十字架の鎮魂歌
仲間達の猛る声と、クレイジーハンドの筆舌に現しがたい叫びの中。紡がれていく9種の魔法。
「【十と五の白き祈り、繋ぐは光の神秘、我が身を囲え母なる聖環──】」
「【
「【在るべき姿へ回帰せよ──】」
ひとつも間違いは許されない。
……いや、昔の自分なら、ひとつすら成功できなかった。
「【安寧齎せ、治癒の
「【穢れを祓う
「【戒めよ純潔の連環──】」
轟く轟音と立ち昇る爆風を身に受けながら、僕は詠唱のみに集中する。
今度こそ……今度こそ成功させるために!
「【闇夜に光あれ──】」
「【我が同胞に聖女の微笑みを──】」
「【汝に下すは主の天命──】」
9つ目の詠唱を完了した瞬間。白き魔法陣が大きく咲き誇る。
その中心に佇むヴィルヘルムは、瞑目していた双眸をようやく開眼。“最後”の詠唱を紡ぐ。
「【遥か天に眠りし純白の翼、偉大なる彼の者に願い奉る。この身に掲げしは邪気祓う
ヴィルヘルムの詠唱は順調かと思われた。
だが、その油断が全てを変えてしまう。
『キャハハハハぁあああああああああああああああ‼︎‼︎‼︎』
「しまっ──」
僅かな隙を縫い、クレイジーハンドはヴィルヘルムのもとへと突撃。
──グシャッ、と肉が千切れる音が響いた。
マリオを初めとするファイターらが、その光景に蒼白する。
クレイジーハンドの指が、ヴィルヘルムの腹部を射抜いていたのだ。中身が飛び散る。
目を開けたままハイライトを失うヴィルヘルム。
返り血を浴びるクレイジーハンドの指。
「──クロイツの名のもとに、ここに封印せん】」
澱みなく紡がれた最後の詠唱文。
それは紛れもなくヴィルヘルム自身が口にしていた。
白き十字架に串刺しにされたクレイジーハンドから解放されたヴィルヘルムの肉体が、力なく地面に叩きつけられる。
「……ざまあみろ」
マスターによる呪いの効力で『死ななかった』ヴィルヘルムは、眩いほどの光に包まれていくクレイジーハンドをしたり顔で見送る。
それを最後に──僕の意識は完全に途切れた。