Super Smash Bros. - Cross × Tale -

2:はぐれ者を探しに【4】


 完全に陽も落ち、夜天が空を覆う時刻。

「マスター様。ご報告に参りました」

 ノックしたのち、ヴィルヘルムはマスターの自室の扉を開ける。大抵システム制御室か執務室に居るマスターだが、夕食の時間を過ぎると城内にある自室へ戻っているのだ。
 今日はギリギリまで外出していた為、報告書作成が遅くなってしまった。勤務外時間に申し訳ないと思うヴィルヘルムを、マスターは笑顔で迎えた。

「遅くまでご苦労様。でも、残業してまで報告書を仕上げなくても良かったのに」
「そういうわけにはいきません。時間が経てば、忘れてしまうこともあるでしょう」
「相変わらず真面目だな、ヴィルは。目を通しておこう」
「よろしくお願いします」
「……ようやく、第一段階を終えたな」

 静かな口調で瞼を落とすマスターに、ヴィルヘルムは瞑目。

「……そうですね」

 では。と踵を返そうとしたヴィルヘルムに、マスターは待ってくれと呼び止める。

「今日はどうだったんだ?」
「どう……とは? 調査の結果でしたら報告書にまとめてあります。ご確認ください」
「結果の話ではなくてだな。マリオと行動を共にしたのだろう。仲良くやっていけそうか?」

 それまでマスターを見つめていたヴィルヘルムは、露骨に視線を床に落とした。

「……関係は良好かと。それ以上でも以下でもありません」

 今度こそヴィルヘルムは部屋を後にし、マスターも止めはしなかった。



「っ……」

 自室に戻ったヴィルヘルムを、強烈な悪心おしんが襲う。全身から力が抜け落ち、扉を背に座り込んだヴィルヘルムは口元を覆い何とか抑えようとするも耐えきれず、床に嘔吐してしまう。
 が、ビジャビジャと不快音ではなくカランカランと金属音が響く。
 口から吐き出された“それ”に。荒い呼吸を紡ぎながらぐしゃりと握りしめ、床に倒れた。

「もう……終わりたいよ……」

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