困惑の戦士達
「そういえば彼らは誰?」
浮遊するラフェルトの問いかけに、ああ、とリンクは大事な事を思い出す。
「自己紹介がまだだったな。俺はリンク。ファイターとして王国に招待されたんだ。お前もそうらしいな、マリオ」
どうして名前を知っているのか疑問に思うも、すぐにヨッシーと目が合い合点がいく。
「ああ。よろしくなリンク」
“以前”のリンクより落ち着いた性格に違和感を隠せないままのマリオの隣で、ピットが元気よく「ハイハイハーイ!」と手をあげる。
「ボクはピット! パルテナ親衛隊長だよ、よろしく!」
「ぼくはヨッシー! よろしくね〜」
「カービィだよ!」
愉快だなとマリオが苦笑を浮かべる中、くすくすと後方から笑い声が。
「走ってるのに余裕だね」
「だってデデデは敵じゃないもん」
「デデデって……ゼルダ姫のフィギュアを攫ったやつだよな?」
リンクが柳眉を釣り上げて問い詰めるも、カービィはのほほんとした雰囲気で。
「デデデはたべもの以外にきょーみ? はないよ。なにか考えがあるんだよ」
「つまりお前と似てると」
「似てないよー!」
カービィの言葉にリンクはふぅんと怪訝げに答え、ラフェルトは顎に手を添える。
「まあデデデってやつ? は【亜空軍】の幹部じゃないし、可能性はありそうだね」
「【亜空軍】?」
「あ、そこから説明しないとだねっ」
ピットはマリオとともにラフェルトから聞いた【亜空軍】の話を三人にも共有する。各々違う反応を見せていると、乗り捨てられたカートを発見した。
「その話も気になるが、とにかくデデデってやつに話を聞こう」
冷静にリンクが遺跡の入り口に足を踏み入れると、彼らもあとをつづいて中に入る──が。
「ええ⁉︎」
ヨッシーを始めとして驚愕が走る。
遺跡の中は天井から“落ちてきた”瓦礫で埋もれており、デデデらしき姿は見つからない。
「……、」
「ん? どうしたラフェルト」
「この中から異様な音がする」
「……行ってみよう」
一歩踏み出したマリオの後に続いて、ひび割れた壁から遺跡の奥地を目指す。
遺跡の中は隠されたダンジョンらしき構造になっており、多くのギミックと──【亜空軍】の雑兵がここにも配置されていた。
しかし、今回の敵はひと味違っていた。
「マリオだ! ここから先に通すな‼︎」
クリボーにノコノコ、パタパタといったマリオの宿敵である【クッパ軍団】の敵が行手を阻んだ。ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す彼らのうち、マリオとヨッシーだけはとある可能性だけが過ぎって。
「でくちだよ!」
と、光さす出口から外へ出ればそこには。
「クッパ‼︎」
「! マリオ!」
「……! ゼルダ姫!」
ゼルダのフィギュアを抱え逃走を計るクッパの姿が。
「逃すか!」
マリオはすぐに跳躍しパンチを繰り出すも、クッパはふっと鼻で笑いなんということかゼルダのフィギュアを“盾”にした。これにはマリオも動揺し着地点をミスる。
すかさずピットが神弓の矢を放つも、クッパは軽々と回避。だが崖近くだったのでそのまま落下するかと思いきや──持ち前のクッパクラウンで上昇。空中で待機していた戦艦へと逃げ込んでしまった。
「くそ!」
リンクの叫びが響き渡る。
その足元をカービィがすり抜けたのを見た者は、ラフェルトだけだった。
(あのブローチは……)