想イノ終着点

6:想イノ終着点【14】


「うあっぶね!」
「くっ……」

 獣人ならではの尻尾攻撃が眼前を通過する。マリオはなびいた帽子を片手で押さえつつ、ジャンプで後退。決定打を逃したフォックスから、悔しげな声が洩れる。
 先程から続く空回りする攻撃。一発一発繰り出すたびに、精神が焦りを帯び、ダメージ数とは関係なしに削れてゆく。泥仕合の真っ只中だ。

((このままじゃあ決められない――!))

 何か打つ手はないものか。
 熾烈な戦闘の最中、思案を巡らせる。
 互いに互いの出所を伺う中――先に動いたのはマリオだった。考えるより感じろ、派はやはりノープラン。真っ向勝負と言わんばかりに拳を振り上げたマリオに、フォックスの瞳がキラリと瞬く。

「そこだ!」
「ぐはあッッ⁉︎」

 マリオの速度を読み切った上で、フォックスは防御を捨て復帰技にあたる――【ファイアフォックス】での突進を敢行かんこう。【フォックスイリュージョン】を繰り出されると考えていたマリオは早くに回避してしまったがために、突進をもろに受け場外へ。


『兄さん⁉︎』
『マリオ!』


 聞こえないはずの弟や姫の幻聴を耳にしながら、あっという間にステージ上が遠くに見える。

(……負けた?)

 敗北を確信したマリオは――キッとまなじりを釣り上げた。

(まだだ! 諦めるなボク‼︎)

 自身に発破をかけ、空中でもがき始める。
 どうにか帰れまいかと抗う中、まるで天が味方をしてくれたかの如く、場外直前のラインでふわりと停止。
 これにはステージ上でマリオを見送っていたフォックスも瞠目。

「よっしゃあ‼︎」

 空中ジャンプと復帰技を駆使してステージに帰還。
 勝利を確信し硬直していたフォックスと距離を詰めつつ、両腕を大きく広げ、くるりくるりと竜巻を帯びた回転攻撃を決行。

「だああッッ‼︎」

 トルネードが直撃したフォックスは抗う間もなく場外へ。
 ステージに残ったマリオは、力強く天に拳を突き上げた。


「ボクの勝ちだああああああああ‼︎‼︎」


 マリオの叫びを皮切りに、これまで以上に熱く大きく湧き上がる観客席。
 トーナメントを制した覇者に、数多の賞賛の声と拍手が送られた。
『決勝を制したのは、マリオ選手だ〜!』


 決勝――勝者、マリオ。


 スクリーンに自身の顔とともに映し出された文字に、マリオは安堵。帽子を脱ぎ、冷や汗を甲で拭う。

「おめでとさん」
「フォックス!」

 ステージに帰還したフォックスが、拍手とともにマリオのもとへ。
 互いに熱い握手を交わした二人は、ニッと笑い合う。

「熱い戦いをありがとな!」
「こちらこそ!」

 手を離した二人は揃って観客席に感謝の思いを込めて、手を振るのだった。

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