雲海での出会い
「ピット! 出撃しますッ!」
軽やかに階段を駆け上り、開かれた
「パルテナ様直々の勅命……よぉし! 気合い入れるぞ!」
空中スタジアムでの大乱闘を“パルテナビジョン”を通して観戦していたピットは、謎の爆弾によって消失した惨劇を目撃。同じく状況を理解した彼の敬愛する女神パルテナは、部下であるピットに新たなる神器《パルテナの神弓》を授け、この混乱を解決すべく地上へと派遣した。
「うわっ、こんなところにも敵が……新しい武器、試してみようかな!」
自身が暮らす天空界にも敵が跋扈していることに、焦りと若干の嬉しさを抱きつつ、新品の武器で軽やかに敵を捌いてみせる。近接戦闘と遠距離戦闘、どちらにも長けた武器に心が躍る。
「これならヨユーヨユー♪ どんとこい!」
天空界に蔓延る敵を退けたピットは、ひと休憩取るために雲海に浮かぶ大岩に着地。
──ゴゴゴゴゴ……。
同時刻。雲海の下より現れたのは、ピットも見覚えのある戦艦ハルバード。
「あれは……あのときのデカい塊! っ!」
驚くまもなく、戦艦ハルバードは空中スタジアムでも投下した紫色の粒を放出。それはすぐさま集合体となり、あのザコ敵を大量に生み出した。
「囲まれたか……」
一粒の冷や汗が垂れるもなんのその。ピットは神弓を双剣形態にすると、軽く振るっては構えた。
じりじりと敵が近づき、発走しようとしたピットを──宥めるが如く空中から声がした。
「良かったら手を貸そうか?」
「え?」
ピットの頭上──脚を組みふわりふわりと浮遊する黒髪の人物は、こちらに見惚れて敵の初撃に対応出来なかったピットを守るように青い蝶型の魔弾で撃ち払う。
隣に舞い降りたその男に、ピットはぱあっと笑顔を見せると「うんっ!」と力強く頷く。
「僕に力を貸して! え〜っと名前は?」
「──ラフェルト。よろしくね」
こくりと首を傾げたラフェルトと名乗る男にピットは「よろしく!」と元気よく返事を返しては、周囲に視線を這わせる。
「まずはコイツらから倒していこう!」
「うん、分かったよ」
ラフェルトもまた青い蝶が象られた片手剣を手にすれば、敵の体に一閃が煌めく。
負けていられないとピットも迫り来る敵に十文字斬りで撃退。時に青色の光の矢で威嚇しては、助走をつけて弾き飛ばすように消滅させる。
ものの、数分。あれだけいたザコ敵は、ピットとラフェルトによって全滅した。
「ありがとう、ラフェ……」
ラフェルトに振り返ったピットは言葉を失い、かと思えば目を凝らし始めた。
「どうしたの?」
「──あれはまさか!」
ピットは雲海の上を走り抜け、見つけた『何か』を拾い上げる。
「やっぱり『マリオ』だ!」
それはフィギュア化したマリオ。運良く見つけたことに喜ぶピットにラフェルトは一言。
「で、そこ雲だけど平気なの?」
「あ。……うわっぷ⁉︎ た、助けて!」
「……」
すり抜けそうになったピットをマリオのフィギュアごと抱えたラフェルトは元の岩に戻しておろした。