Super Smash Bros. - Cross × Tale -
「そうですか。わかりました」
リンクの話を聞いたヴィルヘルムは驚く様子も、戸惑うこともなくそう返した。その後、ヴィルヘルムとは食堂の前で別れ、およそ2時間後に合流を果たす。
「お待ちしておりました、マリオ様」
ヴィルヘルムとは食堂ではなく、マリオが彼と初めて会った部屋『ポータルルーム』で待ち合わせた。ひとりでも迷わなかったのは、食事中に使用人のひとりに『ヴィルヘルム様から』と渡されたメモに簡易的な地図が書かれていたからだ。
「わざわざご足労いただき、申し訳ありません」
「それは全然いいけどさ、オマエご飯食べてないだろ?」
「のちほどいただきます。では、こちらの説明をさせていただきますね」
ヴィルヘルムの視線を追ってマリオもそちらを見遣る。
部屋に並ぶ筒のような見た目の大型機械。大小様々なサイズが揃う機械に、マリオは見覚えがあった。
「これってボクが初めてここに来た時に乗ってたやつだよな?」
「そうです。転移装置『ポータル』、その中でもここにあるのは主に王都外へ移動する際に使用するものになります」
「へえ〜、じゃあこれで移動するのか。……あ、でも確か不具合があったんだろ? それは大丈夫なのか?」
多少の不安を滲ませるマリオにヴィルヘルムは「問題ありません」と頷く。
「マスター様による調整も完了しております。僕も先程ポータルを使用しましたが、気になる点は見当たりませんでした」
「わかった。早速行こうぜ!」
ヴィルヘルムは軽く目を見張り――すぐにいつもの笑みを貼り付けると、お待ち下さいとマリオを制止。
「その前にお渡ししたいものが。……こちらをお受け取りください」
差し出されたのは、手のひらに収まる大きさの薄い板。表は暗く、裏は金属素材が浮き彫りになっている。表を触ると白い画面へと変わり、色とりどりの画面へと移り変わる。
「マリオ様用の『スマデバイス』です。このようなものをお見かけしたことはありますか?」
「似たようなものなら……?」
マリオが言っているのは“キノパッド”の事。とあるパーティに参加した際、スゴロクやミニゲームの結果、アイテム交換に使用するパリポの管理等を簡単に出来る端末である。量産型ではなく、限られた場面でのみ使えたが。
「そうでしたか、なら細かい部分の説明は省くとして……。『スマデバイス』の元型、“デバイス”は王国で広く利用されている携帯端末です。それを皆様が使いやすいようアップデートしたものが、『スマデバイス』となります。これから参加することとなる『大乱闘』のリプライやルール確認などを手軽に見ることが出来ますよ」
マリオは軽く操作してみる。キノパッドも凄いと感激したが、『スマデバイス』はそれ以上の機能を持っている。
「これは凄いな……さっきフォックスに『準備がある』って言ってたのはこれか?」
「はい。不慣れな方も中にはいらっしゃるので」
答えたヴィルヘルムは次に、『ポータル』の前に並ぶ
「マリオ様、こちらへ。『ポータル』の起動方法をご説明します」
「『スマデバイス』に搭載されているアプリに、ポータルがあります。そちらを押してください。地図が表示されます」
ここ、『アルスハイル王国』の全体図を見たマリオは驚いた。マリオ達がいる王城を中心とした王都よりも遥かに、新しく具現化された地域のほうが広い。マスターの話通り、本当に消滅まであと一歩だったんだなと実感する。
「地図にいくつかピンがありますよね。そこにはここと同じく『ポータル』が設置されていて、移動することが出来ます。今回はマリオ様の故郷、キノコ王国を具現化した『キノコエリア』を選択してください」
「エリアってなんだか新鮮だな。ちなみにキノコ王国の何処に飛ぶんだ?」
「……実は把握出来ていないのです。実地調査も僕の仕事でして、ルイージ様の捜索と併せてエリアを回れたらなと」
「なんだか大変だな……まあ任せとけ。王国ならほとんど行ったことがあるから」
「ありがとうございます」
ヴィルヘルムの話を片耳に。マリオは指示通りキノコ王国が基となった『キノコエリア』のピンを選択。
「こちらの台にデバイスを翳してください」
「こうか……?」
恐る恐る『スマデバイス』を
「これで無事に転移位置を登録できました。あの『ポータル』から向かいましょう」
呆けていたマリオだったが首を振って意識を戻すと、ヴィルヘルムと共に『ポータル』の中へ進んだ。