば、リヨンの耳が少しだけ赤く染まっているように見えて──。
「『⁉︎』」
突如として肌を震わせる不穏な気配。
周囲を這うようにしてみれば、彼らを囲うかの如く幾つもの【バグ】が発生していた。
しかもそれだけじゃない。深淵たる亀裂の中より、アンデット系のモンスターが這いずり出てきた。モンスターが出現する【バグ】はかなりの上位種。至急マスターに応援を求めるべきだが。
《キシャアアアアアア‼︎‼︎》
『悠長なことはしていられないな……!』
鞘からレイピアを引き抜き斬殺したリヨンと背中合わせとなるクレイジーも同意する。
「まずはコイツらを倒してからだ。──【現れよ、我が分身】」
左手を正面に翳したクレイジーの足元と頭上に魔法円が展開。上空に召喚された大きな左手──クレイジーハンドの“分身”。
臨戦体制を整えた二人に、モンスターの群れが一斉に襲いかかる。
「せいっ!」
裂帛の声とともに数体のモンスターを、目にも止まらぬ斬撃で両断する。両断されたモンスターが霧散するより先に別のモンスターの元へ発走。袈裟斬り、一文字斬り、突きといった華麗なる剣術でマントを翻し戦場を駆け巡る。
「……失せろ」
一方でクレイジーは、のたうちまわり次々と圧死させる半身を目に、討ちもらしたモンスターに左食指を向けてビームを発射。爆炎に紛れて突進を敢行してきたモンスターには、自身を囲う青白い円状の炎を放ち、焼失。半身に次の指令を送りつつ、自身でも駆逐していく。
二人の息の合ったプレイのおかげで【バグ】からモンスターの出現はピタリと止まり、ひとまず片付いたと互いに頷き合う。──のだったが。
「リヨン‼︎」
『⁉︎』
最後の悪あがきとも言うべきか、【バグ】から生み出された一匹のダークウルフがリヨンの背後をとる。
防御が間に合わない──!
迫り来る衝撃に思わず双眸をギュッと瞑るも。……痛みがない。
『なっ……クレイジー!』
「ぐっ……」
見ればクレイジーが自身の盾となり、ダークウルフの鉤爪を受け止めていた。
リヨンはすぐに眦を釣り上げダークウルフを葬り去ると、力なく倒れたクレイジーの傍らに膝をつく。
『待っていろクレイジー。今マスターを呼ぶからな……!』
【バグ】による
急ぎマスターに連絡を取りつつも、リヨンは自身のマントを引きちぎって胸部に深く刻まれた掻傷に強く充てがう。
「リヨン……」
『大丈夫だ! すぐに……すぐに来るからな……!』
マスターからの返事はない。恐らく寝ているのだろう。
必死に願いながらも、リヨンは目尻に溜まる涙を抑えずにはいられなかった。
『私のせいで……私のせいでこんな……‼︎』
「おま、えの……せいじゃ……ない……ゴホッ!」
『っ!』
吐血したクレイジーに、遂に涙腺が崩壊した。
自分がしっかりしないといけないのにと思いつつも止まらない涙に、クレイジーは苦し紛れに笑って。
「リヨン……き、いてくれ……」
『もう話すな!』
「……好き、だ」
ハッと息を呑んだ。
本能で理解した。これはクレイジーが自分を異性として愛しているという意味だと。
「やっと……言えたな……」
『クレイジー……? クレイジー!』
満足したかのように心拍数が著しく下がっていく。
リヨンは必死に呼び止めた。
『私もっ……私も好きなんだクレイジー!』
「……」
『だから私を置いていかないでくれッ‼︎』
「……!」
愛する者の言葉に、クレイジーの双眸が光を取り戻し始める。
そしてその時。
「リヨン! クレイジー!」
『マスター! 来てくれたか!』
ようやく参上したマスターの姿にリヨンは「早くクレイジーを!」と怒鳴りつける勢いで叫ぶ。
マスターは現状を理解するよりも先に弟に治癒術を施すと、周囲の【バグ】もあっという間に消し去ってしまった。
「マスター……遅い……」
「ごめんよ、クレイジー」
リヨンの手を借りて上体を起こしたクレイジーは、マスターに悪態をつく。
頰をかくマスターを横目に。クレイジーはリヨンと真っ直ぐ目を合わせて。
「……さっきの言葉、嘘じゃないよな」
リヨンもまた見つめ返す。
「ああ。もちろんだ」
その言葉に。力なく笑ったクレイジーはリヨンの後頭部に腕を回し──唇同士を触れ合わせた。
柔らかい感触と鉄の味。到底ロマンチックな雰囲気の初キスではなかったが。
リヨンもクレイジーの胸元に優しく手を添え、享受するように瞑目する。
……しばらくして離れた二人はそのまま見つめ合うも。マスターの存在に気づき、慌てふためく。
『あ、その、マスターあのな……。と、とりあえずクレイジーの容体を見てやってくれ!』
「……うん。」
心ここに在らずといった具合に治療を再開したマスターに、混乱をすり抜け結ばれた二人は、気まずげに苦笑をこぼしたのだった。