困惑の戦士達

12:困惑の戦士達【4】


「ホォア!」
「くっ」

 マリオの掌から発せられる炎の掌底を、《マスターソード》を構えてガード。弾き飛ばす。そこから斜め下に袈裟斬りするも、軽いステップで回避され、鳩尾にマリオの拳がヒット。両目をかっ開きながら「かはっ」と息を吐き出す。続けての蹴撃は後退することで避け、負傷しながらも水面蹴りを行い足元を掬い上げ、二段階に分けて《マスターソード》を振るう。マリオの頬にピッと鮮血が付着する中、どこからともなく取り出した【ポンプ】にリンクは瞠目する。

(なんだあれは⁉︎)

 リンクの世界ではまず見られない未知の物体。程なくして激流がリンクを襲い、地上にいながら押し流される。
 踵で踏ん張りながらマリオとの距離を測るリンクは、懐から【疾風のブーメラン】を取り出し投げつけた。ブーメランに不意をつかれたマリオは怯み、そこにリンクの真っ向斬りが決まる。そうしてマリオはフィギュア化され、同じくピットと戦っていたヨッシーも勝利を告げたのだった。


「ふう……これで少しは反省しただろ」
「マリオだから大丈夫だよ。きっと分かってくれる」

 安堵したのも束の間。草むらから飛び出した“W”の文字が刻まれた浮遊するカートに、リンクの目が止まる。

(ゼルダ様……!)

 見知った人物のフィギュアに目を奪われている隙に、マリオとピットのフィギュアがアームによって運転手に回収される。

「ああっ!」
「!」

 ヨッシーが叫び、リンクが急ぎ後を追おうとしたところに。

「だめだよ、デデデ〜」
「なに⁉︎」

 アームにぶら下がっていたカービィが、連結部分を【ファイナルカッター】で切り離し、空中に解き放たれたマリオとピットのフィギュア化を解除。
 キキキッと方向転換した──『デデデ』と呼ばれた人物が乗るカートを──神弓を構えたピットが破壊。尚も走り去るデデデのあとを、一行は追うのであった……のだが。

「やっほー、何してるの?」
「ラフェルト!」

 黒髪の少年ラフェルトが、一行の最後尾に並びついてきた。
 先頭を走るマリオは「いいから付いてこい!」と腕でジェスチャーし、後ろを走るリンクに顔だけを向ける。

「さっきは悪かったな。今思えば明らかにピーチじゃなかった」
「気にすることはないさ。それより早く後を追うぞ」
「おう!」
「ピーチなら途中で逸れちゃったよ?」

 カービィの言葉にマリオは軽く目を見張る。

「そうなのか?」
「うん」
「……それは心配だな」
「マリオ、とりあえず今は……」
「分かってるよ」

 ピットにふっと笑いかけ、歩を進めていくのであった。

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