Super Smash Bros. - Cross × Tale -
一筋の光すらも射さない暗闇の中、カンテラの灯火だけが少年の影を揺らす。
どこまでも地底深くに続く長い長い螺旋階段を、ただひたすらに降ってゆけば。辿り着くは封印されし扉。
少年はカンテラを床に置き、魔力で生成したレイピアで指先の皮を軽く突く。とろりと滴り落ちる血で扉に縦線を引けば、鈍い音と埃を立てて扉が開かれてゆく。
再びカンテラを手にした少年は扉の向こう──城下町の大きさと引けを取らない広さの書斎の中へ。迷うことなく歩を進め、とある地点で立ち止まる。
「……あった」
棚に並ぶ本の背表紙から目的の本を見つけた少年は、近くのテーブルにカンテラを置き、書を手に取る。
長きに渡り地下に放置されたその本は古びて入るものの読めなくはない。地下には、ページを捲る音だけが暫し続いたのちピタリと止まった。
「『最高神』の伝承……これだ」
文字の羅列を指でなぞっていた少年だったが、ハッと顔を上げるとその場から退避。間髪入れず、光り輝く“鎖”が打ち込まれた。
「誰だ!」
長杖を召喚し臨戦態勢へと切り替える少年の声に応えるものはなく。カンテラが鎖に打ち砕かれ、辺りは真っ暗闇に包まれる。
這うように周囲を警戒していた少年に──次々と飛来する鎖の群れ。
(一体誰が、どこからこれを……⁉︎)
鎖を魔法で相殺しては回避を挟み、相手の出方を慎重に伺う。
しかし次の瞬間。
「! 動けない……⁉︎」
暗闇から這い出た“何か”に体の自由を奪われた少年の双眸に、キラリと鎖が身動きの取れない自分に標準を定めた。
まずいと魔力を放出するも、逆に“吸われて”いく。どうにか抜け出せないものかとみじろぎも虚しく──。
「がはっ……!」
複数個もの鎖が、少年の胸元を貫いた。
瞳から光が消え失せた少年の意識はそこで絶たれ、がくんと身体中から力が抜ける。
それを確認したのち、暗闇からひとりの人物が少年の前に立つ。
完全に意識がないことにくすりと笑みをこぼし、愉快げに背後を──鎖の出現場所を──振り返った。
「これでマスターハンドまでの障害はないも同然。あとはゆっくりじっくりと、ファイター達を追い詰めるだけ」
愉快げに男の声が書斎に響く。
「さあ、始めましょう。『タブー』様」
鎖の先で、赤い光が怪しく瞬いた。
『……我ガ理想郷ノ為ニ』