困惑の戦士達

12:困惑の戦士達【6】


「日が暮れて来たな……」

 『戦艦ハルバード』を追うマリオ一行は、地平線の先に沈む夕日を前に眉を顰める。
 このまま追い続けるのも体力の限界がある。一度休憩を挟みたいが、それでは戦艦を見失ってしまう。

「どうしよっか、マリオ」
「う〜ん……」
「それなら僕に任せてよ」

 と、ラフェルトは自身の手のひらに青い蝶を召喚。蝶は暫くラフェルトの周囲をひらひらと舞えば、戦艦が進む方向へと飛び去っていった。

「僕の蝶が追跡してあげる。追いつくのは時間がかかるだろうけど、方向さえ分かれば文句はないでしょ?」
「おお〜!」

 手のひら返しとばかりに拍手を送るピットの隣で、リンクは「凄いな」と呟く。

「夜にはスタルフォスも出るし、移動は避けたかったんだ」
「すたーふぇす? すごい! 楽しそう!」
「スタルフォスな。骨の魔物」

 ぴょんと跳ねるカービィに半眼を向けるリンクに苦笑しつつ、マリオはパンっと切り替えるように手を叩く。

「そうと決まれば野営の準備だな! 飯も食べたいし」
「お腹減った〜りんごない?」
「この辺りには無さそうだな」
「ハチノコならあるぞ?」

 ワイワイと盛り上がる一行の傍ら。ラフェルトは何か考え込んだ様子で一点を見つめていた。

「どーしたの?」

 それに気づいたカービィが話しかけるも、彼は「何でもない」と返すばかり。カービィも深くは追求せず、「ふぅん」と生返事。



 ぱちぱちと爆ぜる火種。赤く照らされる各々の表情。
 この世界の事情など知ったこっちゃあない満天の星空に見下ろされながら、彼らは来るべき明日に向けて話し合いをしていた。

「ラフェルト。聞きたいことがある」
「なぁに?」

 話を切り出したのはマリオだった。組んだ両手を膝に置きながら、真剣な面持ちで尋ねる。

「緑色のローブを顔まですっぽり覆った人物を知らないか?」

 元【亜空軍】と自称する彼ならば、関係性がある彼のことを知っているのかもしれない。
 ラフェルトは食指の腹を顎に添え、うーんと思案すると「ああ、彼ね」と呟く。

「『エインシャント卿』の話ね」
「エインシャント……そうか、そういう名前なのか。で、どんな人物なんだ?」
「無口だけど誰よりも任務に忠実だったよ」
「そうなのか」

 リンクが頷く傍ら、すぴーと小さな寝息が聞こえて来た。
 見ればカービィとヨッシー、そしてピットまでは寝落ちしている。マリオとリンクは呆れた目つきで顔を見合わせると、同時に嘆息。

「全く。緊張感のないやつらめ……」
「マリオ、ラフェルト、交互に見張ろうぜ。【亜空軍】の敵が来ないとは限らないだろうし」
「そうだな。じゃあまずはボクが見張りをするよ」
「頼んだ」
「よろしく〜」

 ごろりと横たわる二人に笑みを落としたマリオは、天を仰ぎ想いを馳せる。

(ヴィル……お前は今、どこにいるんだ?)

 その答えはきっと、この星々すら知らないだろう──……。

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