Super Smash Bros. - Cross × Tale -

2:はぐれ者を探しに【2】


《『キノコエリア』ニ到着。オ気ヲツケテ、イッテラッシャイマセ》

 機械音のアナウンスが流れると扉が開かれる。数秒間に渡るファストトラベルを終え、彼らは無事にマリオの故郷『キノコエリア』に到着。『ポータル』の外に出た2人のうちマリオは周囲を見渡し、ヴィルヘルムは持参した鞄から薄い板を――スマデバイスの別版『スマパッド』を取り出しては画面を操作する。

(ピーチ城が近いってことは……ここはタウンか?)

 キノコ王国のシンボルであるピーチ城が目と鼻の先にある。そこから城下町のキノコタウン近くではないかとマリオは推測。辺りの景色をパシャパシャとカメラに納めては文字を打ち込むヴィルヘルムを呼ぶ。

「向こうにキノピオ達が暮らすタウンがあるはずだ。そこでルイージについて聞きたいんだが……」
「分かりました。参りましょう、マリオ様」

 さっとパッドを鞄にしまったヴィルヘルムに、マリオは顔を顰めた。

「“様”はちょっと……キノピオ達がビックリするだろうから」

 加えて、王族でも何でもない自分が様付けで呼ばれるのも慣れない。込み入った事情(マスター上司からの命令とか)でもあれば致し方ない、が。ヴィルヘルムの反応はあっさりしていた。

「マリオ様が仰るなら、これからはマリオさんと呼ばせていただきます」
「お、おう……宜しく頼む」
「はい」

 ピーチ城を目印に歩き始めるマリオのあとにヴィルヘルムも追従する。



 暫くして彼らは、キノコ型の建物が軒を連ねる町に辿り着いた。道端を行き交うキノピオ達に目立った混乱は見られず、見慣れた景色を前にマリオは密かに安堵した。

「マリオさん!」

 キノピオのひとりがマリオの姿を見るなり声を上げる。それを皮切りにキノピオ達がわーっと2人の周囲に寄ってきた。

「またまたクッパを倒しちゃったんですよね!」
「スゴイスゴイ!」
「ありがとうマリオさん!」

 賞賛の声に――『具現化』される少し前に、浅からぬ因縁を持つ大魔王クッパを懲らしめたなと思い出し――どういたしましてと笑い返した。

「マリオさん、そちらの方は?」

 と、キノピオ達の視線がヴィルヘルムに集まる。それまで傍観していたヴィルヘルムは彼らを前に軽く会釈。

「王都から参りました、ヴィルヘルムです」

 その言葉にキノピオ達は目を丸くしたかと思えば、すぐに『あの王都か』と理解して。口々に王都について話し始めた。
 それを“異様”だと感じるのはマリオだけ。
 マリオと同じく『具現化』された彼らは、自分達が偽物ではなく本物であり、この世界で産まれたと――意識を歪められている。
 マスターから話は聞いていたが、いざ目の前にすると……やや恐ろしくもある。

「マリオさん」

 思考に耽っていたマリオを呼んだヴィルヘルムは、何かを伝えたげにこちらをじっと見つめていた。本来の目的、ルイージ探しを思い出したマリオはキノピオ達に聞き込みを行う。

「ルイージさん?」
「ルイージさんならさっきまでタウンにいました。酷く慌てていましたよ」
「でもすぐに行ってしまいましたね」
「どこに行ったかは知ってるか?」
「方角なら分かります。アッチです」
「ご自宅に帰ったのでは?」

 教えられた方角にはマリオとルイージの自宅がある。キノピオの言う通り、ルイージは家にいるかもしれない。
 礼を述べたマリオはヴィルヘルムを連れて自宅へと向かった。

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