想イノ終着点
「どわっ⁉︎」
重力に従い地面に落下したリンクは起きあがろうとするも、続け様にマルス、ネスが積み重なりがくりと崩れ落ちる。
「ああ、すまない」
「ごめんリンク!」
「いってぇ〜……っ、ここは?」
「……どうやら戻されてしまったようだね」
三人は『システム制御室』巨大スクリーンの前に帰還していた。脱落してしまったのだと落胆するのは早くて。
「マリオは⁉︎」
「まだ中にいるんじゃないかな」
「ここから見えるぞ……って、ん?」
真っ先に飛びついたネスの後ろで、マルスとリンクが肩を並べてスクリーンに映し出された光景に目を見張る。
「な、なんでカービィとヴィルヘルムが?」
「な、なんでお前らいるんだよ⁉︎」
偶然にも似た台詞を叫んだマリオに、カービィが「ぼくだって知りたいよ!」と返す。
「あの大きな手袋がマスターだって本当なの⁉︎」
「どうしてそれを……」
「ヴィルが教えてくれたの!」
マリオの目線に、長杖を構えたヴィルヘルムは頷き返す。
「正確には『右手』にあたりますが、あの姿こそマスター様本来のお姿」
「知っていたんだな」
視線をマリオからマスターハンドへ移し、瞑目。
「……約『600年前』、初めてお会いしたときはあのお姿でしたから」
言葉の意味を問うよりも早く、ヴィルヘルムは臨戦態勢を縫い直す。
「今はマスター様を正気に戻すのが先です! マリオさん! カービィ! 僕の援護をお願いします‼︎」
手早くマリオの傷を回復したヴィルヘルムの指示に、カービィは「うんっ!」と飛び跳ね、マリオは「よしっ!」と肩を回す。
マスターハンドの突進を左右に退避した一行。注意深く動きを見据えながら、マリオはヴィルヘルムを呼ぶ。
「ヴィル! 援護ってどうすればいい⁉︎」
「僕の魔術でマスター様の力を削ぎます。詠唱中身動きが全く取れない僕を守ってください!」
「分かった! 任せろ!」
「いっくよ〜!」
マリオとカービィがマスターハンドと接敵した隙に、ヴィルヘルムは長杖を構え、足元に魔法円を出現させる。
「【
スペルキーを唱えれば、白銀の魔法円が分裂。
光粒が舞い上がる中、ヴィルヘルムは詠唱を開始。
「【遥か天に眠りし純白の翼、偉大なる彼の者に願い奉る】――」
『……』
ヴィルヘルムに収斂されつつある魔力にマスターハンドが反応を示す。詠唱を潰そうと動き出すも、「ちょっと待った!」と颯爽と合間に潜り込む二つの影。
「たあっ!」
「ホゥッ!」
同タイミングで空中技を繰り出すカービィとマリオだったが、マスターハンドの進行を止め切ることは出来なかった。
「【この身に掲げしは邪気祓う
(まずい……!)
眼中にないと言わんばかりに自身との距離を詰めるマスターハンドに、ヴィルヘルムの集中が乱れかける。中断すべきか否か選択を迫られる中、ヴィルヘルムの前に躍り出たマリオがあろうことかマスターハンドの体を掴み、押し返し始めた。
「ぐぅうううう……!」
「ま、マリオ! ぼくも!」
苦悶の表情を浮かべながらも踵に力を入れるマリオにカービィも続く。
意識がそちらに集中したヴィルヘルムは消えかけた魔力を慌てて復元し、練り直す。
「【【この身に掲げしは邪気祓う
一際強まる光の魔法円から魔力の渦が発生し、服や髪をはためかせる。
長杖の先端を正面、マスターハンドに翳したヴィルヘルムは高らかに唱えた。
「【サザンクロス】‼︎」
魔法円から出現した光の十字架が一直線上のマスターハンドを貫く。
十字架が消えると同じくしてマスターハンドは見慣れた姿――宰相マスターとしての実態を取り戻す。
「マスター様!」
滑るように駆け寄ったヴィルヘルムは肩を掴み揺らす。
すると僅かにみじろぎしたマスターは、ゆっくりと体を起こした。
「私は一体……」
「大丈夫か、マスター」
マリオが声を掛ければ、マスターは「ああそうか」と状況を即座に理解。
「私は『負けた』のだな」
口にするとは反対に弱々しく微笑む男に、マリオは肩をすくめながら肯定。
「マスター様。これは一体どういうつもりですか」
気をつかうのもほどほどに眦を釣り上げた鋭い目線を受け、すまないと眉を曲げる。
「まずは一度戻るとしよう。話はそれからだ」