十字架の鎮魂歌
聖なる鐘の音が朝の訪れを告げる。
物静かな音は『誰もいない』王国の隅々まで凛と響く。
その鐘の音を、ヴィルヘルムは城内の地下に位置する教会で耳にしていた。
ほつれひとつない純白の儀礼服に身を包み、ロザリオを手に膝を折り祝詞を紡ぐ。
「
そこで、教会の扉がギイィと音を引き連れて開かれる。
「王都の人々の避難は完了した。他エリアにも影響がないよう、二重に結界を張り巡らせている」
現れたマスターに瞑目していたヴィルヘルムは開眼し、立ち上がり振り返る。
「承知いたしました。そのままマスター様は結界の維持にあたってください」
「……すまない。この程度でしか力になれなくて」
善神と邪神。それは、切っても切れない関係。
どちらが欠けても成り立たぬ異様な繋がり。
創造の化身ゆえに出来ないことが多いマスターは、今回の作戦から外されていた。
悔やみ胸元を握りしめる男を前に、少年は躊躇いもなく返す。
「仕方のないことですよ。片割れのあなた方同士では互いに互いを傷つけることができないのですから」
口ごもるマスターは、廊下から響くバタバタとした足音に顔を上げた。
「ヴィル、マスター」
慌ただしく教会の扉を潜ったマリオは、緊張のきの字もなく親し気に破顔して親指を背に立てる。
「【乱闘部隊】の準備出来たぜ!」