雲海での出会い
マリオは雲海に浮かぶ浮遊岩を足場に、ピットとラフェルトは翼や飛行能力を駆使して戦艦ハルバードを目指す。
その道中でも『亜空軍』の兵士が立ちはだかり、三人は力を合わせて排除している──つもりだったのだが。
「そいつはガルサンダー。電撃を放ちながら動くけど攻撃前に止まるから」
「こいつはジャキール。倒すの面倒だからスルーで」
「あ、スパーはダメージ与えるとさらに凶暴化するから」
「ボク達だけじゃないか戦ってるの!」
「初見殺しを避けようとしている僕の気遣いを無下にしようとしてる?」
「ぐぬぬぬぬ……」
ラフェルトは完全な指示厨となり、マリオはピットのクレームに苦笑を浮かべる。確かに助かってはいるけれど。
「そういえば、やけに詳しいな。『亜空軍』の話といいオマエ何者だ?」
そう問うたマリオに悪意など一切なかった。常ならば警戒するだろうが、出会って数分の彼を信じているのだ。
ラフェルトはくすくすと笑みをこぼすと、マリオは不思議そうに首をかしげる。
「いいよ、教えてあげる。僕はもともと『亜空軍』に所属していたんだよ」
「えっ! そうなのか⁉︎」
「うん」
さらりと述べられた真実に驚嘆するも、すぐにマリオは「でも」と探りを入れる。
「もともとってことは……何かがあって抜けたんだな?」
「そう」
「何があったか聞いても?」
「大した話じゃないよ。さっき言ったでしょ、“世界を切り取る”って。その範疇に僕の大切な場所があったからさ」
あっけらんと答えたラフェルト。マリオとピットは納得したように頷く。
「ボクもキノコ王国が飲み込まれると思うと耐え切れないな」
「大事な場所ってどこなんだ?」
「それは秘密」
「えー」
そんな話をしながら地上を目指していると、妙な気配に勘づく。
「これは……」
「構えたほうがいいんじゃない? ──来るよ」
臨戦体制を整えた彼らの前に立ち塞がるのは、プリムを始めとする敵。
「天使クンが足止めしてる相手に、マリオ。デスポッドの相手して、これあげるから」
「またボクゥ⁉︎」
パシッと投げ渡されたそれを受け止めたマリオは驚愕。
そのまま現れた、ドクロのような形の巨大なランチャー“デスポッド”と対峙。
「ワッフウウウウウウッッ‼︎‼︎」
渡されたそれとは乱闘アイテム『ハンマー』のこと。
無意識のうちに上下にぶん回すマリオによって、デスポッドは秒で沈黙。それに伴いピットが相手にしていた雑魚敵も一気に消滅した。
「助かったぜ、ラフェルト! まさかハンマーがあるなんてな」
「何かに使えるかなと思って回収したんだ。でも……」
ラフェルトが見据えた先──雲海のさらに奥へと進んでいく戦艦は到底追いつきそうになかった。
困ったなぁと唸るマリオとは他に、ピットは戦艦を上回るスピードで追尾していく何かを見つけていた。
「……ん? 今のは?」
「そういえばだけど、この辺りで僕は一回離脱するよ」
「お、そうか。また会おうな!」
軽く手を振ったラフェルトは背中に蝶の翅を生やして雲海の下へと離脱。
残された二人も、とりあえず地上に行こうと考えた。
「よし、じゃあピット頼んだ!」
「え、何を?」
「ボクを抱えて飛んでよ」
「あー……」
頬を掻くピットに、なんだよと半目を向ける。
「ボク……飛べない天使なんです」
「……えっ」