想イノ終着点

6:想イノ終着点【20】


 祝賀会の夜も開けた翌日の朝。
 未だ余韻が残る食堂に【乱闘部隊】(仮)メンバーは全員、マスターによって招集されていた。
 内容は昨日マリオ達に話した通りのもの。驚愕を露わにする者がほとんどであり、この場に同席していないヴィルヘルムに想いを馳せる。
 そして、マスターは遂に本題へと入る。
 彼らファイターをこの世界に『具現化』した本当の理由を。

「私と同じ最高神の『左手』から生まれた破壊の化身クレイジーハンド。そいつを今一度、封印する」

 マリオ達も目を見開く中、マスターは確かな決意を持って語りかける。

「封印が解けた今、やつは着実に力を取り戻している。そうすれば600年前と同じ惨事を引き起こしかねない。……封印には、君達の協力が不可欠だ」

 頼む、と頭を下げるマスターに「待て待て」と顔を上げるようフォックスが促す。

「ここは、リーダーに従おうじゃないか」

 と、マリオに向けられる数多の視線。
 マリオは帽子のつばを掴み被り直すと、椅子から立ち上がり皆の前へ。

「マスター。ボクに話をさせてくれないか」

 真剣な面持ちに頷いたマスターは一歩後ろへと下がり、マリオは一同と向き合う。
 息を吸っては吐き、瞑目した目を開ける。

「みんな、聞いてほしい」

 水を打ったかのような静けさに、マリオの声が響く。

「この王国に来る直前のことを覚えているか? ちなみにボクは覚えてる。訳がわからないまま招待状に名前を書いちまった」

 苦笑を浮かべる兄に弟は肩をすくめ、桃姫はくすくすと笑みをこぼす。

「招待状に名前を書く時、どんな気持ちだったかは人それぞれだと思う。真剣に悩んだやつもいるだろうし、特に悩まなかったやつや、好奇心で書いたやつだっている。そうしてボク達は今ここで、世界を超えて出会うことができた」

 一同は静かに耳を傾けていた。一語一句聞き逃さないように。想いを言葉で伝えようとする男のために。

「バラバラなボク達を『大乱闘』が繋げてくれた。本気でぶつかって、初めて相手を知れた。ボクはそんな『大乱闘』や、招待してくれたマスターやヴィル、ここにいる全員が大好きになった!」

 胸を張って語るマリオは、はっきりと告げる。

「だからこそ尊重したい。このまま【乱闘部隊】に所属したいと思うヤツは手を挙げろ!」

 拳を振り上げるマリオに、一同は騒然とした。
 だがそれも「はいはーいっ!」と明るい声でぷつんと緩む。

「ぼくここにいたい! みんなと一緒にいたい!」

 カービィの言葉を皮切りに、続々と手が上がる。

「まだまだ暴れ足りないぜ!」
「僕ももっと剣の腕を磨きたいです」
「ピカピッカー!」
「うん。ぼくもみんなと一緒にいたい!」
「まあ付き合ってあげなくもないね」
『……馴れ合いはしない。が、ここにいてやってもいい』

 マリオはガノンドロフにも目を向けると、彼は鼻で笑う。

「いいだろう。乗ってやる」
「……」
「そうか。ありがとな」

 リンクとゼルダからの疑いの目に気にもくれず、ガノンドロフは笑みを讃える。

「全員了承ってことで、改めて【乱闘部隊】設立だ!」

 雄叫びにも似た声が食堂に響き渡る。
 マスターは嬉しそうに拍手を送った。

「と、いうわけで。リーダーのボクから全員に通達だ」

 マリオはマスターに振り向き、親指を立てる。

「マスターのお願い、聞いてやろうぜみんな!」

 はっと息を呑んだマスターは頬を優しく綻ばせた。
 それは安堵にも似ており、マリオは任せろと言いたげに力強く頷く。

「皆、私の願いを聞き届けてくれて感謝する」

 眦を釣り上げたマスターは、決戦の日を告げる。

「決行は明日。ヴィルヘルムの準備が整い次第執り行う。クレイジーハンドを封印するには、あの子が代々受け継いだ『魔法』が必要なんだ」

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