困惑の戦士達

12:困惑の戦士達【3】


「待てー!」

 ローブの人物を追うピットとマリオ。着実に距離を縮める彼らを、近くの湖畔の丘陵きょうりょうから見下す人物がいた。
 何やら不穏なオーラを纏い、金色の瞳を怪しく灯らせる──『ピーチ』。
 ピーチはワリオが手にしていた《ダークキャノン》を向けると、目の前の敵を追うことに夢中で無防備なマリオとピットに差し向けられる、が。
 ──ザシュッ!
 閃く銀閃によって《ダークキャノン》は破壊された。

「そうはさせないぜ、偽物野郎!」

 爆風に包まれながら現れたのは、緑の衣に《マスターソード》を手にした──彼とは異なる姿の青年と緑色の恐竜。

「どうだ、『ヨッシー』」
「明らかにピーチ姫じゃないよ、『リンク』」
「だろうな。嫌な気配がする」

 青年、『リンク』。緑の恐竜『ヨッシー』。
 とある森で手を取り合った二人に、ピーチは正気のない殺意だけがこもる瞳で捉え、ハイヒールを履いているとは思えない速さでこちらに疾走。【ピーチボンバー】で初撃を仕掛けるも、左右に回避される。そのままリンクは《マスターソード》を真っ向斬り、片やヨッシーはしっぽを振り翳し挟撃するも、回避される。

「逃すかよ!」
『……!』

 そこでリンクが取り出したるは《クローショット》。鉤爪で見事ピーチを捉えたリンクは鎖を引き寄せ、一文字斬り。やはり偽物だからか脆弱であり、その一閃が会心の一撃となり偽物のピーチはフィギュアへと戻った。

「偽物でもフィギュアに戻るんだ……」
「そうみたいだな」

 するとフィギュアはドロリと紫色の粒状に崩れ落ち、跡形も無くなってしまった。
 ひとまず大丈夫かとリンクが《マスターソード》を鞘に収めようとした時。

「はああああああああッッ‼︎‼︎」
「「⁉︎」」

 背後から飛来する空気を引き裂くような裂帛の声に気付き、彼らは咄嗟に後退。
 二人がいた場所にはマリオの渾身の一撃が入り、地面がひび割れていることからその威力を物語る。

「よくも……よくもピーチを……!」
「待ってマリオ! これは誤解なんだよ!」

 仲間であるはずのヨッシーの言葉に耳を傾けないほど、マリオは激昂しており、マリオと行動を共にしていたピットも同じく臨戦体制を取る。

「くそっ、なんでキレられなきゃいけないんだよ!」

 問答無用と言わんばかりに無言で彼らに襲いかかるマリオとピット。
 仲間であるはずの彼ら同士の戦いの幕が切られた。

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